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2022年、ナイトタイムが向かうべき旗を立てるために:NEWSKOOLが注力する「5つの機会領域」

2020年から2021年は、「都市に人が集まることの意味」を考えさせられました。パンデミックにより大きく生活様式が変化した結果、都市に人が集うことは少なくなり、オフィスビルや商業施設からのテナントの撤退が続きました。

それに逆行するかのように、会員制バーなどのクローズドな空間や路上などの公共空間に人々が集う様子がみられました。文化の展開や人との出会い、イベントなどの機会を提供していくという「都市の祝祭性」を改めて感じさせられた日々だと思っています。

そのような仮説をもとに、2021年2月よりShibuya QWSというインキュベーションセンターで活動をはじめました。そこでは「もしも渋谷にオフィスビルがなかったら?」という問いを掲げながら、下記のような視点からプロジェクトに取り組みました。

“現在、再開発と新型コロナウイルス感染症の影響で、都市のオーセンティシティを担保するような小規模な飲食店やクラブ、ライブハウス、アートギャラリー等が減っていますが、オフィスビル亡きあとの渋谷はいかなる都市に変容を遂げるのでしょうか? クリエイティブクラスが集い、都市そのものがインキュベーションハブとして機能する都市なのか、空洞化からの回復は不可能なのか──。

アムステルダムのナイト・メイヤーを務めたミリク・ミラン氏は、「夜」がもつ3つの価値のひとつとして “ナイトソーシャライジング“を定義し、昼の肩書を忘れて交流を深める夜独特のコミュニティこそが重要だと提唱しています。

そしてわたしたちは、“カルチャー感“のある商業施設や駅前に並ぶ商業施設ではなく、あらゆるジャンルの人が意識せずに集う個人の経営するコアなバーやクラブ、狭いアートギャラリーといったストリートでこそソーシャライジングは起き、新たなる文化が生まれ、それが都市の価値として還元されていくのではないかと考えています。ナイトカルチャーや感性からの場所の検索といった領域で活動し、20代を渋谷で過ごしているわたしたちが、2030年に向けた渋谷の街の課題とポテンシャルを探ります。”

本プロジェクトを通じて、多くのステークホルダーのみなさんより暖かい賛同の声や厳しいフィードバックをいただきました。

“新しい価値が創造的に生まれ続ける環境、そして、心踊るような刺激に溢れた空気感が漂う持続可能なカルチャーを生み出し、創造的なエナジー溢れるエリアを生み出せないだろうか。人はそんな「夜」に独自の文化性や共通の社会性を育てられたりする。従前の都市開発から脱却し、リアルな人々を起点とし、文化性を強烈に纏った都市をデザインをすることに人々の行動を掻き立てていくことに強く期待!”(QWSチャレンジプロダクトに採択いただいたKESIKIの石川さんの応援コメント)

2021年の終盤になって緊急事態宣言もあけ都市への人流も戻り始めましたが、以下の2つの変化があったように感じています。

①ナイトタイムの都市はCOVID-19以前の状態へは戻らない

パンデミックによる住環境の整備や、習慣が変化したこと(週3日飲んでいた人が週1日の飲みでよくなったなど)によって、夜に都市に繰り出す全体人口は減少している状況です。

例えば渋谷道玄坂にある某クラブでは、コロナ前に平均動員数300~500人だったのに比べて緊急事態宣言が明けた現在でも平均動員数200~400人に減少していると聞いています(厳密な数字のファクトチェックはできていませんが)。

②文化的な場は、一度消えてしまえば永遠に失われてしまう

Culture Of Asiaグループの3店舗の閉店からはじまり、この2年間で数多くのクラブ・ホテル・アートギャラリーがその歴史に幕を降ろしました。それと同時に、その産業に関わっていた多くの方が文化産業とは違う職業を選択せざるを得なかったり、地元へ帰っていきました。残ったプレイヤーたちが力を合わせて文化の火を絶やさないようにしているとはいえ、多くの機会が摘まれてしまったことも事実だと感じます。

とはいえ重要なのは、誰かが悪いわけではないことです。この流れは誰にも止められなかっただろうし、別の災害やウィルスの発現によって同じようなことが起こる可能性は大いにあったでしょう。だからこそ、私たちは、文化を残していくためにビジネスモデルを大きくアップデートしていかなければなりません。一度焼け野原になりかけたナイトタイムは、いま新しいかたちに進化して今後10年の向かうべき旗をみんなで打ち立てていく時期にあります。2022年は、その第1章になるでしょう。

そんななかで、わたしたちは2022年に「ナイトタイムの価値を最小単位から最大単位までスケールさせる」に取り組んでいければと考えています。

人、コンテンツ、空間の最小単位から考える

​​アムステルダムの元ナイト・メイヤーであるミリク・ミラン氏は「夜」の価値を3つに定義しています。 “ナイトタイムエコノミー”と言われる夜間の経済活動。 “ナイトカルチャー”という新しい実験的な文化が生まれる機会。そして、 “ナイトソーシャライジング”と言われる、昼の肩書を忘れて交流を深める夜独特のコミュニティ。

この3つの価値をつくる最小単位を考えていくと、人、人と人をつなぐコンテンツ(バーテンダーとお酒など)、空間に分けられると考えています。これは宅飲みであってもスタンディングバーであっても、そして公園のナイトマーケットでも同じでしょう。

NEWSKOOLではナイトタイムの価値を実現する最小単位である人、コンテンツ、空間のそれぞれにアプローチし、それらをスケールさせるためのプロジェクトに取り組んでいきます。

都市におけるそうした価値をスケールごとに切り分けるとすれば、小さなスタンディングバー→ホテルや商業施設内のバー(多用途施設のなかのナイトタイム空間)→クラブやライブハウスなど100人以上の大人数が集まる場所→地域・エリアの順番で大きくなりますが、そうしたすべての空間にナイトタイムの体験価値をインストールしていきたいと考えています。

そうした人・コンテンツ・空間の視点から現在のナイトタイムに関するビジネスを見直していくと、そこにはアップデートの余地が残されていることに気付かされます。

体験価値向上のためのテクノロジー

まず、「人」に関して考えるとスタッフの仕事のハードさがあります。開店前には食材の仕込みをし、営業中には調理や接客、バッシング、席管理、会計、閉店後には清掃や翌日の準備と、数人のスタッフで大量の仕事をしているのが現状です。お客さんの立場から見てスタッフに求めるものは「サービス」や「コミュニケーション」だと考えると、コンテンツの質を落とさずにスタッフがコミュニケーションに注力できるオペレーション体制を構築することがお客さんとスタッフ双方のメリットとなります。

その一助となるのが、①セルフサービスを体験価値として提供すること(焼肉屋では自分で肉を焼きますよね)②テクノロジーの積極的な導入(現金会計をなくしたり、ロボティックスによる調理を導入したり)でしょう。

また、お客さんの体験価値を追求していくと、店舗に足を運ばなくとも料理が食べられたり、店舗の購買データとECでの購買データが紐づいたOMO店舗の開発によるパーソナライズレコメンドであったりを整備することも必要になってくるかもしれません。

店舗や地域の多様なニーズに応えるコンテンツを

「コンテンツ」に関して考えると、店舗や地域の中での体験の幅広さが鍵になると考えています。

例えば、お酒が飲めないZ世代やお酒を飲まないことをあえて選択する「ソバーキュリアス」と呼ばれる人々が増えてきています。彼/彼女らにヒアリングを重ねたところ、お酒を飲まないことによるコンプレックスは、アルコールにあるというよりもコミュニケーションにあるという結果が出てきました。

つまり、彼/彼女らに必要なコンテンツはノンアルコールバーだけではなくコミュニケーションを誘発する仕組みなのかもしれません。ただ、ナイトタイムに関する旧来のビジネスの多くはお酒をたくさん飲んでもらうことによって成立するビジネスモデルなので、基本的にはお酒を飲んでもらうことに焦点をあてた体験設計をしています。お酒を飲まなくても成立するビジネスモデルの再考も同時に必要になってくるでしょう。

また、地方ではナイトタイムにスナックかチェーンの居酒屋しか遊べる場所がなくつまらないという意見もよく耳にします。その地域の歴史や文化を紐解き、体験価値として提供していくことも急務だと考えています。

ナイトタイムにおける空間利用の多様化

「空間」に関して考えると、ナイトタイムの空間利用を多様にすることや、不動産ビジネスの再考が鍵になると考えています。

例えば、あまり利用されていない夜の公園において、ナイトマーケットを開催することで地域に賑わいが生まれ、新たな体験を提供できるかもしれません。

夜の公園に賑わいが生まれれば、それが新しい体験となるだけではなく暗い夜道を歩く女性の防犯につながるなどの別の価値が生まれることにもつながっていきます。

不動産という側面では、ジェントリフィケーションで家賃が高騰したり保証金額がコロナ中に増加したことで新しく店舗ビジネスをはじめることが難しくなっていたりする現状があります。

また、入退去時の機材費用や原状復帰義務の金額も決して安くはありません。その理由は、内装の二次流通がしずらい状態になっていることや、サービスオペレーションや内装、仕入れ網などのソフト価値が属人化されていることです。入居者が変わってもソフト価値が引き継がれるモデルをつくることで不動産流通のハードルが下がり、高い家賃や保証金額をつけなくても継続できる可能性が上がると考えています。

NEWSKOOLが取り組む「5つの機会領域」

そのような考え方を踏まえて、NEWSKOOLが注力していく機会領域を次の5つにアップデートしました。

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1.都市空間の「ナイトタイム」活用の提案
都市には遊休資産が多く残されており、その活用法が模索されていないケースがあります。公園や路上といったパブリックスペースから商業空間に至るまで、その空間活用の方法を提案していきます。上記に伴った不動産企画・実証実験を実行することで、24時間都市の構築を目指しています。

2.「夜の楽しみ方」の選択肢を増やす
ナイトタイムのアクティビティの選択肢はまだ少なく、人々の多様なニーズに応えていく必要があります。たとえば、あえてお酒を飲まない「ソバーキュリアス」に向けたノンアルコールバーや、チルな時間を支える体験の提供です。NEWSKOOLでは、そうしたアクティビティを好む先進的な消費者がもつインサイトの発見や行動調査も得意としています。

3.インディペンデントな店舗の「持続可能性」を高める
チェーン店ばかりが都市に増えていくと、都市の文化はモノカルチャー化していきます。「都市の多様性」を実現するためには、人々の細かなニーズや需要に対応するようなインディペンデントな店舗が重要だと考えています。しかし、そうした店舗を持続可能なかたちで経営するには、OMOなどのDXを通じたオペレーションコストの削減が求められていくでしょう。そうしたコスト削減に伴って、店舗を訪れる生活者の体験をよりよいものにすることで、インディペンデントな店舗の「持続可能性」を高めていきたいと考えています。

4.地域の固有性や土着性を軸とした「ローカル再興」
日本国内における観光需要が戻りつつあるなかで、マス向けの観光コンテンツではなく、地域の固有性や土着性を軸としたローカル再興をサポートしていきたいと考えています。地域の固有性やアイデンティティを大切にしつつも、「夜の時間」ならではの新しいユースカルチャーの視点やアクティビティの提供を強みにします。

5.アフターコロナにおける「夜の時間」の価値を探索する
度重なる緊急事態宣言を経て、都市の「夜の時間」に人々が徐々に戻りつつあります。その一方で、今回のコロナ禍を経て、人々が「夜の時間」に求めるものも変わっていくはず。NEWSKOOLが運営する『Night Design Lab』などを通じて、アフターコロナの「夜の時間」の価値や、そこで求められるアクティビティを探索していきます。

こうした機会領域に沿って、いまNEWSKOOLではナイトデザインに関するさまざまなプロジェクトを仕込んでいます。そうした動きは今後『Night Design Lab』やNEWSKOOLのコーポレートサイトで発信していくので、ぜひチェックしてみてください。

Photo by Kimson Doan on Unsplash 


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