おもしろアイデア攻略法
人とのコミュニケーションが苦手な僕にとって、お正月くらいは家族以外の誰とも会いたくないので、どこにも行かず朝から晩まで、テレビを観て過ごすのが毎年のお決まりだ。お笑い芸人さんがワイワイとやっている番組とか、なんちゃら駅伝とか、列島各地の中継とか飽きる間もなく正月特番とやらを観て過ごしている。
お正月の風物詩に癒される。
一般的に「お正月の風物詩」と言えば年賀状・お年玉・初詣など季節特有の風景が挙げられるが、テレビしか観ない僕の「お正月の風物詩」は、お正月限定のテレビCMをまったりと眺めること、これもまたこの季節特有の風物詩とも言える。
富士フイルム「お正月を写そう」
「お正月を写そう♪」のメロディが印象的な、富士フイルムのCMは、そんなお正月CMの代表格だろう。岸本加世子さん扮する街の写真店の店員と樹木希林さんとの掛け合いで「美しい人は、より美しく」「そうでない方は・・」「そうでない場合は?」「それなりに・・」のセリフが面白いこのCMは1980年に初回放送されいる。1980年と言えば僕が生まれた年なので、リアルタイムで観たというより、リバイバル映像などで観た記憶が刷り込まれているのかもしれない。
40年以上続くご長寿CMの新バージョンが今年も放映されている。お正月にふさわしい艶やかな晴れ着姿の広瀬すずさん、神社のご本尊に扮した“村神様”こと東京ヤクルトスワローズの村上宗隆選手、羽織袴できめた俳優の横浜流星さんがチェキプリントを楽しむ様子が描かれる。
昨今「テレビ離れ」という言葉が、もはや死後なんじゃないか?と思えるほど、あらゆるコンテンツが群雄割拠ひしめきあい、もはや当たり前の存在となったYouTubeや TikTok、SNSメディアの台頭で「テレビ」という存在はもう観られなくなって終わってしまうのか?
いや、そんなはずはない!
どうも曽川慎司(そがわしんじ)と申します。42歳です。広島の広告代理店に勤務しております。
皆さんは、普段テレビは観ていますか?
僕の場合、視聴時間は大体決まっていて、平日の朝の出勤前に支度をしながら「朝の情報番組」を観るのがいつもの日課である。
「朝の情報番組」というと各局が競い合って特色ある番組を放送していて、どの番組を観るのか?って結構好みが分かれる所だったりする。
朝の情報番組遍歴(90年代)
お前の遍歴なんて誰も興味がない!
わかってる。宇多田ヒカルくらい有名になれば読んで貰えるだろうが、素人が何かを発したところで誰も興味は示さない!
誰も見ていないなら、せめて自分が読みたいことを書いてみよう。読みたいことを書き続けてると誰か1人くらいは見てくれるかもしれないし、見てくれないかもしれない。
というわけで、平日朝は身支度をしながら朝の情報番組を観るのが日課なのだが、この習慣は中学時代にまで遡る。「朝の情報番組」という概念を初めて知ったのは、フジテレビの「めざましテレビ」だった。1994年にスタートした番組で、当時14歳。僕にとって90年代の朝のルーティンはフジテレビ「めざましテレビ」を観ることだった。
1980年生まれの僕は、90年代というと小学校高学年から進学初年度を過ごした年代で、割と規則正しい学生生活をしていた頃で、その規則性が、毎日のルーティンとして、同じ時間・同じ番組をなんとなく観ていたんじゃないかと思う。
朝の情報番組遍歴(00年代)
1980年生まれの僕は、2000年に二十歳を迎えているのだか、20代は「テレビ」を観ていた記憶があまり無い。僕は高校卒業後、大学にも行かず、就職もしないまま職の定まらない生活をしていた。規則なんてどこにもない「ニート」で20代を過ごしていて、さらに遅れて来た中二病を患っており「メディアなんて糞くらえ」と思っているような20代だった。よく分からないプライドによりマスメディアを拒絶していた2000年代は、テレビの記憶がごっそり消えた10年間だった。
2000年代前半。ハードコアが好きでよく聴いていたので、ハードコアパンクたる者、他に流されず自分で自分をつくれ!「Do It Yourself」的な思想から福岡でハードコアイベントを企画・主催していた。アンダーグラウンドなカルチャーに惹かれていて、アイドルなどは敵視していた。メジャーなアイドルといえば今も昔もマスメディアの影響下にあり。マスメディアの扱うエンタメにヌルい馴れ合いを感じ、テレビを避けていた2000年代。
朝の情報番組遍歴(10年代)
1980年生まれの僕は、2010年に三十路を迎えていて、相変わらず職場も長続きせず職を転々としていた。ただ30歳なのでまぁ一応「朝から働く会社員」では居ようと渋々決めていた。朝から働くと必然的に「規則正しさ」が蘇るものだ。
僕が31歳になる頃、2011年に「日本テレビ」の『ZIP!』が始まる。90年代はなんとなく「フジテレビ」を観ていたが、2010年代になると何故か「日本テレビ」を観るようになった。
なんとなく新しさと勢いを感じたのか?2010年代の朝のルーティンは、日本テレビ『ZIP!』がBGMのようにが流れていた。
朝の情報番組遍歴(90〜10年代)
90年代:10代の学生時代は、朝のフジテレビ。
00年代:20代の無職時代は、テレビの記憶無。
10年代:30代の転職時代は、朝の日本テレビ。
日本テレビ『ZIP!』も10年周年を迎えた2021年、「朝の情報番組」の固定概念に激震が走った!!
「日本でいちばん明るい朝番組」
日本テレビの「ZIP!」を観て、番組が終わる朝8時を合図に本格的に通勤支度をしていた。そんな中、見た事もない光景が僕の目に飛び込んで来た!朝8時という時間帯に夜8時にタイムスリップしたようなドバラエティ!
TBS時代の到来!?
お笑い芸人、麒麟の川島明さんがMCを務めアナウンサーが脇を固める布陣の番組。このキャスティングだけ聞くと良くある「朝の情報番組」かな?と思えるのだが脇の固め方が異常だった。
平日、月曜から金曜までのTBSの朝の帯番組で、レギュラー出演者を挙げてみると馬場裕之(ロバート)、ぼる塾、アインシュタイン、ビビる大木、ミキ(昴生・亜生)、柴田英嗣(アンタッチャブル)、見取り図、石田明(NON STYLE)、ニューヨーク、EXIT、太田博久(ジャングルポケット)くっきー!(野性爆弾)東京ホテイソン、宮下草薙などお笑い芸人さんオンパレード。
しかも斬新だったのが朝8時という時間帯にいわゆる「時事ネタ」を扱わない!という良い意味での違和感。社会的事件や芸能界・スポーツ界のニュースは一切扱わない。という同時間帯の民放各局のワイドショーとは一線を画す番組。
「日本でいちばん明るい朝番組」をキャッチフレーズに、時には夜のゴールデンバラエティの如く、時には深夜の突き抜けた怪しい番組の如く、とにかく僕が観てきた「朝の情報番組」の概念を覆す異常なテンションの朝番組が始まった!
TBS『ラヴィット!』
MCの麒麟・川島明さんの談話を紹介したい。
「朝なのに」という評価のその先へ
前述の通り朝8時と言えばニュース、時事ネタを扱うのが当たり前の光景として捉えていたが『ラヴィット!』はその真逆を攻めてきた。世間を騒がす重大なニュースが起きても一切触れず、一貫して「面白い」を追求した直球バラエティ番組だ。
テレビが世の中を明るくする。
20代の僕だったら「テレビが世の中を明るくする?」なんて「考えられへん!」と怒り心頭してるはずだが、テレビを面白くしようとチャレンジしてる製作者は確実にいるんだなぁと「ラヴィット!」を観ていると感じる。テレビ番組を面白くしようと日々考え続ける人がいるように、テレビCMを面白くしようと日々考え続けてる人もいる。
テレビCMを面白く。
冒頭に紹介した富士フイルムの「お正月を写そう」シリーズを1998年から担当しているコピーライター、CMプランナーの福里真一(ふくさとしんいち)氏もテレビCMを面白くしたいと考えているクリエイターのひとりだ。彼のインタビューを一部ご紹介したい。8年近く前の記事だが普遍的で的を得ているので今読んでも腹落ちする。
それも踏まえて、福里真一さんのお仕事を。
「お正月の風物詩」を描くテレビCM
「普通の人が見る、ごく普通のテレビCM。」テレビCMを放映するために広告主は多額の費用をかけ、売れる広告を作りたいと考える。「売れる」の総数を増やすため、つまりは「普通の人が見る、ごく普通のテレビCM。」が重要視されるのである。より多くの人に広く告げるのが広告であり、それを最大限可能にするメディアがテレビなのである。ABEMAなどインターネットメディアも台頭しているものの、圧倒的なリーチ数という点では「テレビ」は今でも他の追随を許さない巨大メディアと言える。広告が「風物詩」とまで言われるようになるには、そこに至る「お正月を写そう」という企画を継承してきた広告主の長年の決断があったからに尽きると思う。
そんな普通の人の普通の感覚を大切にテレビCMを面白くしようと奮闘する福里真一氏も実は「人とのコミュケーションが苦手だ」と語っている。面白さを追求するような人って明るくてコミュニケーションが上手な人なんじゃないの?と思ったりもするが、なぜコミュニケーションが苦手な人が面白いCMを作るのか?
探って行きたいと思う。福里氏は92年に電通に入社するが入社後10年くらいは、なかなかいい仕事ができなかったと言う。
GEORGIA「明日があるさ」シリーズを観てみましょう。
福里真一さんヒストリーを知りたい方は、東京コピーライターズクラブのインタビューがYoutubeにアップされてるので観ていただきたい。
先述したTBS『ラヴィット!』のMC、麒麟・川島さんの談話記事を思い出した。「テレビをつけると暗い話題が多い」との視聴者の声を挙げている。
福里真一さんのお仕事にも「テレビは暗いニュースばかり流すなぁ」という何気ない感想から生まれた企画がある。それがこちら!
BOSS『宇宙人ジョーンズ』シリーズ
サントリーの缶コーヒーBOSSのCMだ。
テレビのニュース番組は社会情勢などを知る上で欠かせない番組ではあるのだけど、朝の情報番組を長年観てきた自分は思い当たるが、確かに立て続けに暗いニュースが続くとしんどくなるのはよくわかる。そんな時に面白いCMだったり、面白いテレビ番組があるとお世辞抜きで助けれれた気持ちになる。くどいようだけどもう一度引用したい。
「朝なのに」という評価のその先へ
普通のテレビCMを面白くしたい。
【キミが主役になればいい】第4弾
さて、本題はここからである。ここまで6000文字も書いて断線しすぎたので軌道修正したい。僕は広島在住で広告代理店勤務の42歳。曽川慎司(そがわしんじ)です。広告や企画、コピーのことは大好きなんですが、今の会社ではあまりその点は求められていません。
それでも「企画したい熱」が溢れまくって、僕自身が個人的に尊敬するクリエイターをお招きして広島でお話を伺うイベントというものを始めた。
泰延さんを広島に呼んだんじゃ!
2000年に第一回目を開催
電通同期鼎談!
2001年に第二回目を開催
「脱広告」令和時代のアイデア発想法!
2002年に第三回目を開催
そして、2023年。第四回目を開催します!
クリエーティブ自由研究
『キミが主役になればいい』
【日程】 2023年2月19日(日)
【時間】 13時15分〜16時25分
(開場13時00分〜)
【場所】 エディオン紙屋町ホール
広島市中区紙屋町2-1-18
エディオン広島本店 東館9F
お申込みはこちらから↓
【登壇者】
↑福里真一氏(ふくさとしんいち)
ワンスカイ
クリエイティブディレクター
CMプランナー/コピーライター
1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業後、92年電通入社。2001年よりワンスカイ所属。いままでに2000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、ジョージア「明日があるさ」、富士フイルム「お正月を写そう」、サントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」、メルカリ「メゾンメルカリ」、マクドナルド「夜マック店長」、ユニクロ「LifeとWear」など。YouTubeチャンネル「広告ウヒョー!」になぜか出演中。よろしければご視聴&チャンネル登録を。
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◆細川美和子 氏(ほそかわみわこ)
つづく。
クリエーティブディレクター
コピーライター
文化人類学をICUで専攻、2000年卒業。2001年電通入社。2022年1月クリエーティブ・ディレクター・コレクティブ(つづく)を設立。主な仕事に大王製紙アテント「#常識をはきかえよう」、P&Gパンテーン「#この髪どうしてダメですか」、東京ガス「家族の絆」「東京ガスのひと」シリーズ、宮崎県日向市「ヒュー!日向 / Phew!HYUGA」、味の素ピュアセレクト、Glico企業広告、リクルート企業広告、中央酪農会議「牛乳に相談だ。」など。主な受賞歴にカンヌライオンズ金賞、ADFESTグランプリ、NYADCゴールド、朝日広告賞グランプリ、TCC賞など多数受賞。
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◆板東英樹(電通西日本)
クリエーティブディレクター
コピーライター
1973年奈良県生まれ。慶応義塾大学大学院理工学研究科修了。読売広告社、 中野直樹広告事務所を経て電通西日本松山支社。2019年から同広島支社。主な仕事に、中国電力「千鳥&松本穂香CMシリーズ」、広島国際空港「空からいけば広い島」、村田葬儀社CM「旅立ち」篇/Web「ある家族」篇、松山市「坊っちゃん文学賞」など。TCC/OCC/FCC会員。主な受賞は、TCC審査委員長賞/新人賞、ACCゴールド、広告電通賞優秀賞、ギャラクシー賞奨励書、OCC賞グランプリ、SpikesAsiaブロンズ、D&ADウッドペンシル、日本雑誌広告賞銀賞、消費者が選んだ広告コンクール銀賞、宣伝会議賞、FCC観覧者賞、CCN賞ほか
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