お城のおそうじやさん #3
お城のおそうじは思ったより大変でした。
床を掃き、モップがけ、窓を吹いて、
豪華な調度品も一つずつ丁寧に拭いていきます。
「とても1日で20部屋は無理だわ。」
カラは、他のみんなが1日に20部屋もそうじしてるなんて、
どういうことか想像がつきませんでした。
陽が落ちはじめ夕方になりました。
カラは、12部屋目ののそうじを終えたところでした。
「あと一部屋そうじしたら、終わりの時間ね。
20部屋無理だったわ。
レジーナさんに怒られるかしら。」
そんなことを考えながら、今日の最後の部屋の鍵を空けます。
鍵には一つずつ「7-1」のように数字が彫られています。
「7-1」は7階の1番東の部屋という意味です。
カラは数字の順番通り部屋をそうじしていたので、
この部屋の鍵は、「7-13」です。
カラは鍵の束から「7-13」の鍵を探します。
「ん?無いわ?」
カラは鍵の束を手に取り、全ての鍵の数字を確認しましたが
「7-13」だけありません。
よくよく数えると鍵の束には19本しか鍵が付いていませんでした。
「大変、落としたのかしら」
カラはそうじを終えた部屋や廊下を探そうかと考えましたが、
とにかく広いお城です。
見つかるか自信がありません。
「はぁ」
ため息をつき「7-13」の部屋の扉にもたれかかりました。
その時です
ドン!ドン!
扉の奥から大きな音がします。
慌ててカラは扉にもたれるのをやめます。
しかし、続けて、
ドン!ドン!
また大きな音がします。
「誰かいるのかしら?
レジーナさんは、今日は7階の部屋を誰も使っていないと言っていたけど。
それにこの音、事故で誰かが倒れていたらどうしよう」
もともと好奇心旺盛なカラ。
鍵穴から恐る恐る部屋の中をのぞいてみました。
真っ暗で何も見えません。
と思ったその時です!
ウー ウー ウー
獣のような唸り声とともに、大きな目がギョロリと鍵穴の奥から
カラのことを覗き込んでいました。
ギャー!!!
カラを尻もちをつき、倒れこみました。
バケモノ?
急いで立ち上がり、落としてしまった鍵の束とおそうじ道具を抱え、
早足で4階のおそうじ係の部屋に戻ります。
部屋では、レジーナが一人、机の上で帳簿をつけていました。
戻ってきたカラがあまりにも困惑した様子なので、
レジーナはすぐさまカラの元に駆け寄りました。
「カラ、落ち着いてちょうだい。どうしたの?」
レジーナの声を聞いて、恐怖が少し和らぎました。
そして、唾をごくりと飲み込むと、カラは今さっき起きたことを
レジーナに報告しました。
あまりにも早口で伝えたので、レジーナは相槌を打つ暇もありませんで
した。
「そんなはずは無いわ。カラ、鍵の束を見せてくれる?」
レジーナに言われ、カラは鍵の束を渡します。
鍵の束を見ながらレジーナは顎に拳を当て、何かを思い出そうとしています
大事なことを思い出したようです。
「まあ大変!私としたことが、大失敗だわ!ごめんなさい、カラ」
「え?どうしたのです?」
カラはレジーナが何を思い出したのか、さっぱり検討がつきません。
「実は、7階はね、、、」
レジーナは、忘れていた大事なことを喋り出し始めました。
つづく