感じるということ
子どもたちと散歩へ出かけると、その豊かな感性に感動することがあります。
子どもは五感を全開にし、本当に様々なものを肌で感じています。
触れてみて、ツルツル、ザラザラ、ヌルヌルなどの感覚を体験します。
冬の寒い日だからこそ、陽の光の温かさに気づきます。
風に運ばれてきた花の匂いに気づきます。
樹の上の鳥の声に驚きます。
きっとこんな体験は誰でもあるでしょう。
「豊かな感性を育む」という言葉をよく聞きますが、“感性”とは元々人間に備わっているものだと思います。
“外を歩いていても頭の中は考える事でいっぱい。”
“立ち止まって自然を見る為には、花見に行ったり、山登りに行かなければ。”
・・と考える、大人こそ「感性を育む」必要があるのかもしれません。
大人は頭の中の考え(思考)に捉われがちです。
ですから、「子どもの感性を育むためには、この教材を使って、興味を持たせるところから入って、最終的には山登りに行かせて、大自然に触れさせなければ…」などなど、頭で考えます。
でも、実際に山登りに行ったとしても、子どもの興味は今日のお弁当の中身…というようなオチも多いのではないでしょうか。
子どもの「感性を育む」ために、何かをする必要はないのかもしれません。
ただ子どもと同じく、大人も自然を感じる機会を持つことが大切なのです。
大人も子どもと同じような感性を持つにはどうしたら良いのでしょうか?
植物や動物が好きでなければ、観察する楽しさや喜びをあまり味わえないかもしれません。
植物や動物が好きでも、「これは〇〇って言ってね・・」と知識を試す事が好きで、概念を並べているだけで、本当の姿は見えていないかもしれません。
一度でも、自然の中で「本当にきれいな景色だなぁ」とか「自然の空気がおいしいなぁ」などの体験をしたことがある人は、目をつぶるとその時の自分の状態が浮び、その感覚を再体験できるでしょうか?
大切なのは、『頭の中で考えている思考から抜け出す』という事なのです。
子どもは頭の中の“概念”(思考)に捉われていません。
感覚的にそのままの情報が子どもの中へと入って行きます。
幼少期にたくさんの感覚的な体験をすることで、その体験がのちに知識や知恵に変わるのです。
感覚的な体験をするということは、心がオープンだということです。
あるインドのグルの本にこんなエピソードがありました。
学校の教師が、教えを請いにきた。
「自分には感じる心がない。考えばかりが重要になってしまい、学校でも声を荒げる事が増えてきている。どうしたら感じる心を取り戻せるか?」
そこでそのグルは、
「窓の外のブーゲンビリアの花を見なさい。花びらの上の光、その透き通った色と形など、君の目はそのままを見ているか」
・・・と。しばらく学校の教師が頭の中で考えて悩む様子が描かれ、そして最後にグルは、
「何もすることはない。ただ心を開いて静かに耳を傾け、あの花の美しさを見つめたまえ。」
その一言で終わります。
大人が子どもにできることは、
本当に、“ただ心を開いて静かに耳を傾け、子どもの美しさ、愛らしさ、豊かさを見つめるだけ”なのではないでしょうか。
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