何のためのデモか、何のための鎮圧か
昨日18日の反政府デモ。1日当たりの新型コロナウイルスの感染確認者数が1万人を超え、ロックダウンで外出禁止令を含む厳しい行動制限が発令されているタイの首都バンコクで若者1,000人ほどが起こしたのだが、どうも不思議だった。警官隊は放水、ゴム弾、催涙弾で鎮圧を図り、特にデモ終盤は催涙弾が多く撃たれた。デモ隊は催涙弾の最初の一波でこそ不意打ちを食らい、涙、鼻水、よだれを垂らしながら散り散りに。しかし二波目以降は要領を得て、催涙ガスが拡散されないよう濡れた布を被せるなど、迅速に処置を施すようになってきた。
すなわち、警官隊が催涙弾を撃つ、デモ隊が催涙弾を消す、というサイクルが出来上がり、それが延々と繰り返されるだけ。警官隊はデモ隊が一線を超えて迫ってこなければ、鎮圧するための催涙弾を撃つ必要がない。それでも飽きずに何十発も撃ち続ける。デモ隊も同様、撃ち込まれる催涙弾をせっせと消すのが任務と化し、デモの本来の目的であるはずの何かを訴えるわけでもなく、一カ所に留まったまま。
外出禁止令が始まる夜9時までの帰宅に間に合うよう、デモ参加者は夜7時ぐらいから徐々に、徒歩で現場を後にしはじめた。自分も一緒に歩いて帰ったのだが、だいぶ歩いたところにも催涙弾が発射される音が現場から伝わってきた。隣を歩いていた若者が、「警察がまだ撃ってる」とつぶやく。催涙弾を撃って悪さを続ける警官隊をデモ隊が鎮めているという、本末転倒な構図も見えてくる。とかく大げさに報道されるニュースも、蓋を開けてみればこの程度、というパターンが少なくない。
警官隊とデモ隊の距離は100~200メートルほど。有刺鉄線、柵、警官の整列、放水車、コンテナの積み立てと警備は厳重。その向こうには首相府がある。
デモ隊がすでに後退しているのに、警官隊からは何十発もの催涙弾が飛んでくる。若者たちはもはや逃げることなく、催涙弾を消すという任務に徹している。
飛んでくる催涙弾に交通整理の三角帽子(コーン)を被せ、上からペットボトルの水を注ぐデモ隊の若者。常に手際が良い。
飛んでくる催涙弾をすかさず拾って投げ返す若者もいるが、弾自体は相当熱いので手袋が必要。
写真を撮っていた歩道橋に転がり込んできた催涙弾。敵意を感じるほどに催涙ガスを吹き出している。
催涙ガスを吸い込むとかなり苦しい。目と鼻にしみ、露出している肌もひりひりする。気管支だが肺だか分からないが、のども胸の内部もしびれ、呼吸困難に陥る。鼻水ダラダラ、よだれダラダラ。自分も気を失うかと思うほど苦しかった。年寄りが吸うと相当危ないと思うが、元気良く吸ってしまう若者も相当くたばっていた。