経済成長すれども 富む者は世界と同じ 叩きのめされる5割の農民 一体この男は

空虚なるマニフェスト
疲弊する人口5割の農業従事者

 2017年にノーベル文学賞に輝いた日本生まれの英国人作家カズオ・イシグロは、新作「クララとお日さま(Klara and the Sun)」に関するインタビューで、「不平等がいかに人間に犠牲を強いているか」と語った。その言葉を借りれば、今のインドはどうか。

 2014年の総選挙で大方の予想を覆しインド人民党(BJP)が過半数を獲得し圧勝、モディ政権が発足した。マニフェストにはこう書かれていた。「エク・バラット(1つのインド)、サブカ・サー(みんなで共に)、サブカ・ビッカス(みんなの成長)」。国民皆が希求する言葉が列挙されていた。しかし、現在のインドでは不平等が拡大している。

 アジア人初のノーベル経済学賞を受賞したインド人アマルティア・センはジャン・ドレーズとの共著「開発なき成長の限界―現代インドの貧困・格差・社会的分断(明石書店)」で「外部から見ればインドは目覚ましい経済成長を遂げているように見られようが、その成長によって生み出された富が、開発、即ち底辺の人々の生活の底上げには貢献していない」と喝破した。

ここから先は

2,051字
この記事のみ ¥ 200