お城のおそうじやさん #2
カラは部屋の中央に置かれたイスに座りました。
「はじめまして。私の名前はレジーナ。
このお城のおそうじ係として、もう50年以上働いているおばあさんよ。
今日からよろしくね、カラ」
「よろしくお願いします。でも、50年以上なんてビックリ。
そんなに働いているんですか?」
カラは驚きを隠せませんでした
「ええ。14才の時からずっとここで働いているわ」
「私も14才なんです」
レジーナのゆっくりと優しい話し方は、カラの緊張を解いてくれました。
「他の仲間も紹介しないとね」
そういうとレジーナは、壁際でモップを洗っている女の方に
顔を向けました。
「あの子は、アデル。最近双子の赤ちゃんを産んだお母さんよ。
彼女は私の次に古株ね。ここに来て...」
アデルがここに来て何年経つのか、レジーナは考えはじめました。
「15年よ、レジーナ」
アデルが答えます。
「そうだったわね」
レジーナが優しく微笑みます。
「カラ、はじめまして、アデルよ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
「ここの仕事はとっても大変なの。だからなかなか働き続けてくれる子が
いなくてね。あなた若いけど大丈夫?」
アデルは心配そうにカラのことを見ました
「まかせてください。私、お城もおそうじも大好きなんで。
この仕事が私の天職だと思っています」
「ハハハ。面白い子ね。ならいんだけど」
アデルは大きな声で笑うと、またモップを洗いはじめました。
次に、レジーナが窓際でエプロンの紐を結んでいる女の方に顔を向けます。
「あの子はアビー。あなたに一番年が近いわ。
アビー、あなたいくつになったんだっけ?」
アビーは、レジーナやカラに顔を向けることないまま答えます。
「17よ」
「17なんですね。私は14です。よろしくお願いします」
カラの言葉にアビーは黙って会釈すると部屋を出て行ってしまいました。
「シャイな子でね。悪い子じゃないんだよ。
心を開くまで少し時間がかかるのね」
レジーナはゆっくりとイスから立ち上がると、壁の前に立ちました。
その壁は、壁一面にフックが取り付けられており、
そのフックには鍵の束がかかっていました。
「ここにある鍵はね、このお城の部屋の鍵なのよ。何本あると思う?」
「えーっと、すごい数ですね。100とか?」
レジーナは嬉しそうに微笑みました
「その10倍。1000個あるの。つまり1000部屋分の鍵ね。
鍵の束一つに10本の鍵が付いてるの。
そして、その鍵の束が50束あるわ。
毎日一人1束、20部屋をそうじするのがここのノルマよ。」
「20部屋!」
カラには想定外の仕事量でした。
「頑張ります!」
さっそく1束の鍵を渡されたカラ。
「カラ、その鍵の束は7階よ。
今日はどの部屋も使われていないから自由にそうじしてね」
「はい」
カラはおそうじ道具をまとめました。
早速、お城のおそうじデビューです。
つづく