世界遺産VS地域振興 これ以上の遺産認定は不要では?
軍艦島のトラブルが尾を引いて
佐渡の遺産認定は難航
世界文化遺産に「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」(新潟県)が推薦された。佐渡の金山は17世紀に金の産出量世界最大級であり、金の採取から精錬までを手作業で行っていた頃の遺跡は世界的にも珍しいものだ。だが世界遺産への推薦は紆余曲折を辿った。
候補に挙がった段階で韓国が反発した。佐渡の鉱山では戦時中に朝鮮半島からの労働者が強制労働させられていた歴史的問題から世界遺産にふさわしくないと主張している。韓国の反対があれば推薦してもユネスコでの登録はムリだと判断した政府は、見送る方向で調整していた。
ところが、その方針を一転。推薦書を2月1日までの期限目前に提出した。高市早苗政調会長が「国の名誉に関わる」と反発するなど自民党内保守派への配慮からだが、キーマンは安倍晋三元首相だとされる。ご本人から電話で圧力を掛けられた岸田首相が方針を転換したと報道されている。
もっとも、推薦しても保守派の溜飲が下がるだけで、登録に至る見通しはほぼないとされる。世界遺産に登録される手順は後で説明するが、問題は文化財としての価値がどうかとは別である。韓国との対立があるままでは登録に辿り着かない可能性がある。