ほれた。
大学のプロジェクトで、某有名企業へのプレゼンテーションがあった。
僕のチームは男女半分ずつの4人チームで、最終審査に選ばれ、発表した。
当日。
資料の作成も担当してくれたビジネス科の女子2人が発表した。
審査員は、某企業の責任者数名と、僕の大学の学長や学科長だった。
zoomでの発表だった。
僕のゼミの先生の提案で、プロジェクターで資料を壁に投影して発表することになっていた。
しかし、発表前の準備中、審査員のある方が、「見にくい。ふざけるな。」という強い口調で指摘したため、急遽、資料の画面共有になった。
また、資料内に埋め込まれていたSNSの動画を画像に変えて、実際のスマホで映像を見せたのだが、その人が「なにしてんの。見えない」と言った。
結局、プレゼンに必須の映像も見せられなかった。
プレゼンが終わった。
他の班のプレゼンを聞く中、発表してくれた1人の女子が泣いていた。
(ちなみに、指摘してきた審査員は、うちの大学の他のゼミの先生だった)
ぼくは彼女たちが本当に努力していたのを知っていたし、悔しさや、無力さにうちのめされていた。
全班の発表が終わり、審査中の休憩時間。
気づくと、グループのもう1人の男子が、アーモンドチョコレートを4個買ってきていた。
女子たちの、顔がほころんだ。
ほれた。
「あまりにも場の空気が重くて、いられなかったんだよね」と彼は言った。
こういう人になりたいなぁ。と思った。
結果発表。
僕たちのチームは、優秀賞だった。
聞いた瞬間、思わず「ええ??」と変な声が出た。
彼女たちは泣いていた。
企業の審査員が言うには、資料の作り方が良かった。ターゲットのペルソナも明確で、サスティナブルな提案まで考えてくれたことを評価したと言った。
もちろん、資料は他の班も良かったが、彼女たちの資料はとても優れていたと思った。
そして何より、あれだけのイレギュラーなトラブルや、高圧的な審査員の言動にも、プレゼン中に動揺を見せず、最後まで発表した彼女たちの評価もあっただろう。
彼女たちは。本当に強かった。
そして、もう1人の彼は、優しかった。
ちなみに、この4人の中で、ぼくがリーダーだった。
一応、提出にリーダーを選ぶ必要があったからと、最年長の僕が「まあいいか」くらいの気持ちだった。
正直に白状すると、受賞しなくてもいいやーぐらいの軽い気持ちだった。
間違いなく、MVBは彼女たち、隠れMBPはアーモンドチョコレートの青年だ。
本当に、学ぶことが多い日だった。