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焼酎のポテンシャルは伝わるか

 先月、九州を旅行してきました。九州の酒といえば焼酎ですよね。
 私は20代の頃、大分に赴任しており、その頃は飲み会といえば焼酎でした。特に、会社の歓送迎会や忘年会で、飲み放題コースを予約した場合、広間に芋焼酎(黒霧島か島美人)と麦焼酎(二階堂かいいちこ)が置かれ、適当にビールを飲んだ後は焼酎に移るのが原則。
 そして、水割りやお湯割りづくりを若手が任されます。お湯割りはお湯が先で焼酎が後が暗黙の了解。若造の私は、焼酎を先に入れただけでかなり怒られたこともありました。
 そんなきょうは、焼酎の魅力とポテンシャルを考えてみたいと思います。

私の焼酎史

 大分赴任中は、同僚や仕事の関係先の酒好きに囲まれ、また、酒を通じて親睦を深めたり人間関係を作ったりすることも大事な業務の1つであったため、健康のことも考えずよく飲みました。明け方まで飲んで、そのまま出勤していたことも…。
 そんな中で、私の「焼酎観」を変えるある銘柄に出会います。それが、大分は宇佐の麦焼酎「兼八(かねはち)」。口に含んだ時に追いかけてくる香ばしさを兼ね備えた甘味と香り。人によっては、「麦チョコ風味」と形容するひともいるくらいです。九州を離れた今、なかなか見かける機会はなくなりましたが、居酒屋とかにおいてあったりするとロックでくいっと言ってしまいます(そして、たいがい酔っぱらいます)。

 あと、もう少し廉価な焼酎でいうと、麦焼酎「十王」も好きです。私が大分在任中に「村おこし焼酎」としてデビューした記憶があります。これも、麦の香ばしさがあり、麦のうまさを楽しめる1本です。(酒蔵が変わったのでしょうか…そのあたりの経緯はわかりませんが、私の好きな焼酎であることには間違いありません)

 このほか、熊本の米焼酎「鳥飼」、宮崎や鹿児島の芋焼酎(例えば、「不二才」とか「明るい農村」とか。「白波」とかの王道も結構好き)とか、ロックでも水割りでも、少人数で腰を落ち着けてしっかり話をしたいときには、焼酎がぴったりです。

鹿児島で知った焼酎と郷土料理の組合せ

 先日の九州旅行。友人からの紹介で鹿児島で訪れたお店は焼酎の品ぞろえがとても素晴らしいお店でした。まろやかで芋の香りが鼻孔から抜ける「ベニハルカ」。逆に芋感は控えめながら、すっきり淡麗な味わいが特徴の「逆鉾」など、芋焼酎の聖地・鹿児島の奥行きの深さとバリエーションの豊富さに舌を巻き、のどを潤した次第です。

ベニハルカ、トロッとしてて美味しかった


 そして、焼酎に華を添えるのが、黒豚しゃぶしゃぶや塩焼きなどの郷土料理。もちろん、ビールや日本酒、ハイボールにも合わないわけはないですが、鹿児島の黒豚と鹿児島の地焼酎の組み合わせで幸せにならないわけはないですよね。

ネギたっぷりの黒豚しゃぶしゃぶ


とんかつも旨かった(紹介しているのとは別のお店)

マリアージュとかペアリングとか格好つけなくても

 そこで感じたのですが、フランスのワインやイタリアのオリーブオイルなど、地元の料理には地元のものを合わせる、というのが少なくともメディアではよく見かける表現です。ワインのペアリングとかいうのは、日常語彙にもなりつつありますよね。
 焼酎についても同じかもしれませんし、そもそも郷土の人(特に労働者層)が組み合わせつつけてきたものが郷土食と郷土の酒。なので、鹿児島の料理と焼酎が合わないわけはありません。
 マリアージュとかペアリングという言葉からは、別々のものを相性の良さから合わせるという語感を受けますが、地の焼酎と郷土料理はもともと不可分でニコイチのものだったとも言えるかもしれません。

焼酎のポテンシャルをどう広めるか

 私が社会人になるころ(20年前くらい?)には、「プレミア焼酎」とかいって、「森伊蔵」や「魔王」が一升瓶で20,000円くらいで販売されていた記憶があります。兼八も大分を代表するプレミア焼酎としての地位を築いていました。NHKの昼の全国放送で、兼八の酒蔵を取材したら、「これ以上兼八の人気が出て、買えなくなったらどうしてくれるんだ!」みたいなクレームもあったと聞きます。
 しかし、ブームはブーム。一過性のものですよね。焼酎にどのように付加価値をつけるかは業界の悩みの種のようです。特に、一部の日本酒(清酒)は高付加価値化・単価引き上げに成功している一方、焼酎は価格が上がらず苦しい状況が続いていると、業界の報告書では指摘されています。

 上記の報告書では、今後の取り組みとして、商品:よりこだわりを追求する、デザイン:商品の魅力や付加価値が伝わるもの、販売チャネル対策:小売店の巻き込み、輸出に向けた品評会での賞獲得などが伝えられていて、どれもその通りだなと思います。
 ただ、日本酒だって、最近ブームのクラフトビールや地ウィスキーだって、同様のことを目指しているはず。そして、ジンソーダや韓国焼酎など海外にルーツを持つ蒸留酒の攻勢もすさまじいものがあります。
 こうした背景を考えるのであれば、私個人の願望もかなり入るのですが、九州の地域に根差し、九州の人たちが明日への活力とした焼酎というストーリーが地元の料理と一緒に知られていくというのを期待したいと思います。
 中小の蔵も多く、日本の中でも特に九州に根差した酒として、抜群の地域密着度合いを持つ酒。神に奉納するのではなく、労働者があすへの活力とした酒。ぜひ、これからもうまい焼酎を飲んでいきたいと心に誓った次第です。

※今回、鹿児島で訪問した店がこちら。いいお店やったよ!


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