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【2分間小説】アウフヘーベンでも気づけない

「少子化をどうやったら解決できるだろうか?」
まーーーた始まった。幼馴染のキラキラした目を私はジト目でねめつけた。
今は塾で学んだ論理関係なるモノに、彼はどっぷりハマっているらしい。
「サキ、お前ならどうよ?」

「お前と子作りして解決する」

なんて、幼馴染から脱却できない身分で言えるわけなかった。

「難しくて分からんわ。いいから帰ろ。今日塾ないんだろ?」
「帰りながら話すか」
もっと話すことあんだろ。そう思いながらいつもの道をゆっくり歩いた。

「問題を解決するときに、アウフヘーベンってやり方があるらしい」
「ヒツヨウアリャセン」
「アウフヘーベンのイントネーションで言うな」
週末どっか出かけるか?って言え。

「サキの目つきは怖い、ってあったとして」
「ぶっ飛ばすぞ」
「でもそれは物事に真剣に取り組んでるってことで」
「急にそういうこと言うとキモいです」
「つまり『目つきは鋭いが、真剣な証』となる」
となる、じゃねえよ。急に、真顔で、こっち見て言うな。

「分かった?最初のテーマがあって、次にそれをひっくり返して、最後にその2つを通してより良く再設定するって感じだ」
「ほーーー。じゃあこんなんは?
『AはBが好き』『AはBがウザい』
はい、これを、えーっとアウ、えーっと、アウアウして」
「アウフヘーベンな。それだとどうなるか……」
マジで考えてる。論理なんかいいからさ、言葉のウラだったり雰囲気読んでくんねーかな。

「これは?Bのウザいところを直して、Aの評価を高めよう」
「よし!じゃあアウフはこれでおしまい!テスト終わったし、週末遊びに行こうぜ」
「お、いいな!サキの誕生日近いからプレゼント買いたかったんだよ」
はーーーあ、眩しい笑顔しちゃって。
「去年よりもサイコーなプレゼントを用意するからな!」

「なら、ハグして」

なんて、いつか言えんのかねえ。
「へいへい、ありがとさん」
下を見つめ、棒読みを意識してそう伝えた。

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