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アニメ『異種族レビュアーズ』

毎月更新/BLACK HOLE:新作映像作品レビュー 2020年4月

 今日のオタク文化において、ドラクエ的ハイファンタジー世界は一種のフリー素材と化している。受け手側に共通の世界認識が有るため、ギルドだの冒険者だの魔族だのを改めて説明するまでもなく、それを前提として大喜利的作品を作ることができる。ならば当然、人間の三大欲求を主題とした作品を作ることも可能なわけで、睡眠欲には『魔王城でおやすみ』、食欲には『ダンジョン飯』を挙げることが出来る。そして性欲を扱ったのが本作ということになる。

 話の大筋は至ってシンプル。人間のスタンク、エルフのゼル、天使のクリムらが、サキュバス店(異世界の風俗店)のレビューを書くというもの。毎回異なる種族やコンセプトのサキュバス店を彼らが探訪し、お下劣なギャグを交えつつお色気シーンやレビューが描かれる。現代社会の倫理規範的に隠すべきものとされている性欲を主題に据えている以上、放送にあたっては相当な困難があったようだが、本作の最大の魅力、特徴はそういう全開で身も蓋も無い下品さではない。

 本作は異世界というフォーマットをフル活用しつつ、性欲という主題と真摯に向き合って新たなビジョンを次々に提示するアニメなのだ。

 一例を挙げよう。剣と魔法のファンタジーというだけあってこの世界にはマナの概念が存在する。エルフを含む大抵の種族はこのマナを知覚出来るのだが、人間にはそれが出来ない。するとこのような展開が可能となる。エルフは高齢でも外見は若いままだがマナの質が劣化する。故にマナを知覚出来る種族には厳しいものがあるが、人間にとっては何の問題もない。これだけでも面白いが、更にこのとき多くの種族から好奇の視線を向けられるのは人間だ。そして肝心なのは我々視聴者もまたマナなど知覚出来ない人間だということなのだ。

スタ「エルフは何歳だろうと可愛いだろ。何が不満だ」
ゼル「マナが腐ってんだろ、分かんないのか!」
スタ「マナなんて分からねえよ!」

 ここで我々の思考や感情は人間レビュアー・スタンクとシンクロする。彼の台詞は視聴者の率直な意見だ。ロリババアなる属性が一定の支持を得ているのがその証左と言えよう。反対にエルフのゼルにとっては、内在する生命力が豊潤な五十歳の人間女性は魅力的らしい。五十歳人間と五百歳エルフのどちらが良いか。第一話前半のテーマがこれで、友人達の中で前者を支持したのが人間である自分だけという事実にスタンクは愕然とする。そして画面のこちら側で私達は理解するのだ。アブノーマルな趣味の持ち主は日々こういう感情を味わっているのかもしれない、と。
一体どのような作品が、そんな感情の理解を可能としてくれるだろうか。無論、ハイファンタジー世界を舞台としたエロ主題の作品自体が少ないとは言えない。だが、これほど真摯に世界を構築し、その中で性がどのような形態を取るか思考し試行した作品は他に例が無いのではなかろうか。マーマンやラミアは悉く産卵フェチだと断言し、リザードマンの産卵ショーを放送した作品は無いのではなかろうか。あってたまるか。

 イロモノ作品ではあるし、何より他人に勧めにくいと言ったらありはしない。だが、これは間違いなく真摯なハイファンタジー作品であり、唯一無二の異様なエウレカを体験出来る作品なのだ。10点!!

文責:グーテン=モルガン


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