キティちゃんは見つめている ファンやフリークたちに支えられた経営 若き後継者の「第2の創業」の行方は
ミッキーマウスやスヌーピーと肩を並べる
「11月1日イギリス生まれの子猫」の誕生秘話
些か旧聞に属する話だが、SNSで今や欠かせないコミュニケーションツールとなった絵文字(Emoji)が、世界最大の英語辞典「オックスフォード辞典」に登録されたのは2013年のことだった。Bushido(武士道)、Kaizen(改善)、Sushi(寿司)など、これまで英語になった日本語は少なくない。だが、それらは基本的に、日本の文化や風土に相応の関心を持つ層の間で多用される類の言葉だった。
しかし、Emojiは少し立ち位置が異なっているようだ。その2年前の11年に、やはり同辞典に登録されたKawaii(かわいい)と並んで、使用する側の属性に殆ど左右されない真の“国際語”といった性質を帯びている。SNSを発信する際の様々な喜怒哀楽の情を、誰もが分かるシンプルなデザインに落とし込んだという点が、広く受け入れられた要因なのだろう。そして不思議なことにKawaiiも、そのシンボリックなアイコンである「ハローキティ」が、やはりシンプルを極めた意匠であるという点で共通している。
米ディズニーのキャラクターたちがガチガチのライセンス契約でもって運用されているのと異なり、「ハローキティ」は一定の基準内(タバコ、ハードリカー、ドラッグ、セックスだけはNG)であれば誰とも、どこともコラボする「腰の軽さ」が受け、後発参入ながら瞬く間に「ミッキーマウス」や「スヌーピー」などと肩を並べる世界で最も愛されるキャラクターのトップ集団入りを果たした。戦後、日本からは主に漫画やアニメ発のキャラクターが次々と誕生し、世界市場に挑んでいったが、この「11月1日、イギリス生まれ」という設定の口のない子猫ほど受け入れられた例はない。