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【エッセイ】茨城遠征①─茨城へ行こう─(『佐竹健のYouTube奮闘記(19)』)

 新しい遠征先が決まった。

 新しい遠征先は、鎌倉や川越よりもスケールが大きい。どこかといえば、茨城県だ。市からいきなり県規模の遠征をすることになったのだ。

「なぜ茨城にしたのか?」

 それは単に行きやすいということと、興味のあった場所がいくつかあるということだ。もちろんこの決定には、以前フォロワーさんに聞いた「遠征先はどこがいいか?」という質問の回答も反映されている。

 単に行きやすいというのは、千葉に近いところなら、常磐線や宇都宮線などに乗ればすぐに着くからだ。以前古河へ行ったことがあった。埼京線を使って、板橋駅から赤羽駅で宇都宮線に乗り換えて行った。時間がかかるかなと思っていたけど、案外あっという間に着いてしまった。交通費は合計5000円も超えなかった。これらのことから、遠征先には調度いいと判断した。

 興味がある場所がいくつかあるというのは、中学生のときにNHK総合で放送していた『塚原卜伝』というドラマを見て、鹿島の地にうっすら興味を持っていたからだ。

 他にも『南総里見八犬伝』で足利成氏のいた古河や結城家のいた結城など、気になる場所はたくさんある。

 今回はその手始めにということで、行きやすい土浦から行こうかなということを決めた。


   ※


 5月の気温の調度いい晴れの日。私は日暮里駅で常磐線に乗り換え、茨城を目指した。

 行き先は土浦。

 土浦にした理由は、駅の近くに土浦城や霞ヶ浦があるからだ。また、牛久にある牛久大仏に行きたかったが、バスの費用などで行くのを断念したのもある。

 電車は三河島、南千住、北千住と進んでいき、千葉の松戸へと入る。そして、取手駅で土浦行きの列車に乗り換えた。

 乗り換えた電車の車窓は、ちょっとした町の風景から、水の張られた田んぼと水色がかった初夏の爽やかな青空へと変わっていく。そして、田園の向こうからは、二つの頭が突き出したきれいな山が見えた。

 車窓の景色から視線を電車の中に移したとき、車両と車両とを結ぶ扉の脇にトイレがあったのを見かけた。

(え、あれってトイレだよね? どうして電車の中に?)

 思わず私は、電車の中にあったトイレを二度見してしまった。

 もう一度、トイレがあるかを見てみる。

 車両と車両とをつなぐ通路の目の前にあったのは、紛れもなくトイレだった。なんでこんなところにトイレが。新幹線や特急列車の中でも無いのに。

 車両にトイレがあることに驚いた私は、このことをツイートした。そうしたら、フォロワーさんから、茨城弁で、

「常磐線の普通列車にはよくある」

 という返信が来た。どうやら、地元民にとっては、それが普通らしい。


 常磐線から土浦駅に降りようとしたとき、ドアの目の前に立った。

(あれ、開かないな?)

 そう思いながら待っていると、後ろにいた黒いスーツ姿のおじさんが何かを押した。

 黒いスーツのおじさんの手の先を見てみると、そこには開閉ボタンがあった。

(しまった、そういうことだったか!!)

 私はやっと、開閉ボタンでドアを開け閉めする区間にいることに気がついた。

 普段私は電車に乗って行動している。使っている路線は、JRなら埼京線と山手線、京浜東北線、都営交通だと、三田線、大江戸線、新宿線、荒川線、私鉄だと東武東上線といったところだろうか。東京以外へ行くときは、中央線や京王線、上野東京ライン、小田急線、東武伊勢崎線をよく使っている。

 私が使っている路線では、大体ドアが自動で開く。ドアが開いたら颯爽と出て、改札へと向かう。だが、いつものノリで電車を降りようと思ったら、ドアが一向に開かない。おかしいなと思ったら、そういうことだったのか。自分の見ている世界の狭さに、私は恥ずかしい思いでいっぱいになった。

 私は開いたドアから、先ほどまで乗っていた車両を出た。届いているかわからないけど、ありがとうございます、とお礼の言葉をつぶやいて。そして、常磐線の車両には開閉式ボタンがあることをしっかり頭に入れ、改札を出た。次からは電車に扉の開閉ボタンがあるかどうか、しっかり確認しておかないと。

(続く)


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佐竹健
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