【企業は公器だ】「会社は何のためにあるのか」を考えさせられる 社会のために何ができるかを追求するオムロン

国内外から注目される“京都型ビジネス”
頭一つ抜きんでているブレない経営

 

「最も人を幸福にする人が、最もよく幸福になる」

 一見すると、マインドリセットなどを謳う投資セミナーの人気講師の常套句のようで、人によっては鼻白んでしまうかも知れない。でも、「大企業病は、痛みの伴わない慢性病である」との指摘に対しては、名立たる企業に勤める多くのビジネスマンが膝を打つものと思われる。どちらも、規模の追求、利潤の追求だけでは健全な企業経営は成り行かないということを簡潔に示した立石電機(現、オムロン)の創業者・立石一真が遺した言葉だ。

 もちろん企業にとって、売上や利益を求めることは組織の安定と存続に不可欠であり、現実にはその手段として、同業他社との厳しい競争に勝つ必要がある。ただ、それらは何のための行動かと問えば、顧客や社会により良い製品やサービス、価値を提供することが大前提であるべきだ。顧客や社会から「必要」とされるからこそ、競争に臨み、結果として売上げが立つ。実は一真は、別のところで、「それを忘れて、競争に勝つことだけを考える企業に成長はない」とも述べている。

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