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いい大人

ある日、通っている歯医者さんから電話がかかってきた。
あの助手さんだ、という女性の声。
「お取りいただいた予約ですが、二重に予約をお取りしていたので、いしいさんには申し訳ないのですが、時間をずらしていただけないかと思いまして」
こちらは何時でもかまわなかったので、快諾した。

ところが、その予約日の二日前にまた歯医者さんから電話が来た。
今度は先生直々に。
「申し訳ありません。また予約が二重になってしまっていて…日にちを変更していただけないでしょうか」
先生が直接電話をしてくるのだから、悪いとは思っているのだろう。
でも、私のことはさして大切な患者ではないんだな、と思った。

その歯医者さんは、この時代に珍しくいまだに予約を紙で管理している。
紙のほうが一覧性にも視認性にも優れているので、ダブルブッキングの可能性は少ないのではないだろうか。
仮に、見落としがあって二重に予約したとして、なぜ2回もそんなことが起き、しかも2回とも私に変更を強いるのだろうか。

決して歯の健康に気を遣う優良患者ではないが、ハラスメントを働いた覚えはないし、迷惑行為もなかったと思う。
深く考えず、言いやすいほうに言っただけでしょ。
暗に「もう来なくてもかまわない」というメッセージだと私は受け取った。

それが2年前のこと。
いまなぜそれを思い出したかというと、息子宛てにその歯医者さんからお手紙が届いたからだ。
「前回のご来院から1年が経ちましたが、そろそろ歯の検診にお越しになりませんか」というご案内。
あっそ。
私のことは2年放置しているのに。
(正確に言えば放置しているのは私だけどさ)
1年行かないだけでこんなお手紙くれるんだ。
やっぱり私は来てほしくない患者だったのかもしれない。
どんなやらかしをしたのか、とんと心当たりがないけど。

…などといい大人が拗ねてみてもしかたない。
そろそろ歯医者に行かねば(超絶行きたくない)



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