今回のインフレ対策は歴史的失敗になる?理解していなかった「覇権のメカニズム」
物価上昇を抑えるほどの利上げではない
誰も分からぬ中立金利、インフレは高進する
40年ぶりの高水準となる前年同月比8.5%の上昇を記録した米インフレ率。これに対し、米連邦準備制度理事会(FRB)は5月4日、フェデラルファンド(政策)金利を22年間続けてきた一度の変更幅0.25%ポイントの慣例を破り、一気に0.5ポイント引き上げて0.75~1.00%とした。さらにジェローム・パウエルFRB議長は利上げ決定後の記者会見で、この0.5ポイント利上げを6月と7月の政策会合でも実施する意向を示唆。緩和策のもう1つの柱で、9兆ドル(約1200兆円)に達した米国債などの保有資産も6月から減額を開始して市中への貨幣供給を絞り、インフレ退治の強い決意を示した。
昨年夏頃からはローレンス・サマーズ元財務長官ら一部エコノミストがインフレ急進の警告を発しており、対応が後手後手に回ったパウエルが失地挽回の積極引き締め策に打って出た形だ。だが、これでも果たして年内にインフレ収束の兆しを出せるかどうか疑問視しているのが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の「FRB利上げ急ぐも、打ち止め水準に苦慮か(The Fed Wants to Raise Rates Quickly, but May Not Know Where to Stop)」(4月24日付)だ。