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運命の出会い

よく物持ちがいいと言われる。
もちろんそれもあるけど、自分が気に入って納得したものしか使いたくないので買うまでにすごく吟味するし、吟味したものだから長く使いたい。
結果、物持ちがよくなる。

お料理をよそう器は何でもいい、いまはパン祭りの例の白いお皿しか使わない。
でも、自分が使うお椀、お茶碗、お箸はよくよく選んで買う。
そのお茶碗を先日買い換えた。

砥部焼の器が好きで、お茶碗はずっと砥部焼を使ってきた。
砥部焼の重たくぼてっとした質感も好きなのだけど、高台がしっかりしていて、その武骨で素朴なフォルムもとても気に入っていた。
数年前に手が滑って割ってしまい、次に買ったのが子供用のお茶碗だった。
砥部焼の、小さなお茶碗。

ぼってりと可愛い

柄が気に入ってすぐに決めたのだけど、子供用しかなかった。
そんなに小さすぎることもないし、ぼってりした厚みも良くて、ほぼ即決した。
柄の色は他にピンクもあった。
普通に考えればピンクは女の子用、つまり私が買ったものは男の子用だったかもしれないけど、そんなことは気にしない。
ともかく、手になじんで、かわいくて、マットな手触りも大好きだった。

一昨年、そのお茶碗の端が欠けてしまった。

ほんの少しなんだけど、悲しい

いつ欠けたのかわからない。
気づいたら欠けていた。
そこから一年半くらい、そのお茶碗を使い続けてきた。
気に入ったお茶碗に巡り合えなかったからだ。

買い物に行って、陶器のお店や和食器のお店があると必ず覗いて探すのだけど、これというお茶碗に出会えない。
これでもいいかな、という候補はいくつかあったけど、「これでも」という妥協が嫌でけっきょく買えなかった。

ところが、そんな目的もない、待ち合わせの時間つぶしにふらっと入ったお店に運命の出会いがあった。
食器というよりテーブルウェアのお店というような構えで、何を見るともなく見ていたそこだけ、遠めにもパッと明るく輝くように感じられた。
頭で考えるより先に足が動いて、吸い寄せられた。

一目惚れ。
これ欲しい。
もう決めていた。

一応待ち合わせた友人に「買いたいものがあるんだけど、先に買ってもいい?」と聞いて、それはそのお茶碗がその一点しか置いてなかったからで、現品限りだったら誰かに先に買われたら後悔する、と思ったからで、「いいよ~」という返事をほとんど後ろで聞きながら買いに走ったのだった。

こだわりの強いことは友人も知っていて、後ろから覗き込んで「それ砥部焼じゃないじゃん」と言った。
あぁ、言われるまで気づかなかった、砥部焼かどうかとか、そんなこと考えていなかった。
「砥部焼は好きなんだけど、いまはこれ」

ほんとに素敵(自分を褒めるスタイル)

好きなものに囲まれて暮らすことが本当に幸せ。
息子に「お茶碗買っただけで、そんなに嬉しい?」と言われるくらい、ニヤニヤが止まらない。




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