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[レポート]ニュートラの学校 エクスチェンジ編報告会を開催しました

3月8日(金)に、「ニュートラの学校」エクスチェンジ編の報告会を京都市内で開催しました。18名の関係者と10名のお客様が集まり成果物も展示され、充実した2時間となりました。

1. 大村大悟さんによるトーク

まずは、ゲストによるトークを聞きました。お招きしたのは美術作家/彫刻家の大村大悟さんです。
大村さんは「道具と身体」を活動テーマのひとつとし、美術作品を制作するほか、民具を復刻製作したり自分なりに解釈し生み出したりされています。エクスチェンジの取り組みは、素材、身体、道具、行為といったキーワードをふまえ実施してきましたが、かたちのある物を完成させることをゴールにしたものではありませんでした。大村さんの活動は、エクスチェンジと重なるところがありつつも、より一般的なものづくりのアプローチに近いであろうと考え、お呼びしました。
大村さんのお話からいくつか紹介します。

・どこからものづくりか、という視点
ひょうたんの器づくりは、栽培から自分でおこなうことができる。どの時点からも自分でできるというのが、面白みを感じている点。
・それに加え、漆とひょうたんという、相性がよくて人との付き合いの長い組み合わせが存在する。そういったことを、自分で試すのが楽しい。
・民具やくらしの道具
美術作家としての活動のほか、依頼を請けて作ったものとして、藁腰掛け、一合の椀、餌合子(えごし)などある。復刻にあたり民具を観察すると、作り手によっての違いがあらわれており、それを分析するたのしさがある。
・道具との付き合い
良いと聞いていた道具から入り、その後自分向けに道具をアレンジすることも、積極的に試してみている。

「一合の椀」。試作を重ねるなかで、決まりごとの中にある遊びの範囲を見出す
美術作品として発表しているものや、素材・道具を会場にお持ちいただきました

(参考)大村さんがものについての視点や取り組みについて執筆された連載をご紹介します。

2. エクスチェンジの経緯の説明

2022年度の時点で、森野彰人さん(京都市立芸術大学 教授)と安藤隆一郎さん(同校 准教授)にはNEW TRADITIONAL「ニュートラの学校」にご協力いただいていました。その際には、障害のある人や大学生が一緒に参加するワークショップを開催しました。幸いにも2023年度は、大学院の授業としてニュートラの学校を実施できることになりました。

森野彰人さん:ニュートラの学校を授業の一部として受け入れた理由について。伝統を時間に、技術を行為に置き換えることで、学生が各項目をとらえなおす機会としたいという教育面での期待があった。芸術系大学では、「綺麗な作品・凄い技」を終着点に据えがちだ。だが、ものをつくるとは何か、人がともに生きるとは、といったことを、ものづくりを通して考えたり自分で発見したりするという経験がより重要だということに気づいてほしかった。
そういったことを考えたときに、安藤さんをこのプロジェクトにさそいこんだ。

エクスチェンジを、大学と福祉施設とがたんに一緒に物をつくることに尽きさせない。目的が不明でも、自ら気が付き見出すことの大切さがあるはずだ。この取り組みで目指していたことについて、それぞれが熱心に語りました。

3. 起きたことや実施したことについて振り返る

実際のエクスチェンジ全7回の経過について、たんぽぽの家スタッフと教員より、時系列と写真でかんたんに紹介しました。
取り組み内容は順序だてて決めていたわけではなく、メンバーや学生もふくめての検討とこころみの連続でした。参加者たちで都度、言葉による振り返りをおこないました。そのなかで「たたく」について、音の作用が感じられる、どんな物でもたたける、誰にでもやりやすい、といった感想が集まってきました。徐々に実施内容は、「たたく」に対し素材や状況を付け替えてみるというやり方に集約されていきました。

土をたたく
木をたたく
布をたたく

安藤隆一郎さん:「たたく」を他人や機械に任せることは、すでに確立されたベストな方法のように一見感じられたと思う。でも、時間がかかっても自分で至ることの大切さを学生に知ってほしかった。今回のエクスチェンジでいえば、座る位置をローテーションにすることで他人の行為の影響を自ら受けとりに行ったり、丸太をころがすという遊びやコミュニケーションから発生した表現があった。それらは、短い時間の中ではあるが、自分たちで獲得できたことの例と言えるだろう。

たたいた布を前に話す安藤さん

学生とメンバーも一人ずつ感想を述べました。

京都市立芸術大学大学院 美術研究科工芸専攻在籍生
石田明里さん
:「やってみたけど、これは何だ?」と言葉にもできないことが多かった。最後は、全員でひとつのものを作れてよかった。
大西珠江さん:いろんな人と関わりたくて授業に参加した。終盤は、動作など共同の体験をとおして時間を過ごせてよかった。
美馬摩耶さん:授業のあと独自に布を染めたり追加でたたいたりした。何をやっているかをはっきりと理解はできないが、あそぶ感覚でやっていると、面白くて続いてしまった。
※授業に継続的に参加された学生さんが他にもいましたが、この日は出席が叶いませんでした。

左より 美馬さん、大西さん、石田さん
授業でたたいた後に、ドングリで草木染めした布

Good Job! センター香芝メンバー
西村麻菜さん
:粘土をこねるのは難しかったが、周りの人たちの作業を見回して情報を取り入れた。隣で作業をしている人が、私の作業した粘土からインスピレーションを受けて応答するような作品を作ってくれたのが嬉しかった。
森田祐也さん:「何のためにたたくのか」と教員に聞いたら、「それを探すため」と言われたのが印象に残った。
花谷龍介さん:その時感じたことを絵で描いたのでぜひみなさんに見てほしい。

後列左より 西村さん、森田さん、花谷さん
花谷さんの線画が会場で回覧された

たんぽぽの家アートセンターHANAメンバー
水田篤紀さん:一人での作業が続くともの足りなかった。道具と体、疲労との関係や、継続の大切さについて考えた。
清水要一さん:たたく作業そのものや、他人と一緒にたたくというのが楽しかった。一人だとすぐ飽きる。
行方雄大さん(ケアスタッフ):ケアしながら自分も作業に参加できたのは、楽しかった。

前列左より 水田さん、行方さん、清水さん

会場のお客様からは、考古学的な視点をヒントにすると、布だけに跡が残っているように見えるが道具や体にも痕跡が残っているのだろう、というコメントをいただきました。

今回の報告会では、時間の制約もあり、身体との関係性や反復行為についてまで議論を詰めるに至りませんでした。しかしながら、みんなが抱えたもどかしさや、継続の価値について会場のお客様とも共有できたと感じます。ご来場の皆様、ゲストの大村さん、京都市立芸術大学のみなさま、ありがとうございました。

エクスチェンジ第6回目でとりくんだ、たたいた布2枚をを会場に展示しました

エクスチェンジ実施の様子は、こちらの記事でご覧いただけます。

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写真:仲川あい

「ニュートラの学校」エクスチェンジ編 報告会
障害のある人×京都市立芸術大学の工芸系学生=? 素材と身体と行為からものづくりを考える
2024年3月8日(金)17:00-19:00
FabCafe Kyoto (京都府京都市下京区本塩竈町554)

*本事業は、文化庁「令和5年度 障害者等による文化芸術活動推進事業」において「ニュートラの学校:福祉と伝統工芸をつなぐ人材育成と仕組みづくり」 として実施しました。

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