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1ヶ月に2回も寸借詐欺に遭いそうになった話。
ぼくは昔から街中で道を聞かれることや、声をかけられることが多い。
相手は国籍問わずで、日本人もいれば、海外からの観光客もいる。
8年前(2015年)には、目当ての飲食店に行けずに困っていた外国人親子に道を聞かれたので、店まで案内して、なぜかそのまま一緒にご飯も食べた。(詳しくは下記参照)
9月に入ってからも、すでに4人に声をかけられている。
4人とも日本人男性で、言葉は悪いけど、全員なぜか身なりが汚かった。
最初の2人からは駅の構内で「〇〇に行きたい。どの電車に乗ればいいか」と声をかけられた。
駅員に聞けよと思いつつも、そんなことをおくびにも出さずにさわやかに回答していたら自分が乗りたい電車に乗り遅れてしまった。
親切なことをしたのに、この仕打ちはなんだ。
3人目は飲み帰りの深夜に梅田近辺で遭遇した、理解不能な独り言を撒き散らす歩きタバコ野郎で、「金を貸して欲しい」と声をかけられた。
現金がないと丁重に断り、ことなきを得たけど、閑散とした深夜に見た目が怪しいおっさんに絡まれるのは大人になっても怖い。
そして、4人目には昨日の帰宅途中に出会った。
帰宅時間で人が行き交うなか、挙動不審のおっさんがいるなぁと思いながら歩いていたら、おっさんの動きから、ぼくを視界に捉えたことがわかった。
おっさんは狙っていたポケモンを見つけたかのような目をしていた。
「君に決めた!」と叫ぶサトシのようだ。
もしかすると闇堕ちしたサトシなのかもしれないし、ボサボサで左右に伸びている髪型もサトシのそれを彷彿とさせているので、便宜上サトシと呼ぶ。
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ともかく、そんなサトシの動きに気づくのが遅れたため、逃げ場がない。
どうやら闘るしかないようだ。
などと考えていると、サトシが「すみません」と声をかけてきた。
いきなり問答無用で勝負を仕掛けてこない低姿勢ぶりに、「たんぱんこぞう」に代表されるモブ的なポケモン使いとの違いを感じる。
さすがサトシ。
しかし、サトシの声はガラガラで非常に聞き取りづらい。
「すみません」の5文字にすべて濁点がついているような感じと言えばイメージしやすいか。
なんとか聞き取ると、どうやら大阪駅から京都の東山まで帰りたいらしい。
怪しまれないようにしているのか、住所が京都であることをアピールするために免許証まで見せてくる。
それ逆に怪しいぞ、サトシ。
とはいえマサラタウンから出てきたばかりかもしれず、はじめての大都会・大阪で道に迷ったのかもしれない。
そう思って駅までの道のりを説明しようとするも、どうやら迷っているわけではないらしい。
もしかしてと思い、「お金ないんですか?」と聞いてみると、サトシはバブルヘッド人形のように首を上下に激しく揺らす。
さらに、「病院に行ったから、東山、800円」とビジネスパーソンが見習いたくなる要点を抑えた簡潔な説明とともに、しわくちゃになった診察票のようなものまで見せてくる。
手持ちのポケモンが不調であればポケモンセンターに行くことをおすすめしたいが、いかんせん目の前で困っているのはサトシ本人。
サトシに世話になったポケモン世代として、彼を助けてやりたい気持ちもあったものの、だからと言って、いきなりお金を貸すわけにはいかない。
そこで、「交番行けば1000円貸してくれますよ(公衆接遇弁償費)」と伝えてみた。
すると間髪入れず「あかんかった!」と、サトシはこの日一番の大声で返答してくる。
「いや、そんなはずな…」
「あかんかった!」
「別の交番に…」
「あかんかった!」
めちゃくちゃ被せてくる。
これはだめだ、会話にならない。
これ以上粘るとサトシのモンスターボールから逃れられなくなると判断したぼくは即座に現場を離脱した。
悲しそうに見つめるサトシの視線を背中に感じながら。
帰り道、もし本当にお金がないとしたら可哀想なことをしたなと思ったものの、どう考えても寸借詐欺だったと思う。
寸借詐欺(すんしゃくさぎ)とは、代表的な詐欺のひとつで、人の善意につけこみ小額の現金を借りるふりをして、騙し取る行為を指す。
よく考えると、飲み帰りの深夜の梅田で出会った3人目のおっさんも「病気なので仕事がなく金がない」ことをアピールしていたのを思い出した。
彼もサトシ同様に同情をウリにした寸借詐欺だったのか。
おそらく汚い身なりも同情を誘うためなんだろう。
そうなると駅で会った2人については、ただ単に身なりが汚いだけだったことになる。いや、汚いとか言ってすみません。
帰宅後、「なぜ、ぼくはこんなに道を聞かれたり、声をかけられるのか」と考えてみた。
道を聞かれやすい人に特徴はあるのかとググると、
・人が良さそう
・無難な服装をしている
・時間に余裕がありそう
などとある。
自分なりに解釈すると、
「たいしてオシャレでもなく、暇そうなやつ」
となる。
なんて失礼な人選だと思いつつも、自分が逆の立場ならば確かにあまりオシャレすぎる人は声をかけづらいかもしれない。
ただ、あくまで上記は「道を聞かれやすい人の特徴」。
道で声をかけられるというか、寸借詐欺に1ヶ月の間に2回も遭うということは、上記のような特徴に加えて「こいつはカモれそう」と思われる何かがあるのかもしれない。
彼らからすれば、ぼくなど鴨がネギ背負ってるように見えるのか。
カモネギかよ。
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そんなことを考えていると、10年前にも梅田の街中でおっさんにカモられそうになったことを思い出した。
会話の詳細については忘れたものの、なぜかおっさんと賭けジャンケンし、負けた方がお金を払うという勝負に巻き込まれた。
その時のおっさんが札束(ぽいもの)が入った封筒をチラつかせて金があることをアピールし、リアリティを出してきたため、ぼくは金に目が眩んでしまったのかもしれない。
完全にアホだった。
そして、軽い気持ちで挑んでしまい負けたところ、お金を払うよう10数分にわたって、しつこく言い寄られた。
あまりにしつこいので、少しずつ「あれ、これ払わないとあかんやつか」と脳が麻痺してしまい、ATMの前まで連行されかけた。
なぜあそこまで追い込まれてしまったのか、いま考えると意味がわからないけど、とにかくおっさんの言葉巧みさに完全に誘導されていたんだと思う。
あと、めちゃくちゃ口が臭かった。
まじで支払いそうな思考になっていたなか、間一髪で冷静さを取り戻し、「いや、やっぱおかしいんで帰ります」と伝えると、「あ、そう。ほなええわ」となぜかこちらが悪いような雰囲気を醸し出して、そのおっさんは雑踏の中に消えていった。
たぶんあの時も、口臭おっさんにとって、ぼくがカモネギに見えたんだと思う。
改めて文章にして読み返してみると、自分でも、なぜそんなことに引っ掛かるのか、なぜ無視しないのかと呆れるが、その瞬間は意外に冷静になれかったりするもんだ。
目の前の人からの声かけを無視するのは簡単じゃないし。
もちろん詐欺をはたらきかけてくる側が100%悪いのだが、それでも一定数そういう輩は存在しているので、やはり最後は自衛できないといけない。
まずは、そもそも声をかけられないことが一番だ。
そのためには、見た目から舐められないようにすることが大事なはず。
そういう意味では日々行っている筋トレの目的にも、そういった意向が無意識下に含まれているかもしれない。
ところが、10年前と比べて筋肉も増え、身体も大きくなったにもかかわらず、いまだに道端でわけのわからん奴に声をかけられているのが現実だ。
もしかすると、もっとムキムキになるか、他の方法を考えないといけないかもしれない。
舐められなくする方法はまだ思いつかないけど、
カモネギかて「いあいぎり」とか攻撃できんねんぞ、舐めんな!!
ということを考えながらも、詐欺には気をつけないといけないと思ったので、みなさんもどうぞお気をつけください。