2024年問題とは?物流への影響は?分かりやすく解説
いきなりですが、「2024年問題」と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?
2023年の間にもニュースなどで多く取り上げられており、一度は聞いたことがあると思います。しかし、その問題の内容まで詳しくは知らないという人もいるかもしれません。また、「物流関連ってことはなんとなく知っているけど…」という人もいることでしょう。
そこで、今回はそんな2024年問題について詳しくみていきたいと思います。
2024年問題とは?
2024年問題とは、端的にいうと「トラック運転手などの残業時間に上限が設定されることで生じる問題」のことです。
近年、トラックドライバーの働き方をめぐっては、労働時間が全職業の平均労働時間よりおよそ2割、時間にして300〜400時間ほど長いという実態があります。その背景には、荷物の配送センターなどにおいて長時間、荷物が詰め込まれるのを待っていなければならなかったり、お届け先が不在だったために再配達しなければならなかったりと必要以上にトラックドライバーを拘束しているという状況が挙げられます。
この現状を受けて、政府は働き方改革に伴う法律に基づいて、2024年4月から、トラックドライバーの残業時間の上限を年間あたり960時間以内に定めることになりました。この規制によって、トラック運送業の健全な発達を図って、ドライバーの労働環境を改善するねらいです。
残業規制は悪くないのでは…?
「2024年“問題”と言われてはいるけど、トラックドライバーの残業時間に上限が設けられて、労働環境がよくなるならいいことなのでは…?」と思った方もいるかもしれません。しかし、この残業時間の規制が導入されることで問題が生じる恐れがあると言われています。
もし、2024年4月からドライバーの残業時間が規制されるだけで、それ以外何も変わらなかったらどういったことが起きるでしょうか。
まず、これまでドライバーが残業してくれていたおかげでうまく回っていた配送システムが崩れてしまいます。残業規制がかかることで、ドライバーが配送できる荷物量が減少してしまい、結果として配送が遅れる・配送できなくなるという事態が考えられます。通販などで「お急ぎ便」の利用もできなくなるかもしれません。
また、残業規制によって、ドライバーがもらえる給料にも上限が設定されてしまい、ドライバーによっては収入が減少してしまうという状況に陥るかもしれません。
さらに、運送会社にとっては、規制によって会社全体での配送量が減ってしまい、その分のお金をまかなうために運賃を値上げする会社も出てくるでしょう。
そして、その運賃の値上げのツケは、普段、我々消費者が利用しているスーパーやコンビニ、あるいは通販などにおける物価の上昇という形で回ってくると考えられます。
以上のように、ドライバーの労働時間が制限されることで、社会全体で回っていた物流が停滞し、さまざまな問題が生じてしまうことを2024年問題として挙げられているというわけです。
どれくらい配送量が減る?
それでは、トラックドライバーの労働時間が制限されることで、どれくらい配送量が減ってしまう見込みがあるのでしょうか?
政府の2024年問題の資料に記載されている試算によると、もしこのまま規制が導入されるにもかかわらず、具体的な対応が何もとられなかった場合、2019年度と比較して2024年度には14.2%、2030年度には34.1%の輸送能力が不足するとみられています。これは、労働時間の制限規制の他に、トラックドライバー不足の予測も加味された推定結果となっています。
業界別でみてみると、農産・水産品が最も高い割合の32.5%、特積み(不特定多数の荷主の商品をまとめて1台に積載する)が23.6%不足するとあります。これらの業界は、ドライバーの労働時間が比較的長い業界でもあります。つまり、ドライバーの労働時間が長いぶん、労働時間が制限されることで輸送能力も大きく減少してしまうと考えられます。
高いシェア率のトラック
また、そもそも物流における輸送手段としてトラックが大半を占めていることも影響の大きい一因として挙げられるでしょう。
2021年度調査時点で、荷物の重量に基づいた輸送手段の内訳として、トラックが85.5%、ついで海運(とフェリー)が13.1%、鉄道が1.4%と割合の違いは明らかだと思います。ちなみに、荷物の件数ベースだと、トラックがより大きな割合を占めています。
ここまでみてきた具体的な数値が、そのまま私たちのくらしに直結するとまでは言えないかもしれません。しかし、インターネットにおける商取引、すなわち通販の市場が拡大している中で、運送業界が縮小してしまう状況になってしまっては、多かれ少なかれ消費者のくらしにも悪影響が出ると思われます。
2024年問題の対策
それでは、そんな2024年問題に対して、どのような対策をとれば良いのでしょうか?
輸送業界全体として
業界としてまず挙げられる課題が荷待ち・荷役時間の削減でしょう。荷物をトラックに積み込むのに必要以上に時間をかけないためにも、物流事業者のみならず、発荷主企業や着荷主企業などそれぞれの事業者が連携して改善を図るための取り組みを実施することが求められています。
また、輸送手段の見直しとしてモーダルシフトも挙げられています。モーダルシフトとは、トラックなどの自動車で行われている貨物輸送を鉄道や船舶の利用へと転換することをいいます。これによって、より少ない人員で多くの荷物をまとめて輸送できるようになります。これまでは、長距離の場合しか鉄道や船舶での輸送が難しいとされてきましたが、最近では輸送効率化の整備も進められ、比較的短い距離でもモーダルシフトが行われるようになっているようです。
さらに、共同輸配送の検討もされています。これは、複数の荷主の商品をまとめて輸送することで、各荷主が個別に輸送車両を手配した場合に比べて、より少ない車両で効率的に輸送することができるようになります。これを実現するために、デジタル技術を活用した受発注情報の事業者間の共有やマッチングのシステムの導入が推進されています。
消費者にできること
輸送業界のみならず、消費者にも課題に対して取り組めることがあります。
それは、再配達を減らす配慮をすることです。国土交通省によるサンプル調査によると、ここ数年の宅配便の再配達率がおよそ11% というデータがあります。部分的なデータにすぎないので、宅配便の総数にこの割合を直に適用することはできませんが、1つの指標として見てみましょう。
2022年度における宅配便の総数が約50億個なので、単純計算すると約5億個が再配達されていることになります。この件数を労働力に換算すると、約6万人分のドライバーの労働力に相当するとも言われています。数値データに多少の差はあるかもしれませんが、いずれにしろ、再配達に必要以上のリソースがかけられているのが現状だと言えるでしょう。
同時に、まとめ買いをすることも対策の1つになりえます。通販市場が発達した現在、こまめな注文にも柔軟に対応し配送されるシステムが整っているかもしれません。しかし、このシステムによってより多くの輸送人員が必要になっているとも言えます。消費者がなるべくまとめて注文するようにし、配送頻度を減らせれば、その分輸送コストを下げることにもつながります。