名古屋市西区那古野 「熟成古酒 Élevage エルヴァージュ」 おしゃれでかっこよく、ほっとする日本酒古酒・熟成酒専門バー!
「こんなお店がもっと増えたら、日本酒古酒・熟成酒がもっとかっこよくなるのにな。」
このお店に寄ると、いつもつぶやいてしまいます。
名古屋駅から地下鉄桜通線でひとつ目の駅、「国際センター駅」2番出口から徒歩5分程度の那古野(なごの)地区にある日本酒古酒・熟成酒専門のバー。
名古屋駅から徒歩だと15分程度です。
お店
このお店は、とにかくおしゃれでかっこいい!
店内に入るまでに、扉が二つ。
扉を二つ開けても中の様子がよく分からず、ちょっと不安になります。
でも、入ってみると、おしゃれでかっこいいだけでなく、温かみがあって、ほっとする空間が現れます。
ケヤキ一枚板のカウンター。
ジャズが流れる店内。
そして、ふわっとした笑顔の店主。
店内には、たくさんの日本酒古酒・熟成酒が並んでいて、わくわくします。
酒器は、ワイングラスだけでも15種類、ほかに磁器のものもあります。
店主が、それぞれの古酒・熟成酒に合った酒器を選び、一杯一杯の日本酒をとても丁寧に説明ながら、提供してくださいます。
おしゃれなバーなので、食べ物は乾き物くらいかな、と思っていると、いやいや、お食事も豊富で魅力的なんですよ。
注文
伺った日は、とても暑い日でした。
私がお店に到着した時、店主は、ジョギング後みたいに結構汗をかいてました。
でも、いつも通り、ニコニコしながら、とても落ち着いた雰囲気で接客中。
「急いでないので、ゆっくりでいいですよ」と言いながら、私は、カウンター席に座りました。
店内の様子を眺めていると、お酒よりお食事の方がたくさん運ばれて行きます。
(相変わらず、お食事頼む人多いな。)
そして、しばらくすると、店主がすっーと目の前にやって来て、「キッチンにエアコンなくて…」とふっ〜と一息。
それでも、やっぱりニコニコしながら、落ち着いた感じで接客されるので、こちらもいつもの通り、ほっとさせられます。
お酒とお食事のメニューをよく見て、まず、お食事をオーダー。
にんじんのコンソメ煮、ゴーヤチャンプル、そして、ゴルゴンゾーラのブルスケッタ。
「ゆっくりでいいので、お料理に合うに日本酒をお願いします!」
「それは一番苦手なところかも…」
と店主は言いつつも、それぞれのお料理に合う古酒・熟成酒を丁寧に選んでくださいました。
お酒
左から
万齢(まんれい)(2011年) 小松酒造株式会社(佐賀県唐津市)
倉光(そうこう)本醸造(1984年) 倉光酒造合名会社(大分県大分市)
(倉光酒造のサイトは見つかりませんでした。)
華鳩(はなはと)貴醸酒(きじょうしゅ)オーク樽貯蔵(ブレンド) 榎(えのき)酒造株式会社(広島県呉市)
そして、最後に竹鶴を追加しました。
小笹屋竹鶴(おざさやたけつる)生酛純米原酒 無濾過 木桶仕込・瓶貯蔵(2009年度)竹鶴酒造株式会社(広島県竹原市)
ペアリング+α
にんじんのコンソメ煮と小松酒造の万齢(2011年)
にんじんのコンソメ煮は、少しあたたかいお料理でした。
決して味は濃くはないのですが、塩味も野菜の出汁もバターもしっかり感じられます。
万齢は、ヨーグルトや穀物の香りがして、いただくと、酸味があってなめらか。
ほどよい旨味と苦味が余韻に残ります。
なお、このお酒は、2011年3月に造られ、酒蔵で2019年3月までタンクで常温貯蔵され、瓶詰・出荷されたのち、お店でも常温で貯蔵されていました。
お料理と日本酒を一緒にいただくと、口の中ですごく調和しました。
万齢の酸味がよりまろやかになり、苦味がキュッと引き締まり、甘味と旨味の余韻が続きます。
お料理もお酒もよりおいしくなるペアリングでした。
万齢 (2011年)
原料 米(国産)・米麹(国産米)
原料米:岡山産山田錦100%使用
精米歩合:65%
アルコール度数:16度
日本酒度:+7
酸度:➖➖
アミノ酸度:➖➖
酵母:➖➖
価格:➖➖
製造年月:2019年3月
杜氏:小松大祐
ゴーヤチャンプルと倉光酒造の本醸造(1984年)
ゴーヤチャンプルは、ゴーヤ、鶏肉、とうふ、にんじんの上にかつおぶしがかかっていて、さっぱりめのお味。
本醸造は、うっすら黒糖感があり、すっきりしていました。
酸味と苦味の余韻。
お店では常温で貯蔵されています。
ゴーヤチャンプルの直後に、本醸造をいただくと、余韻の酸味と苦味がよりまとまった感じになり、やさしい甘味と旨味が口の中に残ります。
ゴーヤチャンプルは沖縄のお料理なので、もしかしたら、店主は、沖縄に比較的近い大分の日本酒を合わせてくださったのかもしれません。
本醸造 (1984年)
原料 米・米麹、醸造アルコール
原料米: ➖➖
精米歩合:70%
アルコール度数:15度
日本酒度:➖➖
酸度:➖➖
アミノ酸度:➖➖
酵母:➖➖
価格:➖➖
製造年月:1984年4月
杜氏:➖➖
ゴルゴンゾーラのブルスケッタと榎酒造の華鳩貴醸酒
「ゴルゴンゾーラのブルスケッタ」のゴルゴンゾーラは、ものすごくクリーミーでふわふわでした。
ゴルゴンゾーラを生クリームと一緒に泡立てて作っているそうです。
そして、はちみつとちょっと胡椒の味がきいていました。
パンは少し焼いてあって、周りはそんなにかたくなく、中はやわらかで比較的ずっしりしていました。
貴醸酒は、濃い琥珀色。
カラメル感バッチリで、最初は、甘味と旨味が印象的。
その後、甘旨に覆われた酸味と苦味、そして、少しだけ、渋い感じもあります。
お店では、12度で貯蔵して、7度で提供するそうです。
常温も貯蔵できるけれど、提供時には7度にしたいので、12度で貯蔵している、とのことでした。
ゴルゴンゾーラのブルスケッタと貴醸酒は、ものすごくよく合いました!
ゴルゴンゾーラには甘味と旨味が加わり、貴醸酒はよりなめらかになります。
貴醸酒の余韻の甘味と旨味がより前に出て来て、なんとも幸福な気分に。
ここで少し貴醸酒のお話を。
全国で初めて貴醸酒を造った酒蔵は、この貴醸酒の榎酒造さんです。
榎酒造さんのサイトに、とても分かりやすい貴醸酒の説明がありましたので、紹介します。
「迎賓館など、海外のお客さまを招き日本酒で乾杯していただく際のお酒として、国税庁醸造試験所で開発されたお酒が貴醸酒(きじょうしゅ)です。
<日本独自の高級酒>として1973年、醸造試験所の佐藤博士らによって開発。
「貴腐ワインに比較されるタイプの高級日本酒」として『貴醸酒』と名付けられました。
清酒は米、米こうじ、水から造りますが、貴醸酒は水の代わりにお酒から造るのが最大の特徴です。三段仕込みの最後、留添えで仕込水の代わりに純米酒を使って仕込みます。酒で醸すため、酵母のアルコール発酵がゆっくりと進み、エキス分の多い濃醇で香味豊かなお酒に仕上がるのです。」
「日本独自の高級酒」として、特に海外のお客様のために国が開発したのが貴醸酒なら、海外のお客様を迎えるときは、いつも提供されているのかな?
以前、テレビ番組を見ていて、日本酒が提供されてなさそうだったので、ちょっと残念に思ったことを思い出しました。
提供されているなら、いいのですが。
貴醸酒(ブレンド)
原料 米(国産)・米こうじ(国産米)、清酒(純米酒、国産米)
原料米:中生新千本(なかてしんせんぼん)
精米歩合:65%
アルコール度数:15.5度
日本酒度:-47
酸度:3.0
アミノ酸度:➖➖
酵母:協会7号
価格:➖➖
製造年月:2022年6月
杜氏:藤田忠
突き出しと竹鶴(2009年度)
順番が逆になってしまいましたが、突き出しを最後にいただきました。
マヨネーズと辛子味に塩が効いているジャイアントコーンスナックとブラックチョコレート。
突き出しに合わせて竹鶴をオーダーしたわけではないのですが、竹鶴とよく合いました。
竹鶴は、琥珀色で、ドライプルーンのような甘酸っぱい香りに少し黒砂糖やナッツ感がありました。
また、しいたけの甘旨煮のような香りも。
いただいてみると、甘味はありますが、香りから想像するほどではなく、また、旨味と酸味に苦味が加わった余韻が口の中にひろがります。
お店では、常温で保存されてます。
ジャイアントコーンと一緒にいただくと、竹鶴がふわっとなって、旨味がとても引き立ちます。
また、余韻の酸味と苦味がまろやかになります。
竹鶴は、ブラックチョコとも合いました。
やはり、酸味と苦味がまろやかになりました。
竹鶴 (2009年度)
原料:米・米こうじ
原料米:雄町(広島県産)100%
精米歩合:70%
アルコール度数:19度以上20度未満
日本酒度:➖➖
酸度:➖➖
アミノ酸度:➖➖
酵母:無添加
価格:➖➖
製造年月:2010年
杜氏:石川達也(広島)
竹鶴の酒器
竹鶴をいただいた酒器は、ちょっとおもしろい形をしています。
まん丸ではない、ほんの少し卵型の球体の上部1/4程度を斜めに切って、飲み口を作ったような形です。
飲み口を上から見ると、少しだけ卵型なのが分かります。
飲んだ時に口の横などから空気が入らない角度に設計されているそうです。
また、酒器を横から見ると、斜めなのが分かります。
縦横高さは、それぞれ、7センチから8センチ程度。
美濃焼の酒器です。
この酒器は特製で、お値段は8,000円程度。
注文してからしばらく時間はかかりますが、お店で購入できます。
ちなみに、竹鶴を高い飲み口からいただいた時と、低い飲み口からいただいた時では、味が明らかに違います!
高い方が低い方より、飲み口の幅が少し狭いと思います。
高い方からいただくと、キュッと引き締まった感じになり、アルコール感が増しました。
低い方からだと、全体的にまろやかになります。
店主
店主は、いつも丁寧で全力投球。
少し話し込めば、店主のお酒へのこだわりや豊富な知識はすぐに分かりますし、お酒やお料理に対して鋭いことや厳しいことをおっしゃったりもします。
でも、お客さまを緊張させたりはせず、どんな状況でもリラックスさせ、温かい気持ちにしてくれる、そんな佇まいの店主。
もしかしたら、こういう方のことを「接客の才能がある」と言うのかもしれません。
以前、お店に初めて来られたお客さまを接客されていた時のことです。
「どんな日本酒がお好みですか?」という質問に、お客さまの返事は、「辛口でスッキリした日本酒!」でした。
(う〜ん、これはきっと店主さん困ってるだろうな、古酒・熟成酒って、辛口はいいとしても、スッキリしたとかは、ちょっと違うし、どうするんだろう?)
すると、店主は、「うちは、そのようなお酒はあんまり置いてないんですが…、ちょっと考えますね」とやさしくとても申し訳なさそうに返事されました。
少しして、店主はいつも通り、ワイングラスにお酒を注いだ後、お客さまに丁寧にお酒の説明をされました。
それを試されたお客さまは、「う〜ん、美味しい‼︎」ととても嬉しそうでした。
このお店は、全国、いや、全世界でも数少ない日本酒古酒・熟成酒専門バーです。
お客様の半分くらいは、日本酒の古酒・熟成酒好きの常連さんだそうです。
あとの半分は、新規のお客さまで、日本酒の古酒・熟成酒がどういうものか知りたくていらっしゃる方が多いそうです。
日本酒や古酒・熟成酒ファンはもちろんのこと、あまり知らないという方も、少しでもご興味があるようなら、ぜひエルヴァージュに行ってみてください!
きっと日本酒の新しい世界へ連れて行ってもらえます。
エルヴァージュさん、ありがとうございました。
「熟成古酒 Élevage エルヴァージュ」
名古屋市西区那古野1-18-3
052-710-9798