【研究読書メモ】「社会科学のケーススタディ」アレキサンダー・ジョージ、アンドリュー・ベネット
(自分のためのメモなので、読者を意識しておらずご容赦ください)
定性研究について指摘された弱点を克服するために、方法論を体系化した書籍。原著は2005年、日本語訳は2013年に出版されている。
著者のアレキサンダー・ジョージはスタンフォード大学政治学部で長年教鞭をとられた著名な研究者。アンドリュー・ベネットはジョージタウン大学政治学部教授で定性的方法論のリーダー。
印象に残った部分をピックアップ(4-6章中心にしか読めていないので、必要に応じて再読する)
・理論を形成するために事例研究手法は有効な方法。(理論思考型の事例研究手法)
◆潮流
・定性的な事例研究手法は、1960年代から1970年代にかけて激減した。政治学分野学術誌では論文割合が70%から10%以下に。反対に、統計・数理研究手法が台頭。40%から70%に増加。社会学、歴史学、経済学も同じ傾向。
・1980年代に入ると複数の手法を用いる論文が増える。
◆理論思考の事例研究のデザインのプロセス
第1段階 研究の目的、デザインを明確にする
(1) 問題および研究目的を特定する
【6つの異なる種類の目的】
①非理論的: その後の研究で利用するための研究
②論理的・輪郭的:確立した理論を用いて事例を説明する。
③発見方法的:新たな変数、仮説、因果メカニズム、径路を帰納的に
特定する。逸脱事例の研究はこのカテゴリ。
④理論検証的:理論の妥当性や領域条件を評価する
⑤可能性調査:十分に検証されていない理論や仮説の初期研究。
さらに手間をかけて検証するかどうかを判断するために行う。
⑥ボトムアップ型研究:共通のパターンを明らかにする
(2)研究戦略の作成:変数を特定する
(3)事例を選択する
(4)変数の分散を記述する
成功or失敗のような2値ではなく、成功・失敗要因で区分したりする
など、変数を細分化すると発見がある。
(5)必要なデータと一般的質問を明確にする
事例を比較するために行う同じ質問(一般的質問)を明確にする。
一般的質問は、理論枠組み、目的を反映したものにする。
第2段階 研究デザインにのっとり、個々の事例研究をする
第3段階 事例研究から発見を引き出し、目的と照らして評価する
・事例研究を通した理論のプロセスは帰納的なプロセスである。
(演繹的理論の検証をしたり、新しい変数を示唆することはできる)
◆
再読タイミングは主に2つ。①調査を進めながら、行き詰った時にプロセスを見返す時、②理論を構築する際のロジックを確認する時。
定性研究が統計の定量研究によって立場がゆらいだところから、こうした研究者が奮闘し定性研究をさらに高みに昇華させていると感じました。過去の研究者のみなさまに感謝です。
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