ニュートラの学校 ラーニングプログラム:大東市立歴史民俗資料館×手つむぎコットンワークショップをふりかえって
2024年3月3日(日)に大東市立歴史民俗資料館でワークショップ「綿繰り機と糸車をつかって河内木綿をつむごう!」を開催しました。この記事では、ワークショップ後に参加者のみなさんやファッシリテーター、講師の方々に感想や課題などをお聞きした内容を中心にご報告します。
当日のワークショップ内容についてはこちらにレポートしておりますので、あわせてごらんください!
[レポート] ニュートラの学校 ラーニングプログラム(3/3〔日〕):綿繰り機と糸車をつかって河内木綿をつむごう!|New Traditional (note.com)
また、事前勉強もかねて、2023年8月31日に大東市立歴史民俗資料館について訪問させていたときのレポートはこちらです!
[レポート] ミュージアム探訪「大東市立歴史民俗資料館」|New Traditional (note.com)
参加者について
大東市や四条畷市など地元に特化した福祉施設を中心にチラシを配ったとでは、。たしたちニュートラスタッフにとっても初めて出会う福祉施設からご参加いただくことができました。さをり織りやアートヤーンをしているところなど、糸に対する興味関心が深い方々が多かったのが印象的でした。なかでもちょうど洋綿を育てていて、利用者の方々の作業に生かせないか考えている福祉施設からは、スタッフだけでなく利用者さんも含めた集団での参加お申込みがありました。結局、ご都合により利用者さんは直前に参加できなくなったのですが、今後どのように発展されていくか、いつかまたお伺いできたらいいなと思える出会いでした。
お子さんの参加もありました。もともと大東市立歴史民俗資料館のアウトリーチプログラムは、小学校へ体験学習に伺うことが多いと聞いていたので、講師の方の教え方もとても慣れている感じでした。
ワークショップ終了後に書いていただいたアンケートには以下のようにお答えいただきました。
また、奈良の福祉施設でワタを栽培して繊維や布づくりに挑戦しているところや、奈良でひきこもり支援の一環として畑で綿や野菜をつくっている兼業農家をされている方の参加もありました。それにより、本ワークショップでは、糸つむぎを日常的に業務とする人とそうでない人(これから業務にしたい人も含む)との交流が実現し、ワークショップの合間に自然に情報交換をされている情景がみられました。
ご自身でもコットンワークショップやレクチャーを主催することが多い方々だったので、今回、講師の方のお話の仕方などがとても参考になったようでした。
本ワークショップには、視覚に障害のある参加者もいらっしゃいました。糸つむぎは初めてとのこと。針でけがをしないよう気を付けながら、触ることと言葉を通じて糸つむぎを体験していただきました。アンケートも後日詳しく書いて送ってくださいました。
ファッシリテータ、講師について
本ワークショップで河内木綿のレクチャーやワークショップのファッシリテーター役を担われていたのが、大東市立歴史民俗資料館学芸員の森井綾乃さんです。
そして、森井さんをサポートしながら、平行してワークショップ講師として関わってくださったのは、大東市立歴史民俗資料館館長の森田拓馬さんです。
学芸員・森井綾乃さんへの質問と回答
--ワークショップを実際にやってみて感じたことは?
今回は、既にワークショップを運営している側の方が多かったことや、同じ職場から複数名参加している方がいたことから、道具の順番待ち時間の間を参加者同志の雑談で埋めてもらえていたが、単独参加者ばかりだった場合には待ち時間が長くいらだたせることになったかもしれないと思う。
--ワークショップを実際にやってみて気づいた課題とは?
普段、例えば子ども対象であっても、小学1年生向けに話すのと、3年生向けに話すのとでは話し方や内容を変えるようにしているが、今回はどのような難易度に設定するべきか障害者対応の経験がほとんどなく迷った。障害の有無や年齢などの情報がイベント直前までわからず、特別な対応の準備が必要なのかどうか不安だった。事前打合せで確認するべきだった。
--ふだん自前でやっていらっしゃるときと今回のWSとで、何か違いはあったか?
普段、木綿関係のワークショップイベントを行っても、木綿関係者が来ることは少ないが、今回はすでに木綿関係の取り組みを行っている参加者が多くて驚いた。普段来られることがほとんどない奈良県からの参加者や福祉関係者に多く参加いただくことができた。チラシの文言や、たんぽぽの家の影響力のおかげで、地元でもかかわりのなかった福祉関係者にも来ていただけてよかった。チラシのデザインも素敵で、普段見てもらえていない層の目にもとまったのではないかと思う。[チラシPDF]
館長・森田拓馬さんへの質問と回答
--ワークショップを実際にやってみて感じたことは?
今までに小学生への出前授業として糸車や河内木綿のWSを実施した経験はあるが、今回のように大人向けで多様な参加者対応は初めてだった。スタッフの配置が事前に決められていたこと、そしてスタッフ側の人数が多く居たのでケガや事故が怒らずに終えられたことに安堵した。
--ワークショップを実際にやってみて気づいた課題とは?
今回のイベントの位置付けが、参加者に対して充分な対応ができるかが課題だったのか、実施してみてどのような問題が出てくるのか(そしてそれに対する対応策にどのようなものがあるか)を洗い出すことに重点が置かれているのかが私自身把握できていなかった。
糸車や綿繰り機の台数制限もあり、参加者の作業を同時に終えることが出来ないためイベントの最後の締め方が難しかったと思う。
--今回の体験を今後の活動に活かすとしたら?
主催者側自身で理想を高く設定し、ハードルを高くして足が重くなるのではなく、まずは動いてみて、失敗は次に活かすくらいの気持ちで挑む必要があると思う。また、気軽に参加して貰えるような雰囲気作りや、参加を希望する人から問合せをして貰えるような環境を整えることだと感じた。
ノウハウがあまりにも少ないため単独で同じようなことをやれるか、と言われると自信がないが、例えば公募型ではなく1施設を対象にして、先方の施設職員と協力したイベント実施などは実現できそうだ。また、要望があるならば特別支援学校への出張授業なども検討できると感じた。
おわりに
ふだんなかなか体験できない綿繰り機や糸車を実際に触って糸をつむぐ経験を多様な背景を持つ方々が集まった場でいっしょにできたことは、ニュートララーニングプログラムの財産のひとつとなりました。そのことは前提として大きくあります。
ただ一方で、関係者へのアンケート、聞き取り結果にもあらわれているように、最後、みんなで語り合い、体験をふりかえってみることは、体験の進度がばらばらだったこともあり、難しく、この辺のところを全体をみながらどう時間配分していくかが今後の課題としてあることがわかりました。
そのためにもミュージアムサイドとも、お互いに忌憚なく意見を交換できる関係性を保つことが肝要だと思いました。
特に、開始前の段取りを、もう少しこまやかにステップをふんだほうがよかったように思います。例えば、障害のある人にどのように対応すればいいのだろうかという不安を払拭して当日を迎えられるようにしたり、課題設定に関しても、もう少し具体的に事前にイメージのすり合わせをしたうえで、臨むようにすべきだったと思いました。
最後に、このワークショップで出会った地元の福祉施設の方が綿を育てるところから障害のある人の作業内容へとどんなふうに発展させていくのかが、本当に楽しみです。大東市立歴史民俗資料館さんとのご縁もつなぎながら、将来いつか見学に行かせてもらいたいなあと思っている今日この頃です。
写真:衣笠名津美
構成:後安美紀(一般財団法人たんぽぽの家)