チームなき独りぼっちのトップリーダー コロナで次々に狂う皮算用、菅首相はもつのか
狭まる解散戦略の選択肢
回避したい「解散を打てぬ首相」の“汚名”
衆院議員の残り任期が半年を切った。本来なら、菅義偉首相がいつ衆院解散・総選挙という“伝家の宝刀”を抜くか、に注目が集まるはずだが、それどころではない。今年初めに発令した新型コロナウイルス感染再拡大に伴う緊急事態宣言をようやく解除したのも束の間、変異ウイルスが猛威を振るい始め、第4波が襲い掛かる。「まん延防止等重点措置」で凌ごうとしたものの、大阪府、兵庫県などでは新規感染者の急増は止まらず、「医療崩壊」の危機を迎えてしまった。
頼みのワクチンも、高齢者への接種が始まったが、供給量は圧倒的に少ないまま。最優先の医療従事者への接種は2カ月を経過しても2割に止まる。
国際的なワクチン争奪戦に後手を踏んだ上、1億人接種のスケジュールを明確に提示できないでいる。官僚や与党議員の不祥事も重なり、菅首相への視線も厳しさを増す。内閣支持率はやや持ち直し、野党の支持率も反転しないとはいえ、「これまでで最大の危機」(日本医師会の中川俊男会長)と評されるコロナ禍の真只中で、解散・総選挙に打って出れば、強烈なしっぺ返しを食いかねない。ウイルスという「見えない敵」は、1つ、また1つと菅首相の解散戦略の選択肢を奪い、暗い影を落としている。
「新型コロナ対策が大前提だ。秋までの衆院議員任期、外交・安全保障、経済を視野に入れながら考える。安心できる生活を取り戻すため全力を尽くすのが私の使命だ」「衆院を解散し、勝たなければ(政権は)続かない。いろいろな条件がある」
バイデン米大統領の初の対面首脳会談を終えた菅首相は、幾分高揚した面持ちで同行記者団に解散・総選挙の時期を問われ、こう話した。首相が就任当初から描く青写真は、9月の自民党総裁選前のどこかで解散に踏みきり、自民党単独で過半数維持という「実績」を挙げ、総裁選をできれば無投票に、対立候補が出ても消化試合に持ち込むことに違いない。「解散を打てぬ首相」の“汚名”を回避したいとの思いは容易に想像が付く。