新入生レビュー企画⑦真下みこと『#柚莉愛とかくれんぼ』

日々月猫通りやnoteの連載で様々な企画を発信し、多数のレビューを執筆している新月お茶の会。この企画は、新入生の活動への参加ハードルを下げるため、まずは自分の好きな・書きやすい作品でレビューを一本書いてみようという企画である。最終回となる今回は、真下みことによる『#柚莉愛とかくれんぼ』のレビューとなっている。

あらすじ
 3人組アイドルグループ、『となりのSiSTERs』のメンバーでセンターの青山柚莉愛。結成から2年経つが、なかなか知名度は増えずCDを出しても売れて1万枚。彼女らの普段の活動内容は小さい会場でのライブ、毎回同じような人しか来ない握手会と、各メンバー週一回のライブ配信。ある日、マネージャーからの台本通りに柚莉愛はライブ配信で死亡ドッキリ配信をする。しかしこのドッキリによりファン達は混乱し、炎上騒ぎになり、柚莉愛に全ての矛先が向いてしまう。柚莉愛への攻撃はますます強まっていき……。

レビュー
 第61回メフィスト賞の受賞作の今作品。物語は二人の視点が交互に繰り返され進んでいく。アイドルパートの視点人物は青山柚莉愛。久美と萌と売れない3人グループ。Twitter(X)では広報用の表のアカウントに加えてエゴサするための裏のアカウントを持っていて、アンチのツイートを閲覧し一人傷つく。ライブ配信をきっかけとした炎上により彼女の精神はどんどん疲弊し、人間関係も徐々に捻れていく。そして何かが彼女を襲う。 もう一つはTOKUMEIによるファンパート。家族とは終始険、悪な雰囲気で自室に籠り握手会やライブなどの用事でしか外出しない。自室ではいつも「TOKUMEI」というアカウントで柚莉愛にアドバイス的なツイートをしている。配信での死亡(ドッキリ)が起こると、その謎を解決するべく様々な手を使うが、結局何の意味も無くドッキリだと配信で明かされる。ネット上に上がってた批判の意見を見つけ、それらを扇動し炎上を作り出す。炎上を大きくするためセンセーショナルな嘘のツイートをするなどエスカレートしていく。
 昔のアイドルといえば遠い、画面の向こうの人達だったらしい。しかし今ではアイドルの人口が増え多様化し、地下アイドルなどの楽に会えるアイドルが増えた。アイドルの偶像性が薄れてき、一般人と化している。最近のアイドルが関係している小説だと『N/A』や『推しの殺人』などがある。今作、『#️⃣柚莉愛とかくれんぼ』ではアイドルとそのファンの両極から語られる。アイドルからコンテンツを受け取り、貪るだけのファンが、ネット上で逆にアイドルに向かって評価したり攻撃したりする。更に炎上によりファン達は凶暴化し、アイドル柚莉愛を一方的に、裏切られたと感じて幻滅して攻撃する。度々作中で描かれている柚莉愛とその周りの環境の不安定さが、自らが孕むものによって崩れてしまう。また真下みことさんは令和のイヤミス女王と一部から言われるように、物語が進むにつれ容赦なく柚莉愛と読者の心を苦しませる。そして最後になるにつれ明かされていくとある事実とエピローグが全てをぶっ壊す。


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