安易な「生分解性プラスチック」の甘言に騙されるな。
生分解性とは一体?
生分解性プラスチックという言葉をよく聞くが、一般の人々はどういうイメージを持っているのだろうか。
しばらくすると、自然に溶け込み、土や海に還る。
環境にも優しく人体にも安全であり、今までのポリプロピレンやポリエチレンなどは、もはや使うべきでなくて、すべてのものを生分解性プラスチックに変えることで、環境改善に繋がるし、海洋生物のマイクロプラスチック問題も解消されると考えている人が多いのではないだろうか。
決してそうではない。とはっきり申し上げておく。
生分解性とは、単にプラスチックかバラバラになるのではなく、微生物の働きにより、分子レベルまで分解し、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質をいうのだ。
そして、重要になるのが、紫外線であり、温度であり、微生物の量や多様さ、水分量などである。
生分解を人間で説明してみよう。
例えば人間はある意味天然のもので、工業製品や石油製品ではない(添加物入りの食品ばかり食べている現代人はもはや工業製品かもしれないが・・)。
土葬をすると、腐っていき、最終的には土に還ると思うだろうが、それは環境によるのだ。
北欧の方では、土葬では死体が腐らないので土葬は禁止されている。分解されないのだ。
また、死体を隠そうと山に埋めたとしよう。その山の環境が寒冷で、土の微生物も少なかったとしよう。死体は腐らず残る。
これは海でも同じことだ。
常夏の海と極寒の海。極寒の海に投下された死体は腐り、分解されない。
海洋性生分解性の定義
このように、海洋生分解性プラスチックだからといって、海に投下したところで、紫外線であり、温度であり、微生物の量に左右されるのだから、本当に海で生分解される確率は非常に低いのが実態なのだ。
生分解はあくまで実験室で、整った環境における実験結果である。
決して生分解プラスチックだからといって、海に、土に投下したりなどしないで欲しい。
少し、詳細を記載するとグローバル・スタンダードで海洋⽣分解について謳うには
「TUV AUSTRIA」(OK biodegradable MARINE)が実施している厳しい基準をクリアすることが必要とされている。
(http://www.djklab.com/service/kaigai/2925)
その基準は、
「30度の海⽔中で6ヶ⽉以内に90%以上が⽣分解されること」だ。(ASTM D6691)
こんな環境の海。日本の近海で存在するだろうか。
「生分解性」の表示のワナ
あなたが、生分解性プラスチックのストローやカップが手元にあれば
よく確認してほしいのが、その割合だ。
生分解性プラスチックがたった、10%だったとしても「生分解性ストロー」と書かれていることがある。90%はなんなのだ?
生分解性の定義
最後に、通常の生分解性プラスチックの話をしておきたい。
100%生分解性としてよく使用されているのがPLAだ。
これはサトウキビやトウモロコシなどのでん粉を原料としている。
もちろん、石油由来のものと比較し、天然由来なので、環境には良いといえる(ここは議論の余地があるがここでは割愛する。)
ただし、先程の海洋性生分解でも記載したとおり、そこらへんの土に投下したところで、分解はしない。
PLAが生分解性といわれる所以はBiodegradation(生分解性) ISO14855、JIS K6953に基づき、58℃の好気的コンポスト(微生物の力で枯れ葉や生ごみなどの有機物を分解・発酵させて作られた堆肥)環境下で、生分解度が6ヵ月以内に90%以上になること。なのだ。
こんな環境の土。日本で存在するだろうか。
人工的にコンポスト施設をつくる以外、このような環境は自然では存在し得ない。
環境改善は、人間のモラルから
このようにみてくると、科学技術の力で、海洋汚染、土壌汚染がなくなる、というのは幻であると理解してもらえたと思う。
環境を改善するためにまず必要なのは、不法投棄をしない。ゴミの廃棄はルールに従う。が大切だ。つまり、まずは人間のモラル。これこそ地球環境の改善の一番の近道なのだ。
プラスチックについては、地球環境と用途の兼ね合いで、適切なものを選択するべきだと考えている。
この点については、また追って記載したいと思う。