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イベントレポート|サステナブル・イノヴェイションで不確実性の未来を拓く
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、2025年に開催される大阪・関西万博。Next Commons Labは、大阪・関西万博と連携し、地方創生とSDGsに包括的に取り組むイノヴェイションプラットフォーム「Sustainable Innovation Lab(以下SIL)」を始動します。
キックオフイベントとして、2025年日本国際博覧会協会及び立命館大学とともに、万博公園からほど近い立命館大学いばらきキャンパスにて、サステナブルな未来づくりの思考を深めるトークセッション『サステナブル・イノヴェイションで不確実性の未来を拓く』を行いました。
無限成長ではなく、私たちが生き抜くために、生命全体のサステナビリティを獲得するイノヴェイションを生み出すには、どんなアクションが必要なのでしょうか。
ゲストに、著書『ビジネスの未来』で社会システムのアップデートの必要性を説く山口周氏、シェアリングエコノミー活動家である石山アンジュ氏、アフリカの路上でのフィールドワークを通じて、オルタナティブな経済圏を研究する文化人類学者の小川さやか氏をお迎えし、不確実性の未来を拓く、これからのイノヴェイションのあり方を議論しました。
2つトークセッションを実施しました
【1】大阪・関西万博のソーシャルインパクト
【2】サステナブル・イノヴェイションで不確実性の未来を拓く
【1】 大阪・関西万博のソーシャルインパクト
冒頭、大阪・関⻄万博「TEAM EXPO 2025」プログラムについてのプレゼンテーション。「ともに創る万博である」と高らかに表明する岡島氏のプレゼンテーションを受けて、トークセッションの登壇者が2025年の万博の役割や可能性を掘り下げます。
<トークセッション1 登壇者>
森 清氏 |2025年日本国際博覧会協会 理事・副事務総長
白井 智子 |新公益連盟 代表理事、SIL共同代表
林篤志 | Next Commons Lab ファウンダー、SIL共同代表
「大阪・関西万博は、SDGsの次の概念を考える機会になる。TEAM EXPOは、その重要なファクターになる」と森氏。社会的企業・NPOの連盟団体である新公益連盟の白井氏は、「一人も取り残さない社会をつくるためには、一人一人が繋がってチームになって人が人を支えられる社会をつくる必要がある」とTEAM EXPOへの期待を覗かせる等、それぞれの万博への意気込みが見えるトークセッションでした。
【2】 サステナブル・イノヴェイションで不確実性の未来を拓く
大阪・関⻄万博「TEAM EXPO 2025」プログラム、第一弾の共創パートナーであるNext Commons Labが推進するSILについて、代表の林よりプレゼンテーションを行い、続いてプロジェクトのキーワードでもある「サステナブル・イノヴェイション」を考えるトークセッションです。
<トークセッション2 登壇者>
山口周氏 |独立研究者、著作家、パブリックスピーカー
石山アンジュ氏|Public Meets Innovation 代表理事、
シェアリングエコノミー協会 事務局長
小川さやか氏 | 文化人類学者、立命館大学 教授
林篤志 | Next Commons Lab ファウンダー
ここからは、本記事の編集を担当した本間が、イベントを通じて心に残った/重要だと感じたポイントを列挙してきます。
| 1 | 豊かさのモノサシとは? 49:38
2025年の大阪・関西万博に向けて、何を豊かさの象徴として世界にアピールするのか。石山氏のこの問いかけから議論は始まる。
※石山氏作成のスライド
「成長」ではなく、「リスクと共存」へ
「無限・集中」ではなく、「有限・分散」へ
「所有」ではなく、「シェア」へ
多くの人にとって、これらのパラダイムシフトに思い当たる節があるのではないでしょうか。私たちが追い続けてきた「成長」という一直線のモノサシを離れたところにこれからの豊かさの答えがあるのかもしれません。示唆に飛んだスタートでした。
| 2 | 狡猾な知恵としての”ウジャンジャ” 1:17:32
小川氏がフィールドワークを行うタンザニア人コミュニティには「ウジャンジャ」という言葉がある。
これは「狡猾な知恵」といった意味で、仲間同士であっても時に騙し合う関係をもちつつ、その狡猾さを肯定的に評価する態度を伴う。
『ある人からは物を奪い取って、ない人には原価よりも安く売る。騙した人は、騙された人に助けられたのかもしれない。騙された方は、騙した人を助けたのかもしれない。』
直接的な助け合いでないからこそ、負い目を感じることなく、誰かに生かされているような気分になれるのだ。シェアが前提の社会構造において、 こうした余韻を作るような賢さを「ウジャンジャ」と呼ぶ。
| 3 | 大企業の存在意義とは? 1:34:37
それでは、豊かさのモノサシが変わりつつある中、大企業が果たすべき役割は何か。
大企業の役割は2つ存在する。
1つ目は、リスクが高く普遍的な問題に取り組むこと
2つ目は、シェアリングの感覚をもった人材を育成すること
1.リスクが高く普遍的な問題に取り組むこと
山口氏はその著作にもあるように、現代社会は、物質的貧困の解消という使命を成し遂げつつあると指摘する。
それでもなお、リスクが高く普遍的な問題は数多く存在するが、現在の資本主義社会において、そうした問題に取り組むことができるのは大企業のみである。事業範囲が広くリソースを蓄積している大企業は、事業単体で失敗してしまったとしても、全体として利益を出すことができれば、市場から評価されるからである。こうしたアプローチは中小企業では実現できない。
ただし、ベーシックインカムのような仕組みが将来導入されれば、リスクの有無に問わず、個人の内発的動機のみで問題解決に取り組むというシナリオも有り得るだろう。
2.コモンズの感覚をもった人材を育成すること
また、大企業に所属する人材が、シェアリングの感覚・コモンズを扱う感覚に長けていると山口氏は続ける。
なぜなら、大企業の存在そのものは資本主義的だが、内部は非常に共産主義的にできているからである。
一方で、どのように組織の境界線を越境できるか、は大きな課題だ。企業内ではコモンズを扱う感覚に長けているにも関わらず、いざ社外とのシェアとなると急に閉ざされた関係性となってしまう。
境界線を越境していくことでこそ、イノヴェイションは生まれていく。Sustainable Innovation Labが企業の枠を超え、新たな価値を生み出すコミュニティを作っていくことが重要なチャレンジであると実感しました。
| 4 | 不確実性を許容し信頼のモノサシを育てる 1:44:48
企業の枠を超えて、新しい価値を生み出していく為には、何が必要か?
そのキーワードは、「信頼のモノサシ」「不確実性の許容」にある。
信頼のモノサシが不足する時代
「現代は信頼のモノサシを修行する場が足りていない」と石山氏は指摘する。つまり「騙されるかもしれないけど信じてみる」というリスクを取らずに生きていける世界であると。
昔のムラ社会であれば、その1対1の人間関係において「この人は信頼たる人物なのか?この人に自分が信頼され得るか?」という経験が存在していた。
今やそうした関係は失われ、それを担保するのがルールや組織、そしてテクノロジーに置き換わっているのである。そうした結果、一人ひとりが信頼のモノサシを修行できずにいる。
都市化が進んだ社会からムラ社会に戻ることは難しい。その中でどう信頼のモノサシを育むのか。私たちは帰路に立たされている。
不確実性を許容する
小川氏は「信頼はたまに不遂行されるくらいがちょうどいい」と指摘する。不確実性があるからこそ、人は優しくなれるし、イキイキもするし、楽しいのだと。
タンザニアでは、上述した"ウジャンジャ”のような知恵を持ち、騙し騙される関係が心地よく続いていく。つまりは、失敗を許容できる余白がそこにはあるのだ。
私たちが生きる社会の生きづらさは不確実性を排除した帰結にあるのではないか。
だからこそ、ノイズを意図的に作り、不確実だからこそ生まれる人生の喜びを設計していくことが、”これから”の社会において重要な指標になるのかもしれない。
その他議論
安全・快適・便利の時代 56:25
独自の発展を遂げるタンザニア 1:00:55
シェアリングエコノミーとは何か 1:13:07
縮小していく自治体 1:21:54
テクノロジーと自立分散型社会 1:49:59
終わりに
未来社会のキーワードが散らばるキックオフイベントとなりました。たくさんの反響もいただき、今後もさまざまな形で議論していく場をつくっていきたいと思っています。
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