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レンズの写りは撮り手のスキルではない

2022年6月2日

 旧東ドイツ製のレンズ「Pentacon 29mm F2.8」。オールドレンズファンの間では柔らかい描写や(ボケの縁に線が発生してシャボン玉のように見える)バブルボケが人気で、大量に製造されたせいか日本でも数千円で売られている。

 すでに持っているのに今年に入ってもう1本、1970年製をEBayで購入。近所のショッピングセンターで試し撮りをしてみた。屋外のエスカレーターに乗ったら屋根下にスズメらしき小鳥がいて、カメラを向けてシャッターを押したそのタイミングで陽の光が隙間から差し込んできた。

 マニュアルレンズとはいえ、ピントはスナップ撮影用に1.5~3メートルに置きっぱなしなので、絞り値をF5.6~8に絞り込めばまず外さない。教科書どおりの撮り方でスキルではない。

 絞り込むと絞り羽の形が反映されて六角形のフレアになる。六角形どころか星型になっている。これはこれで良いのだが、仕事では使えない。フレアを写し込むような撮影の仕事自体ないといえばないのだが。柔らかい描写ではあるが、いってしまえば解像度が低いということで、これもまた仕事で使うには難がある。

 オールドレンズでも現代の高性能のレンズでも、写りに関する評価はレンズ自体に与えられるもので、撮り手のスキルとはみなされない。「こんなに低性能なレンズでこんなに良い写真を撮った」という評価もあり得るが、仕事で受ける撮影でそんな挑戦は無用であり、クライアントのことを考えれば選択肢は最高値でなくともそこそこの性能と価格のレンズとなる。

 新たに買ったPentaconもすでに、もう1本と一緒に防湿庫で眠ってしまっている。 


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