炎の男
私が派遣会社の営業をしていた時の事、とある企業に派遣していた会社のスタッフが急遽働けなくなり、後任を探す事になりました。
前任のスタッフのポジションは、事務経験だけでなく、英語力も必要で、駅から遠い会社だったため、マッチングが上手くいかず、暫く後任が紹介できないでいました。
その派遣先の担当者Kさんは非常に熱血な方で、私がなかなか後任を紹介できない旨をメールでお詫びすると、
「信頼するニューノマンさんなら必ず良い方をご紹介して下さると信じています!私はそれまで待っていますよ!」との回答でした。
この熱意に応えねばと、事務経験はないけど、子供向けの英会話スクールで働いていた英語スキルがある方を、人柄推しで紹介する事になりました。
候補スタッフさん顔合わせの場で、これまでの職務経歴を説明します。
一通りの説明が終わるとKさんが、
「今回、この場に来て下さってありがとうございます。私は力になって頂けるのならありがたいですが、この仕事はあなたが本当にやりたい仕事ですか?」
「うっ、、」
突拍子もない質問に、候補スタッフさんが言葉に詰まります。
(いやいや、この場に来たなら嘘でもそうだと答えてくれよ!なかなか紹介できる人いないんだよ!)
と、私は内心ヒヤヒヤします。
「あなたの直近の職歴は子供に英会話を教える仕事だ。あなたが本当にやりたい仕事はそっちなんじゃないですか?」
「えっ、、はいそうです。」
(いや、はいそうですって!)
「ですよね?なのであれば、私はあなたの夢を諦めないで、是非ご自身のお望みを叶えてほしい!それがあなたにとって幸せな事だと思う!」
(あんたも煽るなよ!)
「ううっ、、へぐっへぐ。はい。。。その通りです。。。」涙ぐむ候補スタッフ。
(えっ、泣くの??)
「やはりそうでしたか。今日ここであなたに会えたのも何かのご縁です。私はあなたが夢を実現する事を応援したい!だから頑張って!」
(えっ、Kさんもちょっと涙ぐんでる?!)
「はい、ありがとうございます!」
(ええーーー!!!)
候補スタッフは号泣しながら笑顔を浮かべていました。
さすがにこの状況を覆す事はできないため、
「Kさん、今日はせっかくお時間を頂いた中で恐縮ですが、夢の後押しをして頂いて本当にありがとうございました。またご連絡させて頂きます。」
そう言うしかないので、そう言って職場を後にしました。
雨がザーザーと降りしきる中、2人で駅へと向かいます。
「Kさん、本当に素敵な方ですね!私感動で泣いちゃいました!」
「ははは。そうですよね。本当に素敵な方なんですよ。。。」
内心は、「チクショー!また別の候補を探さないといけないじゃないか!」と思いながら、私の気持ちとシンクロした天気の中、トボトボ歩いていくのでした。