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アフターコロナと生活とまちづくりと
ある人が言った。
「アフターコロナといっても、ほとんどもとの生活に戻るんじゃない?もちろん在宅勤務の割合は増えるだろうけどさ。」
これと同じようなことを私も考えていた。結局、たまには在宅勤務をするかもしれないけど、毎日通勤して、会社で働いて、と。
いろんな人がいろんなことを言っていて、たとえば「開疎化※」なんて言葉も生まれたけれども、これが本当に進むのかなと感じていた。
※詳しくは、安宅和人氏のブログ参照のこと(開疎化がもたらす未来, https://kaz-ataka.hatenablog.com/entry/2020/04/19/131331)
あくまで感じていただけだったので、もう少し未来を予想しようと努めてみた。そこで考えるに至った(個人的に)重要な視点が2つある。
それが、
①習慣の変化
②第2のコロナへの対応
だ。
①習慣の変化
まず第一に、習慣の変化をあげたい。
なんのことはない、今の生活で行っている行動を、アフターコロナ時代にどれくらい継続するか、ということだ。
「ほとんど継続しない」が当初感じていたことだが、大きな変化を身近にも感じ始めた。いくつかあげたい。
・集まらなくても意外と仕事は進む
▷他の人に気軽に話しかけずらくなったし、話しかけられなくなった。良い面も悪い面もあるが、邪魔されなくなったことがとても大きい。
・クライアントとweb会議を行えるようになった
▷これにより、今まで「欠席」していた人が会議に参加しやすくなった。共有の手間が省けたともいえる。
・会議後の交流がなくなった
▷コンサルタントとして、人と人のつながりは非常に重要視している。しかし、本音を聞ける機会が少なくなったし、会議後に挨拶もできなくなった。ある面では仕事が減るだろうと思う。
・国や自治体がオンラインに舵を切り始めた
▷これはとてつもなく大きい変化、コロナがなければこんなことはなかっただろう。大学の先生をお呼びする会議のweb開催なんてものも求められるようになってきている。
・民間事業者もオンラインに舵を切った
▷生存戦略として、オンラインを活用せざるを得なくなった。そのため宅配サービスやオンライン講座のようなものが明らかに増加したし、これからも増えるだろう。
・自転車がほしくなった
▷個人移動用のモビリティ(パーソナルモビリティ)が発展するかもしれない。一方、公共交通に多少嫌悪感を抱く人が現れるかもしれない。
・物理空間の重要性をそれほど大きく感じなかった
▷人に会えないことで、「会いたい」という揺り戻しがあるかと思ったが。今のところその気持ちはない。もちろんひいきのお店に行き、おいしいお酒を飲みたいし、子供と遊園地にはいきたい。しかし、今までよりそういった頻度を増やそうという気持ちはそれほと感じていない。
上記はほんとうに一例だ。しかし色々なことが変化してきた。ウィズアウトコロナ時代には、恐らく段階的に導入されてきたであろう生活や習慣が一気に全員に訪れた。「全員に」これが重要だ。
そして、みんな「順応」し始めている。早く収まってほしいという気持ちが第一である。他方、ウィズコロナ時代が長引くことは、現在の習慣を定着(順応)させることにつながると考える。
とくに働くということが大きく変わり、そして物理空間しかなかったところにオンライン空間という新たな手段が出現し、あるサービスを享受するための手段が多様化するだろう。
②第2のコロナへの対応
そしてもう一つ言いたいのが、第2のコロナへの対応だ。
私は、感染症はもはや災害だと明確にみなが認識すべきだと考えている。
2011年の地震、昨年の台風15号や19号など、自然災害は広く認知され、「災害リスクに済むことは危険だ」ということも国民の中で認識されつつあると思う。
上記のような自然災害はある意味では行政には追い風であり、これによって、立地を適正化しましょう、特に災害リスクが高いエリアにはすまないようにしましょう、といった議論が進みやすくなったのは間違いない。
まちづくり的に言えば、選択と集中がしやすくなったとも言えるだろう。
さて、感染症である。
新型コロナウイルスは、明らかに「密」にダメージを与えた。
これまで集まること、密になることこそがが正義だった。それを根本から覆すできごととなった。
しかし、「収束したらやっぱり「密」を目指すのではないの?」と私は考えていた。しかしここには大きな視点が抜けていた。
それは、コロナ(のような感染症)が再び猛威を振るうことがあるかもしれない、ということだ。
明らかに「密」であることは、感染症に対して不利だ。まちづくりの世界では、集約的な都市構造(コンパクトシティ)を目指すことが大きなトレンドだったが、ここに一石を投じることとなった。
今、国や自治体の担当や、研究者、私をはじめとしたコンサルタントは、人の生活やまちづくりをどのように描くべきなのか、ということを問われている。
一つ確実にいえることは、地方にとってこれはチャンスだ。
東京への一極集中のスピードが遅くなり、地方にいても何かできる、という機運が高まると思う。
特に、小中高生にとって、職業を選択する際に、「東京でなくても良い」という思いが生まれ「地元に住み続ける」選択肢が増えるかもしれない。そういった未来を見据え、そして、住むだけでなく、地方でお金を回す仕組みをいかにつくれるか、ということが一つのポイントではないかと感じている。