お城のおそうじやさん #14
カラは再び集中し考えます。
私が大臣ならどこに隠す?
光り輝く宝石の付いた杖を隠すのに最適な場所。
わからない!
カラは頭を抱え、天井を見上げました。
光り輝く宝石...
カラが見上げた天井には、
それはそれは豪華なシャンデリアが取り付けられていました。
「何をしてる、そこをどけ!」
ヤヌー大臣は、部屋の前でそうじをしているアビーに向かい命令しました。
「申し訳ございません。
ただ大臣、
廊下に小さな針がばら撒かれているようで、
ここを今歩かれますと、大臣の足の裏に針が刺さって
怪我をされるかもしれません。
すぐにそうじしますので、少々お待ちください」
そういうと、アビーは床にはいつくばり、
針を人差し指と親指でつまみあげる仕草をしました。
「針?そんなもの踏んだところで大したことはない。
私は急いでいるんだどけ!」
「お待ちください!
この針は危険な針かもしれなのです。
伝え漏れましたが、もしかすると毒が塗られている針の可能性があります。
と言いますのも、以前、国王の暗殺を狙った者が、
目では見えないくらいの細さの毒針を城の廊下にばら撒いて、
毒殺を計ったことがあったそうです。
そうじがかりのレジーナから聞いたことがあります。
歴史は繰り返すと言います。
この針が毒でない保証はありませんので、
どうか私がそうじするまでお待ちください」
ヤヌー大臣は驚いた様子で一歩後ずさりしました。
「急いでいるんだ。勲章授与式に戻らねばならない。
すぐにそうじしてくれ」
「わかりました。5分で終わらせます」
アビーはそう言うと、針をつまみあげる動作を繰り返しました。
誰の目にも見えない、
いや、本当は存在していない毒針をつまみあげていきます。
早くしてカラ!
アビーは心の中で叫びました。
5分が経ちました。
さすがに大臣はイラつきを隠せなくなり、
急げと言わんばかりに、足踏みのリズムが早まっています。
もう限界ね。
「大臣、お待たせしました。これで大丈夫かと」
アビーが言い終わるのを待たずして、
大臣は部屋の鍵を開け中に入ります。
「何か忘れ物でも?」
アビーが問いかけると「お前には関係ない!」
そう言って大臣は扉を閉めました。
大臣は机の引き出しを開け、一つの鍵を取り出しました
「よかった。いつも身につけているのに今日は式服に着替えたせいで
この鍵を机に入れたままにしてしまった。
念の為、肌身離さず持っておかないとな」
取り出した鍵を胸ポケットに仕舞い、大臣は部屋を出ようとします。
その時、大臣の顔を風が通り抜けました。
窓を開けたままだったかな?
大臣は窓に向かい、窓を閉めようとします。
大臣の手が止まりました。
窓の一部が綺麗な円形に切り取られていたのです。
何かがぶつかってできた穴ではないことは一目すればわかりました。
大臣は焦って天井に目を向けます。
いや、目を向けた先は、シャンデリアでした。
毎日、魔法の杖を確認している大臣には
一瞬にして、シャンデリアのその違いがわかりました。
「ない!」
シャンデリアの中に調和するよう組み込んだはずの魔法の杖が
無くなっていました。
「あのそうじがかり!」
大臣は慌てて部屋を出ましたが、そこにアビーの姿はありませんでした。
そして、次の瞬間、大臣は7階へと走り出しました。
つづく