黒子に徹し、製品を辛抱強く育てるJSR プロが気にする卓越した世界的素材メーカーへ変貌
JSRとは何者か?設立背景を知るほど面白い
サプライチェーンにおける迫石のような存在
「十八番」「二枚目」「黒幕」「指金」など、歌舞伎を一度も観たことがない人でもその意味を知る、歌舞伎由来の言葉は多い。今では当て字である「黒子」の方が定着してしまった「黒衣」もその1つだろう。舞台上の演者に色々と介添をする「見えない約束になっている係員」という意味が転じて、「表には名を出さない者」とか「裏方に徹する者」とかの例えで、企業活動を形容する際にも多用されている。
もちろん多くの会社は、自ら進んで黒衣の役回りを演じているわけではない。本心では主役を望んでいても、資本や商取引の都合から、結果として裏方に回るケースが大半かと思われる。ただ、そうした中で例外的に、率先して黒衣に徹する使命を帯びて設立され、ニッチなB2Bの領域を棲み家としながら変革を重ね、サプライチェーンにおける迫石のような素材や技術、サービスを提供してきた企業も少数ながら存在する。その代表格として、恐らくは国内で5指に入るだろうと思われるのが、今回取り上げるJSRだ。
東証のプライム市場への上場基準を軽くクリアする実力を持ちながら、同社の知名度は相当低い。10数年前になるが、同社が一般ビジネスパーソン500人余りに聞いた認知度調査によると、JSRの製品・サービスを「知っている」「少し知っている」という人は全体の僅か7.5%に過ぎず、「社名だけは聞いたことがある」人の14.1%を加えても、21.6%に止まった。逆に「全く知らない/分からない」と答えた人は78.4%に達したという。今日、同じアンケートを仮に行ったとしても、似たり寄ったりの結果となるだろう。
ではJSRとは何者か?