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OK基準

あるピアノ講師が、
「生徒の質問で一番多いのは『先生のOKの基準がわからない』というもの」
と言っていて、あ~めちゃわかる~、と思った。
もちろん、先生の中には確固たるOKの基準があるのだろうけど、自分の中で「全然弾けてない」と思ってもOKもらえたりするので、確かにOKの基準ってよくわからない。

上述の講師は、そういうわけで、OKの基準は生徒に決めてもらっているそうだ。生徒がOKと言えば基本的にはOK、でも、足りないと思うことがあればアドバイスする、というスタンスらしい。
私ならそれはそれで困る。
私はたぶん、いつまでたってもOKを出せない。
すべてがクリアにならないと前に進めないので、同じ曲を延々と練習してしまいそうだ。

この前も、完璧にできてから次に取り掛かる、という考え方じゃないほうがいい、と先生に言われた。
これ言われたのはもうn回目。
私は一つでも瑕疵があると、それが気になって気になって、視野が狭くなってしまう。
それを、ともかく、いま、どうにかしなければ、と思う、強迫的に。

でも、先生は、別の方向からやってみたことが、いつか回りまわっていまの困りごとに繋がってくるから、いま全部をことごとく解決しようとしないほうがいい、と言う。
手を変え品を変え、何度も同じことを言われるので、先生もいい加減うんざりしているかもしれない。

これは本当に自分の悪いクセで、仕事の手法でピアノ練習をしようとする。
タスクを洗い出して、一つ一つ潰していく。
取り残しがあると後々それがネックになりかねない。
だから、思いつく限り全部いま完璧にやっておく、というような。

でも、昨日弾けていたところが今日は弾けない、ということはしょっちゅうある。
どんなに頑張っても弾けなかったところが、寝て起きたら簡単に弾けたってこともある。
そして、それはまた明日には弾けなくなっている。
そんなことの繰り返しだ。
完成もしないし、終わりもない。
だから、どこかで見極めが必要なのだ。

私はキャンバスの10センチ四方しか見えていないので、端から隙間なく色を塗っていく。
先生には絵の全体像が見えているから、ここの色塗りはこの程度にして、他を取り掛かっても大丈夫、とわかっている。
私にはわからない。
だからOK基準は先生で当然なのだ。



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