【特別対談】ベネッセ教育イノベーションセンター長×NexTeachers代表-教育現場の「今」を見つめ、「未来」を考える。(後編)
続きの後編では、子どもたちが「やりたいこと」を見つけるためにこれからの親や学校の役割と過去最高の人数である不登校という社会問題に触れていきながら、教育業界の「今」と「未来」を深堀りをしていきます。
(前編はこちら)
プロフィール
子供たちが「やりたいこと」を見つけるために重要な環境とは?
中山:~すべきだという親の押し付けや「べき」論や正解主義などが日本は強かった気がしていて、いかにそこから脱却して、正解らしきものを教員が教えるのでなく、子供たちの中にやる思いややりたいことを引き出していくことが大事だと思うんですけど、引き出すことでのポイントはありますか?今理想的な教育はなんだろうかと考えると、子供たちが主体的に学ぶややりたいことを見つけるって多くの方がおっしゃると思うんですけど、そうなればいいけどなかなかそうならないと思うんだ。とか親側がおっしゃるケースがあり、子供たちからは好きなことが見つからない、好きなことが見つかったら苦しいという子供たちも増えてきていると思うんですよね。
中山:具体的にどうすれば子供たちが「やりたいこと」を見つけられるようになりますか?
小村:幸いなことにやりたいことが見つかっているケースを見ると、その1人の生徒を取り巻く環境が重要だと思います。従来の教育観でいくと、結果が出ないのはその子の責任だ、努力が足らないって出来たじゃないですか。理想と現実を埋めるために努力しなさいと思っていたのが親世代が持っている教育観だと思うんですけど、やりたいことってそのアプローチじゃ見つからないと思うんですよね。何故それを好きになったんですかって聞くと、たまたまとか近所の人がやっているのをみてとか偶然が多くて、やってみたら面白かったっていうケースが多いんですよね。個人の努力とかに依存するのではなく環境要因が多いと思います。
中山:確かに偶発的に何かの出会いがきっかけとなるといったケースは思い返すと多いと思います。
小村:生徒に努力を要求する前に、その生徒に色んな出会いがあるようにデザインをしていくのが重要だと思うんですよね。その出会いのデザインが何かで言うと学びのコミュニティと呼んでるんですけど、生徒と先生の関係で先生が色んなことを教えてくれる。機会を与えてくれる1つのモデルですが、学校ってそれだけじゃないと思うんですよね。先生との付き合いは3年ですが同級生との付き合いは30年続くんですよね。どんな先生と出会うかより、どんな生徒と出会うかが結構重要なんですよね。
2つ目の学びのコミュニティは同級生。ピアの学び。どんな同世代に出会うのか。多種多様な同級生がいることが良いことかなと思います。
3つめは学校外ですね。学校同士の交流や同じ高校生なんだけど、学校外の出会いのコミュニティなどの出会いのデザインが重要なんだろうなと思います。何に興味を持つか、何にヒットするかは人によって違うと思いますし、今はピンと来なくても1週間後にピンとくることもあると思うんですよね。だからこそ出会いの機会を作っていくことは非常に重要だと思います。
中山:教師と生徒の縦の環境に留まらず、生徒ピアの関係とあとはナナメの環境も必要なんじゃないかと思います。我々の「教えない」家庭教師をあえて大学生にこだわっている理由は年の近いお姉さんやお兄さんだからこそロールモデルがあるという気がしている。その辺のナナメの関係はどう思っていますか?
小村:学校外の関係性で大学生がいたり、大学教授等の専門家がいたり、その中でも特に年が近しい方の出会いは必要以上に距離感を感じないし、身近に要るので気軽に質問出来たり、私でも目指せるかもと思えることが良いことだと思います。
過去最大級の不登校という社会問題。令和時代の新しい「学び方」と学校教育の「役割」とは?
中山:学びの多様化とか、ニーズも多様化してるとかってお話があったと思うんですけども、その中の一つとしてやっぱり小学校に行かないっていう選択肢もだいぶ世の中的に広がってきたなと思ってるんですが、まずこれに対していろんな捉え方あると思うんですけど、いわゆる不登校という選択肢を、どういうふうに捉えてらっしゃいますか?
小村:不登校って不から始まるとすごく悪いことのように言葉として聞こえてしまうと思うんですね。そして自立してる学習者ということですが、必ずしも悪いことだとは思っていないです。学校に通わない学び方っていう選択肢ができてきたというふうに捉えられるかなと思います。東京とか都市部にいると意識しなくていいですけど、日本全国に学校があるってすごいことだと思うんですよね。これから当然ながら少子化が進んでいくと、そういった環境が必ずしも当たり前ではなくなるじゃないですか。これからは全校生徒合わせても10人とかになると当然、先生の数も限られますし、全教科の先生が揃わない。そうなると、別に不登校も何も学校に行っても全部の授業を受けられませんよって言ったら、起こってくることもあるわけであって。全てが揃ったオールインワンの学校が全国に何千個もあって、そこに毎日通っていうモデルはある意味続けようと思っても、あの続けられるものではなくなってきている今は過渡期だと思いますし、それに呼応する形でもっと学び方の多様なものがあるんじゃないかということに家庭の側も生徒の側も気づいて、選択するようになってきたと私は捉えてます。
中山:私も今学校で不登校のお子さん、保護者さんとお話したり、あるいは弊社の家庭教師の方で、不登校気味のお子さんとちょっとお話する機会があったりするんですけど、皆さんに言うのは、何か365日当たり前に学校に行って、週5日、私立だと6日ぐらい通い続ける。僕はなんか普通じゃない気がしていて、何か休みたい日もあるだろうし、行きたくない時ときもあるだろうし、なんかそれも当たり前なんじゃないですかね。一方で学校に全く行かなくていいか、もっと言うと何か学びっていうのを止めていいかって考えたときに一定何か必要な気はする。ってなったときに学校じゃない選択肢を取ったときの学びのあり方っていうのは、どういうふうにあるべきだと思いますか?
小村:学校に通うことのメリットというのは、もちろん時間割があっていれば授業が行われるある種、自動的にペースメイキングされるっていうのはやっぱ大きいです。これは社会人だと、コロナのときに出れば勤務をしたときに感じたけれど、やっぱり自律的な労働者であることも大変なので、ましてや中学生なり高校生なりができればそれも難しいと思うんです。
学習というのはもちろん身についたかどうかってのが大事なんですけれども、一方で、その授業を受けるとか宿題をこなすっていうそのプロセスをしっかりやることによって、一定の結果を保障してきたっていう側面があると思うんですよね。これが学校に通わないっていう選択をした瞬間にかなりのところがその生徒の自律的に学んでいかなければいけない。そのサポートはやはり当然必要になってくると思うんですよね。学校が授業以外に持っていた機能、例えば先生が宿題を出してくれないとか、宿題とか授業の様子を見て声をかけてくれるとか、あるいは同級生がいて今日難しかったなとか、宿題できたとかいろいろやり取りができるとかやっぱそういうある種、先ほど申し上げたような学びのコミュニティですよね。先生との関係、同級生との関係、そういったものがやっぱりないとなかなか難しいかなとは思います。
中山:学校の因数分解したときにペースメイキングする機能だったり質問ができるとかいろいろな機能があるんじゃないかっていうことですよね。
小村:ちょっと違うものに置き換えてみればわかりやすくて、例えばダイエットをするとか、英語を学ぶとかみんないろんなことにチャレンジしたと思うんですけど、ほとんどの人が続けられないらしいですよね。続けるためにはどうするのかっていうと、高いお金を払ってスクールに行くことで強制的に時間割を組んでいくか、あるいはコーチに就いてもらうとか、やっぱり伴走者がいるあるいは一緒にやってくれる人がいる。そういったコミュニティを通じて、人は何らかの活動を継続する側面というのがある。10代が学ぼうとすると単純に教材があればいい授業があれば、というものではなくてそういうコミュニティをいかに形成するかってのはものすごく大事なことだと思います。
中山:確かに某ZAPさんとかもそうですよね。まさにトレーニングメニューを渡して終わりじゃなくて、伴走してくれて励まし続けてくれて、ペースメイキングしてくれて我々大人も必要なんだそうです。まして10代の子はもっと必要だよねってことですよね。アプリがあるからできるでしょって言われたらほとんどできない。確かに自宅でオンラインで勉強できるようになりました。アプリも出てきてYouTubeも出てきて、確かに教材というかソフトは増えました。確かにそうですよね。そこでペースメイキングしてくれたり伴走してくれる存在が重要になってくるってことです。
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前編後編に渡り、ご覧いただきありがとうございました。
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会社名:一般社団法人ゼロイチ
代表者:中山 諒一郎
お問合せ:https://nexteachers.com/
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