奥行1mのコモン
静岡の田舎でコモンをさけぶユニット「ニューコモン商会」兄の高林です。このneteではコモンの発掘・共有をテーマに、様々なコンテンツを紹介、感想など綴っていければと思います。
僕が天竜二俣って面白いなと思った理由の一つに、この「奥行1mのコモン」があります。奥行1mのコモンとは、何のことはなくて、道路と建物の間のスキマのことです。クローバー通り商店街では、ここに椅子やベンチが置いてあり、よく人がおしゃべりしています。土地権利上は宅地でありながら、誰が来て座ってしゃべってもOKであるコモンな領域です。
都市空間の構成がいわゆる個店が並ぶ商店街になっているので、このような店主とお客さんや、住民同士の立ち話が発生しやすいし、それが自然な雰囲気があります。案外、この効果がすごいと思っていて、お店であれば賑わっていることがわかるし、住宅の前であっても人がいるという安心感があります。
昭和の時代にできた商店街であれば、このような構成は一般的であり、天竜二俣が特段珍しいわけではありません。ただ、何となくここではそうした風景が発生する頻度が高い気がしています。同じような風景は浜松の中心市街地ではそれほど見かけない。また昨今、道路空間の活用で全国各地で1m程度の歩道の占有利用事業が実施されていますが、なかなかここまで味があるのもないような。
なぜかと考えると、、空間構成だけがあればよいのではなく、そこにある環境がこうした風景を出現させているように思います。飲食店や日用品買い回りの店が主体で店主と客が顔見知りであること、客である住民が近くに住んでいること、店主自身がオープンであること、車道が広すぎないこと、なんだかゆったりと流れる時間、等の環境要因があればこそ成立しているのだと。それに、大規模開発で画一的にきれいに整えられたものではなく、ゆるく明文化もされないルール(とすらいえない)デザインコードの上で、それぞれのお店が表現しているのは、店の人となりが表出しているようで面白い。
初回のnoteでも触れましたが、現在クローバー通り商店街では、数十年ぶりの新規出店が今年3件あります。これらの店にも奥行き1mのコモンがあります。既にお店の前で楽しそうにしゃべる人影がちらほら見えます。これはぜひ現地に来て体感していただきたい。夕暮れ時、約束もしないのにあちらこちらから人がやってきて、ベンチに腰掛けてジェラートを片手にしゃべるのは、何ともエモく、言いようのないカタルシスがあるんです。
集まる年代や属性が変わっても、変わらず人を惹きつけ交流を可視化する「奥行1mのコモン」を、クローバー通り商店街に残してゆきたいと思っています。
今日も誰かを待つ椅子💺