「ワクチン外交」 展開も感染急拡大で頓挫 コロナ対策で揺れる その裏に「印中競争」

「世界の薬局」を自認、「完全国産ワクチン」
先行する中国を追い、85カ国に提供

 今月号からインド・ビジネス・センターの島田卓氏より連載を引き継ぐことになった。台頭著しい巨大国家インドの諸相を、独自の切り口で読者諸氏に伝えたいと思っている。

 外交の世界では、思いもよらないアイテムが「武器」や「打開策」になる。1971年の米中和解のきっかけとなったのは「ピンポン外交」、最近では、中国が新型コロナウイルス対策で「マスク外交」を大々的に展開した。
そして今は「ワクチン外交」だ。変異ウイルスへの効果が気がかりとはいえ、コロナ収束に向けた「切り札」としてワクチンに対する期待と需要は高い。人々の健康にかかわるワクチンが外交の道具になってしまうのは倫理的には問題かもしれないが、それが国際政治の現実でもある。

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