さよならの向こう側

バリ島では年に一回全ての場所で一斉にお祭りが行われる。

倫太郎は兼ねてからずっと清子さんを連れて行きたかった場所があった。

バリ島に着くと、一緒に買い物をしてホストホテルに向かいご飯を一緒に作って食べた。

もう何の違和感もなかった。

あれだけ最初は嫌だったことも、清子さんと接するうち内側にあった、優しさや、女らしさ、そして思いやりをヒシヒシと感じるようになった倫太郎。

仕事上でセックスをすると、もうプライベートで好きな女性なんて本当に出来なかった。

風俗に行っても、『俺と同じようなことをみんな思ってるんやな』と、昔は意気揚々と通っていたが、もう本当に行かなくなった。

自分が女性を見る価値観がまるで変わったのだ。

『女の人は愛された方がいい。そうやって可愛くなって、本当の女らしさが出てくるんや』
と倫太郎は豪語していた。

そんな思いが清子さんとご飯を食べながら、ぐるぐる回っていた。

『夕方からバイクに乗って山でも行こうかと思ってるんやけど?』
『え??夜に山なんて連れて行くなんて、あなた私を殺そうとしてるんじゃないわよね!!』
『そんなことあるかい!!こんなとこで殺すんやったらもうとっくに殺してるわ!!』

そんな会話が続きながら、無理やり嫌がる清子さんをバイクに乗せて、山に向かった。
頂上に着いた時『もうしばらくここで待っといて』
『本当にあなた何しに私をこんなところに連れてきたのよ!!』

山の頂上からはバリ島の市内が見渡せて見える。そして海も見えていた。
真っ暗な山でひたすら待った。

途端に大きな音がした
ドーン ドーン ドーン  
『何何何???』
巨大な花火が上がった。
それと同時に一斉に各家庭から花火が上がる。
それは街全体で花火を上げるお祭りだったのだ。

『うわー うわー何!!!! あなた!!!なんてことを。。。とっても綺麗じゃない!! ありがとう、ありがとう』
清子さんはぐしゃぐしゃに泣いていた。

倫太郎はそっと肩に手を当てて
『今までありがとう。そしてほんまに幸せになってください。あなたにはなる権利があるんですよ』

『あなた!! なんてことを。。本当に本当に私こそありがとうね。本当に生きてきてよかった。よかったのよ。』
清子さんはずっと泣いていた。 泣きながら花火を見ていた。

倫太郎も泣いていた。
ようやくこれで全部思い残すことない。

真っ暗な山の頂上で、二人で手を繋いでずっと花火を見ていた。
これが倫太郎の最後のホストとしての大仕事になった。

これからがまた倫太郎の人生が大きく変わるとも知らずに。
#私の友だちの話#ホスト#バリ島#女の幸せ

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