お城のおそうじやさん #9
(レオノールが書いた文章のつづき)
この国には遥か何千年んも前から伝わる魔法の杖があるのよ。
このことは国王一族しか知らず、
その隠し場所も国王一族以外には明かされていない。
この魔法の杖を使えば、国を滅ぼすことだってできる。
自分の権力のために使えば大変なことになる。
そう考えた歴代国王は、
この杖の存在を一族以外の誰にも口外せず
また自身がその杖を使うことなく隠し続けてきたの。
でも、アビドラは違った。
自らが国王になれないことに怒りを覚え、この杖を奪った。
全ての権威を自分のものにし、
外国を攻め滅ぼそうと考えたのね。
愚かなこと。
手始めに目障りだった私を消そうとした。
一つだけ誤算があるとすれば、この魔法の杖で人は殺せないということ。
アビドラは私に醜い化け物になるよう魔法をかけ、
そして城の兵士たちの手によって私はこの部屋に閉じ込められた。
情けのつもりか食事だけは一週間に一回運んでくれているわ。
カラはにわかには信じらがたい事実に直面し呆然としました。
国王がアビドラに変わってからというもの、
外国との戦争は増え、国は貧しくなり、
税金や規則が厳しくなっていました。
それまでの穏やかで、決して裕福とは言えないけれど、
慎ましいこの国が好きだったのに、
最近は嫌なニュースばかりでした。
魔法の杖によって化け物に変えられた女王
カラはベッドに座った化け物、
いや、レオノール女王に向かって言いました。
「私が魔法の杖を取り戻します。
そして全ての真実を明かし、
アビドラとヤヌーをこの国から追放しましょう」
レオノール女王は、
この少女の勇気と意志の強さに驚嘆を覚えました。
醜い姿をした自分を人間だと見抜き、勇気を持って接したこと。
そしてにわかには信じがたい事実を受け入れ、
悪に立ち向かおうとする姿勢。
形ばかりの女王で自分には足りなかったかもしれない心の持ちようを
彼女が教えてくれているようでした。
「た す け て く だ さ い」
レオノールのか細い、
しかしカラに確実に届けようとする意志のこもった声。
カラは床に片足をつけ、レオノール向かって頭を下げ言いました。
「私の名前はカラと申します。私が女王様を元の姿にお戻し致します」
レオノールにはこんな状況でも少しひょうきんな、
いや本人はいたって真剣なのかもしれないですが、
カラを見て微笑ましく温かい気持ちになりました。
「明日もう一度来ます。
それまで板を貼り合わせて窓が割れているの隠しておいてください」
カラはそう言うと立ち上がり窓に向かいます。
「待って。聞くのを、、、忘れていた。
あなた、、、このお城で、、、何をしていたの?」
カラが答えます。
「私は、このお城のおそうじがかりです」
つづく