お城のおそうじやさん #1
カラは14才の女の子。
今日からお城で働くことになりました。
お城ではたくさんに人が働いています。
王様の下で国の色んなルールをつくる人、
国民が幸せになるためのアイデアを考える人、
この国が外国から攻撃されないように守る人。
そして、大きなお城のおそうじをする人も。
カラは今日からこのお城のおそうじ係として雇われることになったのです。
誰もが一度は足を踏み入れてみたいお城の中。
でも、庶民には縁のない話です。
カラは町の掲示板に貼られていた”お城のおそうじ係を募集します”という
貼り紙を見て応募し、見事選ばれました。
この国のお城はとっても大きく、
大小合わせると1000部屋ほど部屋があり、そうじをするだけでも
大変な労働でしたので、お城のおそうじ係の仕事は人気がなかったのです。
今回の募集も応募したのは、カラひとりだけでした。
カラは美しいかたちをしたこの国のお城が大好きでした。
そして、一生で一度でいいからお城で開かれる舞踏会を
見てみたいと思っていましたので、おそうじ係としてお城に入れるだけでも
とても嬉しかったのです。
この日も胸をはずませお城へと向かいました。
お城に入るには、まず門番に名前を告げる必要があります。
「今日からおそうじ係として働くことになったカラです」
カラは門番に大きな声で自己紹介をしました。
「今日からね。ちょっとそこで待ってて。」
門番はそう言うと、胸ポケットから小さなメモを取り出しました。
「生年月日と母親の名前、あと好きな食べ物は?」
この時代、写真はまだありませんから、本人かどうかを確認するために、
本人にしかわからない質問をして、偽物でないか確かめていたのです。
カラはスラスラとその質問に答えましたので、
門番によってお城の中に通してもらいました。
「おそうじ係の部屋は4階だよ」
カラは門を抜け、お城の正面ではなく端の方にある扉から中に入り
4階まで階段を登りました。
4階に着くとすぐにおそうじ係の部屋がありました。
扉にホウキと塵取りの飾りが取り付けられていたので、
おそうじ係の部屋がそこだとすぐにわかりました。
「こんにちは。今日からおそうじ係として働くことになりました
カラといいいます」
カラは、勢いよく扉を開け挨拶しました。
部屋の中には3人の女がおり、こちらを見ていました。
「ようこそ、さあ、こっちへどうぞ」
3人の中で一番年を重ねているであろう女は、
カラに部屋の中に入るよう言いました。
つづく