イラン核合意復帰を怪しくする報復空爆 戦略的同盟国サウジとも不協和音の米国

親イランシーア派「人民動員隊」とは
どうなるイラン核合意への米国復帰

 2月25日夜、アメリカのジョー・バイデン大統領は就任以来初めて、シリア東部にある親イランのイスラム教シーア派武装組織「人民動員隊(PMF)」の拠点に対して空爆、軍事作戦を展開した。これは2月15日に人民動員隊によるイラク北部のクルド人自治区にある都市アルビルの国際空港や隣接する米軍駐留施設付近へのロケット砲攻撃への報復である。少なくとも駐留米軍の請負業者1人が死亡し、米兵1人を含む9人が負傷した。人民動員隊はこれまでもアメリカの関連施設や米大使館などを狙った攻撃を繰り返しており、バイデン政権もトランプ前政権に倣い報復に動いた。

 この人民動員隊は元々、イラクのイスラム教シーア派が設立したもので、イランの援助によってその勢力を急速に拡大させた。人民動員隊はイスラム国(IS)がかつて支配していたイラク領内の地域を次々に奪取し、イラクに対する政治的・社会的不満の種を撒いていった。イラク政府は、人民動員隊が一方的に引いた境界線の領域内に居住する住民を帰還させることもできないでいる。イラクには規模を縮小しながらも依然として米兵約2500人が駐留している。

ここから先は

1,468字
この記事のみ ¥ 200