お城のおそうじやさん #8
「うまく喋れないのね。文字は書けるかしら?」
カラは胸ポケットに入れていた万年筆を取り出し、
窓にかけられたコットンでできたアイボリーのカーテンをちぎると
テーブルの上に置きました。
「あなたのこと教えてちょうだい」
カラの言葉に反応するように、化け物はゆっくりとテーブルに向かい
椅子に腰かけ、紙に何かを書き始めました。
爛れていて皺だらけの手から書かれた文字は、
とても醜い化け物が書いたとは思えない、とても綺麗な文字でした。
長い時間をかけて化け物は何かを書き終えました。
途中でフィンが「何しているのか」と聞いてきましたが、
カラは、「大丈夫」と静かに伝えました。
化け物は、立ち上がり
「よ ん で」
カラにそう伝えベッドに座り直しました。
カラはテーブルの上の布を手に取り内容に目をやりました。
そこにはこう書かれていました。
醜い姿の私を人間だと思ってくれてありがとう。
あなたはとても賢い娘のようね。
私は半年前、このような醜い姿に変えられ
この暗く狭い部屋に閉じ込められた。
私は犯罪を犯したわけではない。
なのに、なぜこんな姿にさせられたと思う?
それに、どうしたら人間がこんな化け物の姿に変われると思う?
あなたなら信じてくれると思い、
私はここに、私に起こった事実を書くことにします。
私は、この国の女王です。
正確には、元女王。
名前は、レオノール。
あなたもこの国の者なら知っているでしょう。
半年前には私は失脚させられたのです。
この国を乗っ取ろうと画策した現国王、そう私の弟、アビドラは、
同じようにこの国の権力を自分のものにしようと画策していた
ヤヌー大臣と手を組んで、
私が国のお金を勝手に使って宝石を買い漁り、
無駄遣いしていると国中に噂を流した。
あなたも知っている通り国民からの私への支持は下がり、
この国からレオノールを追放しろと、たくさんのデモが起こった。
私は弁明したが、もう遅かった。
カラはそこまで読み終えると、
半年前レオノール女王が国民からの糾弾に耐えきれずこの国から逃亡した。
というニュースを思い出しました。
そして、再び布に書かれた文字に目をやります。
アビドラとヤヌーは、奥の手を用意していたの。
つづく