ステークホルダー同士の目線合わせを行うことで、まちづくり、観光産業、文化復興のエコシステムを整備する──NEWSKOOLが取り組む5つの機会領域
NEWSKOOLは1年間のリブランディング期間を経てナイトデザインカンパニーとして生まれ変わりました。私たちは「誰もが楽しめる夜をつくる」をミッションとして掲げ、夜という時間を切り口に、街や人々の暮らしを豊かにしていきます。
NEWSKOOLの取り組む5つの課題領域
2020年現在、COVID-19の拡大により、ナイトタイムエコノミーは大きな打撃を受けています。社会システムの根幹となっているフィジカルな繋がりは希薄になっており、今後、新たなイノベーションをどのように創出していくかという問題にも直面しています。
先の見通しづらい時代においてこれからの社会に必要とされるのは、行政、企業、イノベーターや地域住民などさまざまなステークホルダーが共通の認識を持つための「問い」を打ち立てられる会社だと考えています。そのため、私たちはアーティストや若手起業家、DMO(Destination Management Organization)などの様々な立場の方々からヒアリングしたアイディアと過去プロジェクトのインサイトを統合し、以下のA~Eの5つを機会領域として設定しました。
まちづくり、観光産業、文化復興のエコシステムを整備する
第2回では「B.まちづくり、観光産業、文化復興のエコシステムを整備する」について説明していきます。多様性のある時代においては、ローカルな魅力溢れる観光地や都市部こそが人々から求められるものであり、その実現には観光産業やまちづくりにおいて文化復興を支援するためのエコシステムを構築することが必要とされていると私たちは考えています。
よりローカル的な魅力を拾い上げる
そのためには、その土地に根付く文化や歴史を活かしながら、新しいかたちの体験型観光を生み出していくことが重要であると考えます。2021年に東京オリンピック、2025年に大阪万博を控えている日本では、行政を主導に観光客に向けたコンテンツ整備が進んでいます。しかし、既存の観光客向けコンテンツはマス的なものが大半を締めており、日本独自の魅力を求め来日してくる外国人観光客の需要を満たすことが出来ません。その土地固有の魅力を掘り起こし、アップデートしたかたちでコンテンツに落とし込むことで、観光客と地域双方にとって満足度の高い事業が生むことが必要とされています。
具体的には以下の3つを実行していきます。
①「その土地に住む人の歴史や文脈の発掘」ではデザインリサーチなどの手法を用いてその土地のローカルな魅力の掘り起こしを行います。②「文脈に光を当て直し、体験型観光としてアレンジ」では、①により発見された土地の魅力を生かしたコンテンツを地域ステークホルダーと共創していきます。③「地域住民と観光客が混じり合う場の設計」ではオーバーツーリズムに耐えうるような持続可能な観光コンテンツの設計を行うことを目指します。
この課題領域における成功事例として株式会社ONESTORYによる「DINING OUT」があります。
「DINING OUT」は日本各地のユニークベニューにおいて野外レストランイベントを開催しています。食事体験に地域固有の文化やロケーションといった特別な付加価値を与えることを目標としています。クリエイター、コンテンツホルダー、メディアまで、幅広い分野から多様な人材をキャスティングすることで、時代にとって新しい視点を導入します。ローカルパートナーとコラボレーションすることで新しい地域価値を長期的に「共創」しています。
2016年、有田焼創業400年プロジェクトの一環として、佐賀県の名護屋城跡並陣跡で「DINING OUT ARITA」が開催されました。「場所」、「器」、「食」という複合的な要素を融合させるこのイベントを通じて、参加はが歴史や文化それらを育んだ自然や景観を体感することができました。また、地域の歴史的背景にまつわる物語や有田焼の魅力を世界中に発信しました。
ステークホルダー同士をマッチングさせていく
観光・文化・都市を有機的に連結させ、よりよいまちづくりを行うため、ステークホルダー同士の対話の機会を作ります。行政などの設計サイドと事業者などの運用サイドの乖離が起きている現状で、お互いの理解と目線合わせ行うことを目指します。
具体的には以下の2つを実行していきます。
①「各ステークホルダーの価値観や課題のヒアリング」では、様々なステークホルダーが共通の認識を持つための「問い」を打ち立てることを目指し、多様な意見のヒアリングを行っていきます。②「お互いの目線合わせを目標とするワークショップの実施」では、観光・文化・都市に関するステークホルダーを繋ぎ合わせるため、ナイトタイムエコノミーに関するワークショップを実施します。
この課題領域における成功事例としてアムステルダムにおける「ナイトメイヤー」の取り組みがあります。
アムステルダムにおけるナイトメイヤーは”rebel in a suit(スーツを着た反逆者)”を自認し、ナイトライフ向上のために行政に対して同じ土俵に立ち議論していることが特徴です。アムステルダムにおいてナイトメイヤーは非営利団体として存在しており、音楽業界、飲食業界、宿泊業界、デベロッパーなど民間からの意見を集約し、アムステルダム市に提言する役割を務めています。実際に、ホテルやケータリング業界の24時間の営業許可取得や、ナイトタイムにおける女性の性差別、安全に関する意識の向上などの取り組みを行っています。
また、その他の事例としては「パープルフラッグ制度」があります。
パープルフラッグ制度とは、英国国内においてナイトタイム関連事業が集中する地域のうち一定の安全性が確保されている地域を「パープルフラッグ」と称して認定する制度です。認定は、NPOである”ATCM(Association of Town and City Management)”が行っています。
市街地の管理・振興を目的とする団体や、ビジネス改善地区団体、全ての地方公共法人などが申請可能であり、犯罪率の低下や治安の改善、飲酒者への適切な健康対策など7つの厳しい評価を満たすことでパープルフラッグを獲得できます。パープルフラッグを獲得することで地域イメージの向上、犯罪または反社会的な行動の軽減、持続的な混合経済の活性化、地域パートナーシップの強化などのメリットを得られます。実際にここ3年間で70の団体がパープルフラッグを獲得しています。
『Night Design Lab』とは?
新たなる「夜の価値」を探す研究機関です。国内外のナイトタイムエコノミー事例やナイトカルチャーに関わるキーパーソンへの取材、ナイトタイムの課題や新しい楽しみ方の提案、インサイトの発信を行います。
https://newskool.jp/