ディープ・ステイトも息絶え絶え もう一度、夢を見てみないか
民主主義の劣化
ここ40年間、「国民国家」、「民主主義」、「人権」、「共同体」といった概念が世界で劣化している。特に「民主主義」の劣化が、あらゆる局面で進んでいる。「社会の分断」、「言論の自由の後退・情報操作」、「格差拡大」等、その背景には過度の「グローバル化」がある。
アメリカのトランプ前大統領の選挙参謀のスティーブン・バノンは「グローバリストたちは、アメリカの勤労者たちに大打撃を与え、アジアに中間層を生んだ。今後は、アメリカ国民が搾取されないようにすることが課題だ」と語った。ヨーロッパでもグローバル化に対して「欧州委員会とその規則の執行に当たる選挙で選ばれていない官僚たちが、多様なニーズを理解しないまま28加盟国に対して法を制定してきた」といった批判が強まり、抵抗運動が起こりつつある。
こうした「グローバル化」や、それによって派生した「格差拡大」や「社会の分断」は、人間グループの抗争の結果である。これまでの多くの「経済学」はこうした人間グループの闘争には焦点を当てなかった。
アダム・スミスは、それぞれの国民が、分業により利己的に利益を求めて活動すれば調和した経済社会が生まれると考えた。しかし、政府や人間グループが介入せずに、調和がとれた民主的な国民経済社会になったことは無い。デヴィッド・リカードは、国民国家を単位として比較優位で産業が国際分業をすることによって資本主義経済社会が成り立つとした。戦後のアメリカを中心とした「ブレトンウッズ体制」はこの理念を基にしてきたが、「グローバル化」で掻き消された。
ヨセフ・シュンペーターは、資本主義経済はイノベーションを興す主体が創業者的資本家の手から「テクノクラート・官僚」の手に渡れば、イノベーションは衰え、資本主義経済は衰退すると喝破した。1980年以降、世界がグローバル化に走り、価格切り下げ競争に陥り、イノベーションが衰え、経済が衰退した姿に近い。
カール・マルクスは、資本主義経済の動きはプレイヤーとしての「資本家と労働者の階級闘争」であり、その闘争の中で資本主義経済は利潤率低下が起こり、虐げられた労働者の反抗による革命が起こって資本主義社会は崩壊し、社会主義社会になると言う。マルクスは「資本」を無政府的に利益を追求する「物神性」として描いたが、しかし、資本の動きは生身の人間の動きである。
このように、多くの経済学はとりわけ、人間グループの闘争を見逃してきた。金の流れと、誰が儲けているかを見れば経済変動の本質が分かる。つまり資本主義、民主主義の劣化も人間の仕業なのだ。