マクロ(巨視的)宇宙はどんな模様?
今回は思考を大きく大きく拡大していく内容になります。我々は宇宙を局所的に見ていますが、もし視野をどんどん拡大していって宇宙全体を見渡せるほどに拡大した場合、宇宙はどのようなパターンになるでしょうか。極限まで大きなマクロ視点で宇宙を見たら、放射状か、らせん状か、同心円か、ハニカムか、網目状か、泡状か、あるいは別のパターンか、どんな模様が現れるでしょうか?今回も太陽系を超えて、銀河を超えて全宇宙レベルにまで思考を拡大していく宇宙瞑想を行っていきましょう。
まずは我々のいる地球をイメージしましょう。下に挙げた画像は誰もが見たことがある地球の画像です(画像引用*a)。
次にかなり範囲が大きくなりますが、太陽系全体をイメージしてみましょう。下に太陽系のイメージを挙げます。中心に点のように見える恒星が太陽です。その周りには水星、金星、地球、火星、木星、土星の軌道が描かれています。天王星、海王星、冥王星は軌道が画面の外にはみ出ています。
さらに太陽系を超えて思考を拡大していきます。
太陽系外の星々、銀河の中では比較的近所の星々が見えてきます。画像では太陽の左下に8.6光年離れたシリウス(Sirius, *1)、左上には36.8光年離れたアークトゥルス(Arcturus, *2)、右の方向には25光年離れたところに夏の大三角形を形成するヴェガ(Vega, *3)が見えてきます。そのほかにも夜空に見える星々が含まれる範囲まで思考が広がってきました。
さらに一気に思考を広げて我々のいる天の川銀河(Milkyway Galaxy)まで思考を広げていきます。天の川銀河の直径は約10万光年、先ほどのご近所の星々が数十光年の範囲だったので、数千倍〜1万倍の範囲まで意識の範囲が拡大しました。この銀河の渦の腕の一部に我々の太陽系が見えないくらい小さく存在しています。
この天の川銀河周辺をもう少し拡大すると下の画像のようになります。左側に天の川銀河があり、その周囲には小規模の銀河や恒星団や星雲が見られます。右側には我々の銀河の倍くらいの大きさのアンドロメダ銀河(*4)が存在しています。アンドロメダ銀河は直径が約22万光年の巨大銀河で、その距離は地球から250万光年と推定されています。
さらに意識を拡大していきましょう。
我々の天の川銀河やアンドロメダ銀河のある局所銀河団は“おとめ座超銀河団(Virgo Supercluster, *6)”という超銀河団に属しています。下の画像のように天の川銀河もアンドロメダ銀河も識別できないほど小さく左側に存在しています。
右側には銀河が数多く集まっている中心部の“おとめ座銀河団(Virgo Cluster, *7)”が見えます。おとめ座銀河団は1300〜2000個の銀河から成っていて、地球からの距離は約15〜20Mpc(メガパーセク)、約4600万〜6500万光年とされています。
またこのおとめ座超銀河団からズームアウトしていきます。
するとさらにその外側には別の超銀河団が現れてきました(下図)。数千個の銀河を含むおとめ座超銀河団(Virgo Supercluster)も小さく見え、周りにはペルセウス座・うお座超銀河団(Perseus-Pisces Supercluster, *7)やうみへび座・ケンタウルス座超銀河団(Hydra-Centaurus Supercluster, *8)が存在しています。もちろんこのほかにも数多くの超銀河団が存在しています。比較的近くにあるように見えるペルセウス座・うお座超銀河団(Perseus-Pisces Supercluster, *7)もその距離は2.5億光年離れたところにあります。
視界はおとめ座超銀河団を超えて数億光年という規模まで拡大してきました。この外側はどうなっているでしょうか?
この範囲を超えて宇宙の彼方まで観測しようというプロジェクトがあります。それは2dF Galaxy Redshift Survey (2dF銀河赤方偏移サーベイ, *9, *10)と称されるオーストラリアのアングロ・オーストラリアン天文台で行われた宇宙のマッピングプロジェクトです。最初の2dFというのは望遠鏡の観測範囲が2平方度(2 degree Field)であることに由来しています。
銀河赤方偏移というのは、以前の記事でも触れましたが(*11)、宇宙というのは現在も膨張し続けています。しかも遠くにある天体ほど高速で地球から遠ざかっています。そのために観測される光の波長が長く赤い方へ偏移(赤方偏移)します。この遠方銀河の赤方偏移を測定することによって宇宙地図を作成しようというものです。
上の図がその観測結果を統合した宇宙地図の一部です(画像引用*b)。扇状になっているのは、地球が天の川銀河の中に存在するため、銀河円盤方向は内部の星々の信号によって遠方の情報が得られないためです。
この中の青い点が銀河等が高密度に存在している部分で、白地の部分が天体の少ない低密度の領域です。表示されている領域は赤方偏移(z)=0.2くらい、距離で言うと約15〜20億光年までの範囲が描画されています。
こうして見ると数億光年の範囲では宇宙は均一に銀河が散らばっているわけではなく、集中した密な領域と空白の領域が不均一に入り混じっていることが分かってきました。辺縁の方も密度が薄くなっていますが、これは10億光年以上先からの信号の減衰によるものと考えられます。
この先はどうなっているでしょうか。残念ながら地球から観測できる宇宙は天の川銀河の星々に遮られるため銀河赤道方向は正確なデータ収集が非常に困難です。
しかしコンピュータの計算速度の躍進と精度の向上によって宇宙をシミュレーションすることが可能となりました。そのプロジェクトは“ミレニアムラン(Millennium Run, *12)またはミレニアムシミュレーション(Millennium Simulation)”と呼ばれています。その結果が2005年Springel氏らによって公開されました(*13)。
この研究はイギリス、ドイツ、カナダ、アメリカ等の天体物理学者の共同研究である“ヴァーゴ・コンソーシアム(Virgo Consortium, *14)”で行われたシミュレーションです。この研究では下図左側のように銀河や天体をシミュレーションし、右側のジェームスウェッブ望遠鏡からの写真(NASA, *e)と比較するとこのようになります。
このシミュレーションアルゴリズムは“N体シミュレーション(*15)”に基づいて行われており、天体物理学においては重力相互作用を有するN個の粒子の運動や変化を経時的にシミュレーションする方法です。比較画像のように銀河など一定の質量を持つ天体を粒子の集合体として計算します。
この研究では230〜460万光年立方当たり100億個(0.5〜1Mpc/h当たり2160の3乗個)の粒子をシミュレーションし、これまで観測された宇宙背景放射(CMB, Cosmic Microwave Background, *16, *f)や、銀河間に存在すると言われているコールド・ダークマター(CDM, *17)も重力の大部分を占める要素として含まれています。コールド・ダークマターについては過去の記事でも説明しているので見てない方や忘れた方はそちらを読んでみてください(*18)。
このミレニアム・シミュレーションの結果と先ほどの2dF Galaxy Redshift Survey(上の扇型の宇宙マッピング画像)を2点相関関数で比較したところ、上のグラフのように高い一致率を示し、シミュレーションは非常に高い精度で現在の宇宙を再現していることが分かります。
それではシミュレーションされた宇宙を見ていきます。
上の画像の視野のサイズが約1800万光年で銀河が散在しています。
視野を広げて、視野のサイズが約1億3000万光年ほどに広がりました。
先ほど銀河が散在して見えていましたが、何か筋のような構造が見え始めました。
さらに視野を広げていきます。
さらに広がり、視野のサイズが約12億光年ほどになりました。
先の2dFGRS(扇型の宇宙マッピング画像)のように天体が高密度な領域と、疎な空白部分が混在しているのがこちらでも見えてきました。
さらに視野を広げていきます。
この視野は約100億光年ほどのサイズになります。
現状では宇宙年齢が約138億年、観測可能な宇宙の大きさは400億〜500億光年(*19)、あるいはそれよりも広いとも考えられていますが、宇宙のかなり広い部分を含んだ視野と言えます。
この構造は泡のようにも見えますし、細かい網の目が張りめぐされているようにも見えます。この構造から巨大視野(マクロ)における宇宙の構造はコズミック・ウェブ(Cosmic Web)と呼ばれています。
銀河はただ宇宙空間を漂っているわけではなく、コールド・ダークマターのような何かのネットワークでつながっているようです。そしてそれは我々の知覚できないレベルでそれは宇宙全体に広がっているようです。宇宙のイメージは最初の予想と合っていたでしょうか、それとも意外な結果だったでしょうか?様々な瞑想法で宇宙と自己の意識を融合させることが取り入れられています。それは波動を上昇させる手段であったり、最終到達段階であったりします。いずれにおいても実際の宇宙の状態を知ることは宇宙全体像の可視化、自己のイメージの具現化に役立つでしょう。意識を宇宙レベルに拡大するトレーニングに使ってみると良いと思います。
(著者:野宮琢磨)
野宮琢磨 医学博士, 瞑想・形而上学ガイド
Takuma Nomiya, MD, PhD, Meditation/Metaphysics Guide
臨床医として20年以上様々な疾患と患者に接し、身体的問題と同時に精神的問題にも取り組む。基礎研究と臨床研究で数々の英文研究論文を執筆。業績は海外でも評価され、自身が学術論文を執筆するだけではなく、海外の医学学術雑誌から研究論文の査読の依頼も引き受けている。エビデンス偏重主義にならないよう、未開拓の研究分野にも注目。医療の未来を探り続けている。
*1. シリウス−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/シリウス
*2. アークトゥルス−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/アークトゥルス
*3. ベガ−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ベガ
*4. アンドロメダ銀河−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/アンドロメダ銀河
*5. おとめ座超銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/おとめ座超銀河団
*6. おとめ座銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/おとめ座銀河団
*7. ペルセウス座・うお座超銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/ペルセウス座・うお座超銀河団
*8. うみへび座・ケンタウルス座超銀河団−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/うみへび座・ケンタウルス座超銀河団
*9. The 2dF Galaxy Redshift Survey. http://www.2dfgrs.net
*10. 2dF銀河赤方偏移サーベイ−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/2dF銀河赤方偏移サーベイ
*11. 宇宙瞑想:“宇宙は永遠か?”について考える. https://note.com/newlifemagazine/n/n4985749ff8b6?
*12. Millennium_Run−Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Millennium_Run
*13. Volker Springel et al. Simulating the joint evolution of quasars, galaxies and their large-scale distribution. Nature June 2005. DOI: 10.1038/nature03597
*14. The Virgo Consortium. https://www.virgo.dur.ac.uk/index.html
*15. N体シミュレーション−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/N体シミュレーション
*16. Cosmic microwave background−Wikipedia.
https://en.wikipedia.org/wiki/Cosmic_microwave_background
*17. コールドダークマター−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/コールドダークマター
*18. 私達の周りにもあった、未知の物質:ダークマター(2)
https://note.com/newlifemagazine/n/ned28052f0b6b
*19. 観測可能な宇宙−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/観測可能な宇宙
画像引用
*a. https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f4/Earth%27s_Location_in_the_Universe.jpg
*b. http://www.2dfgrs.net/Public/Pics/2dFzcone_big.jpg
*c. https://jp.freepik.com/free-vector
*d. https://wwwmpa.mpa-garching.mpg.de/galform/virgo/millennium/
*e. https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2022/nasa-s-webb-delivers-deepest-infrared-image-of-universe-yet
*f. https://www.nasa.gov/sites/default/files/thumbnails/image/wmap.png
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