若い才能が挑戦するきっかけをつくりたい。New Innovationsとの出会いが次世代の起業家育成の源泉に
New Innovationsは2023年4月に計54.1億円の資金調達を完了し、OMO事業のさらなる拡大に向けて動き出しています。そこでこのたび、引受先となったTHE SEEDの廣澤様と、当社CEOの中尾・COOの山田による鼎談を実施。投資における考え方やNew Innovationsへの投資に至った背景、今後の期待などについて伺いました。
“人”の魅力に投資する
——まず、THE SEEDの概要について教えてください
廣澤:投資する事業領域は基本的に決めておらず、創業期のスタートアップにリード投資家として出資しているファンドです。出資後は事業選定を一緒に行ってくれるようなエンジェル投資家への紹介を支援したり、先輩起業家や事業会社とのコネクションづくりを行ったりもしています。
このファンドをやっている最大の理由は、成功の再現性が知りたいからです。どのような人がどのように成功するのか、コントローラブルなものとそうでないものは何なのか。なので、シードから次の投資ラウンドでも基本的に追加出資をさせてもらっています。国内でこういった方針のところはあまり多くはないかと思いますが、一番最初の事業が始まる前から関わっていくことに意味があり、自分としての納得感があるんです。最近は「プレシード」と呼ばれるラウンドでの投資も増えていて、エンジェル投資より前の段階から投資していっています。
——シード投資をする判断は難しそうな印象があります
廣澤:意外と難しくはないです。おそらく、判断する瞬間だけに着目されてるからだと思うのですが、年間何百人、何千人と会って話すことでいくつかの判断ポイントができてきました。
まず、経営者が出資金額を扱える人物であるか、次に開発能力があるか、またはそういう人物を引っ張ってくることができるか、最後に何かにどっぷりハマり込んだ“オタク”のような経験があるかの3点を重視しています。
——中尾さんに出資したのでは何故でしょうか?
廣澤:中尾さんに投資したいと思った一番の理由は、彼が飽くなき知的好奇心を持っていたことです。自分のやりたいことや興味を持ったことについて、手段を選ばず徹底して追求する。これが成功する経営者に必要な要素なんだと感じています。
短期的な自己利益を求める人ではない、というのもポイントです。例えば、「今会社を売ったら何億円キャッシュインするから会社を売ろう」という判断を彼は絶対にしないでしょう。自分たちが目指す世界がこうしたら達成できると本気で信じてやっているからこそ、目先の数億円は安すぎると考えるのだと思います。
とんでもなく長いバットをフルスイングしながら、本当に大きな事業や会社を作っていく人だと確信しています。
——創業時の出資から5年が経ち、両者の関わり方に変化はありましたか?
中尾:2年くらい前から関わり方を変えてもらってきましたよね。
廣澤:New Innovationsのフェーズに合わせて変わってきていますね、最近はそこまで密に連絡を取っていません。ただ、個人的に中尾さんとのコミュニケーションはとてもやりやすいです。「こういうことに困っているから、こうしてほしい」と、リクエストが明確でヘルプの出し方が上手なんです。
最初の2〜3年はコミュニケーション頻度も高くて、例えば一緒に大阪へ行ってデベロッパーの方と会うみたいなこともしていました。この2年間は色んな株主の方が増えてきていますし、経営をしていくうえでフェーズや解くべき課題も変わってきていますから、相談相手が変化していくのも必然なのです。
相互に好影響を与え合ってきた関係性
——New Innovationsへの出資がTHE SEEDに与えた影響や変化もあるのでしょうか?
廣澤:そうですね、2点あります。
まずは、追加投資は早い段階でやったほうがいい、ということを学びました。今、私たちは通常のシード投資に使う2つのファンドに加えて、追加出資用のファンドも運用しています。結果論ではありますが、仮に全投資先に無条件で過半数の持株比率を取るような追加出資をしていったケースと今の状態とを比較すると、今のファンドパフォーマンスも悪いわけではないですが、前者の方がさらに良い状態になることが推測されるんです。もちろんリスクと表裏一体ですが。
山田:確かに2回目の追加出資もいただきました。判断軸は初回出資時と変わるのでしょうか?
廣澤:一定の条件を満たして、投資仮説が変わらない経営者であることをベースに、先程話したポリシーに変わりはないです。New Innovationsの場合、中尾さんへの評価は変わらず、山田さんという優秀な人材がジョインすることでポジティブな要素が揃ったので追加出資しない理由はありませんでした。
中尾:もうひとつの変化は何ですか?
廣澤:今の投資戦略のひとつの柱にもなっている、関西の才能の発掘です。
関西で活動を始めた一発目のイベントで中尾さんに出会って投資できたからこそ、関西への取り組みを自分の中で肯定することができたんです。
中尾さんと出会った時は、まだスタートアップというよりも受託開発の会社をやっている人でした。ただ、お金を稼ぐことの意味を知っている、スタートアップ界隈のリサーチをして自分なりの仮説を立てて行動できている、ハードもソフトも開発できる。なのに誰も彼のことを知らない。彼のケースのような人材はきっと他にもいるだろうと思い、イベントを開催して大学生と出会い、発掘してきたことで、今では事業規模が結構大きくなっている事例も出てきています。機会がないために何かができていない、そういう若い才能が挑戦する入り口を作りたいと考えました。
中尾:東京だと在学中に起業しようという選択肢もありえますもんね。それが東京以外だとまだまだ少ないように感じます。
廣澤:全国に才能やポテンシャルのある人がたくさんいるのに、スタートアップコミュニティに接続されていないんです。コミュニティに入ることでチャンスやお金も巡ってくる。その機会をこのファンドで提供したいと考えています。
——中尾さんからみて、THE SEEDや廣澤さんとの関わりはどんなものでしたか?
中尾:地方から出てきた私をいろいろな場に連れて行ってくれたことに感謝しています。当時、様々なレイヤーの人に出会ったことで、スタートアップのポジティブなこともネガティブなことも知ることができましたし、自分のちっぽけさも目の当たりにしました。
なので、最初は視座が低くて何者でもない時期だからこそ、機会に恵まれることは大切だと思うんです。強制的に人と会う場に投入されることで、何もできない・にっちもさっちもいかないみたいなことがあっても、それが二回目になれば前回との差分に自分で気付くことができます。
他にも、自分とは離れすぎていてどうやったらこの人のようになれるかはわからないけれども、前に会った起業家と今日会った起業家との違いや数年後の差分を観察して、自分のものにしていくことはできます。そうすれば、自分が次はどのポジションにいる必要があるのかなんとなくはわかるようになっていくはずなので、たくさんの人と会うことは重要だと学んだと同時に、本当にありがたかったです。
廣澤:確かに1,000人と会って話を聞いたと言っていましたよね。ある意思決定をする場面で投げかけていた質問が非常に芯を食ったものになっていて、「ここでこれを受け入れていいのか、だめなのか」という感覚を人と会うことで学習してきたんだなと実感しました。
いろいろな業界の、ビジネススキルやレイヤーも違う様々な立場の人に自ら会って話を聞くことで、物事に対する解像度を高め、自身の意思決定の強さに反映していっているんだと思います。起業家や投資家が集まるイベントでは、誰と話がしたいのかバイネームで用意して、ひたすらプレゼンしていたり。本当に感心しました。
中尾:廣澤さんにお願いして、次から次へと紹介してもらいましたよね。
廣澤:紹介した人たちからも、「彼はいいね、やっていることを心から楽しそうに語る」「あれができるファウンダーは必ず成功するよ」と言われていました。確かにそうで、自分の事業を売り込みではない形で心底楽しそうに語れるって、なかなか練習しても難しいことだなと思います。
営業や売り込みのようなノリを感じず、ピュアに楽しそうに話す姿に魅力を感じる。これはファンドでも大事な視点として見ていきたいですし、中尾さんにもそのままでいてほしいと思うポイントですね。
中尾:楽しくないわけないじゃないですか。だからやっていますし、自分たちの描く未来を信じて進んでいけるんです。
——会社としてフェーズが変わったタイミングでもあると思いますが、中尾さん自身変わらずに大切にしていることはありますか
中尾:先ほど廣澤さんから私が1,000人と会ったエピソードを紹介していただきましたが、今も変わらず、自分で見て、理解して、判断することを大切にしています。
「原理原則に忠実に」とよく言っていますが、これは社内にも浸透してきたと思います。常識を疑う部分としっかり守る部分、これを区別する嗅覚は社員にも大切にしてほしいですね。
あと、私は根本的に人が好きなんです。自分も含め、人は総じて変わることができます。変われるということは面白いこと。会社を通じて人が変わることに向き合えるのは幸せなことだなと日々思っています。
——今回、5人の投資家の方にお話を伺ってきました。投資家対談の総括として、感想や読者へのメッセージをお願いします。
山田:投資家の皆さまには、ビジョンに共感いただき、New Innovationsの成長を真っ直ぐに考えて応援していただいて大変感謝しています。
多くのステークホルダーからの大きな期待を背負っていますし、事業としても本当に面白いフェーズ。他ではなかなか味わうことのできない経験ができる環境が今のNew Innovationsにはあります。より社会的に意義がありインパクトのあることを成し遂げるために、泥臭くものづくりに真摯に一緒に向き合っていける人にぜひジョインしてほしいなと思っています。
中尾:投資家対談で様々なエピソードを振り返り改めて感じたのは、仕事の悩みは仕事でしか解決できないということです。
新しいことに挑戦するスタートアップなので、もちろん明確な正解はありません。一人一人が問題解決能力と実行力を出し切らないと、私たちの事業は進みません。正直、厳しさもある環境だと思います。
これを、辛いと感じるか、楽しいと感じるか。私は、これを一緒に楽しんで、社会を変えていく意気込みがある人に仲間に入ってほしいと思います。
今も、外資戦略コンサルティングファームや大企業から転職してきた人、ユニコーンスタートアップの部長の立場を捨てジョインしてくれた人、60歳を過ぎたタイミングで問い合わせをしてくれた人、大手コンサルを蹴って新卒で入社してくれた人・・・と、本当にバックグラウンドは様々です。
ビジョンに共感して集まってくれたメンバーと一緒にこれからも真摯に事業に向き合っていきたいと思います。
——ありがとうございました。
インタビュー・構成:堀夢菜
編集協力:中村洋太
※年齢はインタビュー当時のものです。