newton radio #2 大寺聡はイラストレーターであり、ジェダイマスターである。 編集後記
こんにちは。Steve* inc.の太田です。今回は、僕がゲストとして呼ばせていただき収録した、newton radio(ニュートンラジオ)の「#2 イラストレーター大寺聡さん」の回がリリースされました!その収録に関しての編集後期です。
newton radioって何?という方はこちらをご覧ください。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000037549.html
newton radioは「何かに惹かれて生きてきたボクらが、どうしようもなくキミに惹かれる理由。」をテーマに掲げ、様々な領域で活躍するクリエイターや企業のブランド担当者をはじめとする、ボクらがどうしようもなく惹かれるゲストを招き、そのゲストになぜ惹かれるのか?という「引力」の解明を目指す音声番組です。
改めまして、「#2 イラストレーター大寺聡さん」の回でパーソナリティを担当した太田です。今回は僕がお呼びしたゲストということもあり、編集後期を担当させていただきます。ゆるりとお楽しみください。なお、この記事は生の「声」を収録した番組を聴いてから読むのがおすすめです。
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今回のゲスト
大寺 聡
1966年生まれ。1990年、武蔵野美術大学デザイン学科卒業。以降、フリーイラストレーターとして活動。2000年、活動拠点を東京から現在の鹿児島県日置市吹上町に移す。「最新のデジタル技術と豊かな自然の接点」をテーマに表現活動を続けている。
newton radioメンバー
(左)太田伸志(中)加来幸樹(右)no.9 城 隆之
Newton radio メンバー
太田 伸志
株式会社スティーブアスタリスク 代表取締役社長。1977年宮城県生まれ。クリエイティブディレクターとして、広告企画や商品開発を多数手がけると同時に、地域ブランディングにも積極的に取り組む。また、武蔵野美術大学や東北学院大学の講師も歴任するなど、大学や研究機関との連携にも力を入れている。作家で唎酒師でもある。
加来 幸樹
株式会社サインコサイン 代表取締役社長。1983年福岡県生まれ。九州大学芸術工学部卒業。2018年にサインコサインを設立。「自分の言葉で語るとき、人はいい声で話す。」という理念のもと、企業理念や個人理念、ブランドのネーミング・タグラインなど覚悟の象徴となるアイデンティティの共創を通じて価値提供を行う。
no.9(城 隆之)
Steve* Music エグゼクティブプロデューサー/アーティスト。実績と経験に基づく緻密なサウンドデザインと幅広い音楽性を併せ持つ作曲家。アーティスト活動と平行して、TVCMやWeb広告、映像作品など数々の音楽を制作。最近では他アーティストのプロデュースや執筆、音楽ガジェットの開発など、その活動は多岐にわたる。
鹿児島のオビ=ワン・ケノービ
僕は大学生の頃「イラストレーター」という職業がこの世で一番格好良いと思っていました。そんな憧れに少しでも近づきたいと、iMacを購入。読みふけった雑誌「MacFan」でイラストレーターとして紹介されていたのが大寺さんでした。
ラジオ内で僕が大寺さんへ仕事を依頼したくだりがありますが、スターウォーズで言えばルークがオビ=ワンに「ライトセーバーを振ってみて」とお願いするような恐れ多いことと感じていました。でも、仕事の特徴を知れば知るほど頭の中に浮かぶイラストは大寺聡のイラスト。こんなチャンスはもう来ないかもしれないと、決死の覚悟で依頼者の立場でメールを送りました。
結果、大寺さんもその仕事を楽しんで描いてくれたようで、そこから家族ぐるみでの交流が始まりました。ラジオ内にも話題に出てきますが、最近のお仕事では、ネーミングやコピーなどの世界観は僕が考え、それを大寺さんにイラスト化していただいたD2Cサービス「SPACESHIPS(スペースシップス)」も最高でした。
ね、最高でしょ。
僕の中では、こういった近未来世界を想像してもらうなら、ジョージ・ルーカスか、スティーブン・スピルバーグか、大寺聡なんです。この仕事を依頼させていただいたことを、大寺さんは本当に嬉しかったと言ってくれました。20代の頃の僕が感じていた「ザ・大寺さん」のど真ん中を狙っての直球で依頼させていただいたのですが、このイラストは、大寺さんがずっと受賞を狙っていたアメリカの国際コンペ「3x3 international illustration awards」も受賞!大寺さんは楽しんで描いた気持ちが伝わったのではないか。描きたいものが描けた。とおっしゃってくださいました。
クリエイティブディレクターという仕事において、それ以上の嬉しい言葉はありません。こちらこそ、ありがとうございます。
スーパーヒーローは悪いことができない
ラジオの中で、大寺さんの印象的なコメントがあります。
「表現の自由が制限される時代」
多様性こそが常識となっている現代社会。僕も、働き方や生き方の多様化を受け入れる社会変化は大賛成です。ただし「多様化は違う」という考えを一切認めないという社会の風潮も加速し、単一化の加速による表現の自由の制限、すなわち非多様化ともとれるパラドックスが起きています。
大寺さんの学生時代、キャンパス内では一人ひとりが目立つ格好をしたパンチのある先輩ばかりで、自分もピンクの白衣!を着るなど、何か表現して目立たないと負けてしまう気がしたと言います。確かに、現代社会では目立ちすぎると叩かれてしまうということも起きやすくなっている気はします。「目立たないために皆と同じように多様性を語る」って、確かに不思議な気がしますね。
大寺さんはこうも言います。
「スーパーヒーローは目立つので、悪いことができない」
派手な格好を含め、自分の名前をさらけ出し作品を発信し続けること。発表し続けることで周りの人にも認識されるということは、さまざまな行動にも責任が自然発生するという意味です。大寺さんは「地方は究極の顔認証社会」だと言っていますが、確かに、どこの誰という認識がすでにある限り、変なことはめったに起きにくい=治安が維持されるという視点もあるなと感じました。
今、デジタル技術でやろうとしていることは、地方ですでにできていることを都市が手に入れようとする活動なのかもしれません。「あの人だったら大丈夫」という信頼をデジタルの技術が追いかけている。「あの人」と言われる窮屈さを感じて地方を離れる人が、もしかしたら都心では「あの人」かどうかを認識しようと研究している。人間って、本当に面白いです。
スピルバークらしさって何だろう
大寺さんは新聞に「南点」というコラムを連載してたことがあります。その中に書かれていた文章で僕がハッとした表現がありました。
「『ジュラシックパーク』と『シンドラーのリスト』の共通点こそが、スピルバーグらしさである」
普通に考えれば、まったく作風の異なる2つの作品なので『ジュラシックパーク』みたいな一面もあるし、『シンドラーのリスト』らしい一面もあるんだね、スピルバーグは。意外だね。ということになりそうなものですが、空気感、緊張感、至る所に感じる共通点にこそ「スピルバーグらしさ」は隠れていて、それは他者が気づくものであり、自分では気づけないという記事でした。
確かに大寺さんのイラストはさまざまな作風があります。イラストレーターは一つの作風でブレイクして、一人につき一スタイルというイメージが一般的にはありますが、大寺さんはそういった自分らしいスタイルを決めることに最初から興味が無かったと言います。今でもいろいろなタッチを試したくなる。10種類描いて、10種類を見て誰かが大寺だと気付く部分があれば、そこだと思うと語ります。
僕が講師を務める大学では、自分らしいスタイル=いわゆる「自分らしさ」を見つけられないと、学生から相談されることが多いですが、それもそのはずです。だって、スピルバーグ理論でいえば、自分では自分らしさはわからないのですから。確かに、Steve* inc.もビールの商品開発からコインランドリーの空間デザイン、絵本や歌を作ったり、、、やればやるほどなんの会社?(笑)とはよく聞かれますが、同じくらい、スティーブっぽいね。とか、太田さんっぽいねと周りから言われることも多く、そういう意見を聞くことで、自分が気づかなかった自分らしさを徐々に認識している感覚があります。
まとめ
改めまして、太田です。この番組の趣旨は「何かに惹かれて生きてきたボクらが、どうしようもなくキミに惹かれる理由。」つまり、どうしようもなく惹かれるゲストを招き、そのゲストになぜ惹かれるのか?という「引力」の解明を目指す音声番組。
僕が、この番組を通して改めて感じた大寺聡という人間の魅力は「シンプルに悩む人」だからなのかも。と感じました。「複雑に悩む人」でもなく「悩まない人」でもなく「シンプルに悩む人」。世の中にはシンプルに考えたら変なことが沢山あります。「自分らしく生きて良いんだよ」と言われる時代だからこそ、自分らしさに悩む学生が増えたように、その本質と向き合い、認め、共存する。それが大寺さんは感覚的にできているのだと思いました。
世の中には努力できる部分と、努力が届かない部分が確実に存在する。シニカルな視点でもあるけれど、前向きなあきらめというか、さらけだし続けることで自分らしさに近づいていく。僕にとってのジェダイマスター、大寺聡の教えを受け継いでいきたいと改めて思いました。
この記事は生の「声」を収録した番組を聴いてから読むのがおすすめです。
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