お城のおそうじやさん #5
仕事を終えてお城から帰るところだったフィンが
窓拭き係の部屋の前で待ち伏せしていたアビーに連れられ
カラたちがいるおそうじ係の部屋にやってきました。
「なんだよ急に!今日は帰って妹と遊ぶ約束をしてるんだ」
フィンはなぜ自分が呼び出されたのか、
4人の女に囲まれ何を言われるのか、
戸惑いを隠せませんでした。
「ごめんなさいね、フィン。教えて欲しいことがあってね」
レジーナはそう言うと、今日、カラの身に起きたことと
半年前に大臣がこの部屋にやって来た時のことをフィンに説明しました。
「確かに、7-13の部屋から変な唸り声はしたね。
窓に板が貼られて中が見れないようになっている窓は、
このお城の中でもあそこだけだよ。
僕はこのお城の窓を全て拭いているからね。間違いないよ」
フィンは、自分がいかにこのお城に精通し、
窓拭き係として一人前かアピールしているようでした。
「それで、もう帰っていい?」
フィンはカラの目を見ていいます。
「ちょっと待って。このままにしていていいと思う?」
カラは、フィンだけでなく、レジーナ、アデル、アビーの3人の顔を見回し
ます。
「大臣は何かを隠している。そしてその秘密は7-13にある。
このままにしていてはいけないと思うの」
「でももし部屋の中を探っていることがバレたら
僕たちは死刑になるかもしれない!」
フィンの言うことはごもっともです。
「みんなには迷惑かけないわ。
でも、私一人では部屋の中に入れないの。フィン、力を貸してくれない?」
「ちょっと待って。どういうこと?」
「扉は鍵が閉まっているし、力づくで蹴破ったりしたら警備している
兵士たちに見つかる。
でも窓ならどう?
7-13の窓は、城の裏側だから正門からは見えないし、
音も城の中にまでは届かない」
「なにを言ってるんだい?」
フィンは戸惑います。
「それに、夜なら見つからない。
この町は夜の8時になると修道院の鐘が鳴り響くでしょ?
あの音が鳴っているタイミングで窓と板を割るの。
そして中に入る。大臣の隠している秘密を探るのよ!」
カラのとんでもない提案に全員返す言葉を失いました。
ついさっきまで唸り声に怯えていた女の子とは思えません。
この子の好奇心と行動力には誰もかなわないと思いました。
「そんな突拍子もないこと、できるわけない!」
「フィンが私をおんんぶしてくれるだけでいい。
中には私だけが入るから」
「バカなこと言うな!」
フィンは怒って部屋から出ようとします
「カラ、あなたって本当に面白い子!
そんなこと私は思いつきもしなかったわ。
やってみましょ!最高に楽しい夜になりそう!」
レジーナの言葉に、みんなの動きが止まりました。
「レジーナ、なんてことを!」
アデルが言います。
「ここは私が50年間働き続けたおそうじ係の部屋よ。
そこに、ずかずかと入ってきて、頭ごなしに命令して、
あの大臣にはとってもムカついたのよ。仕返ししてやりたかった。
それにね、、、」
レジーナは微笑みながら言います。
「50年間退屈だったの。おそうじばかりで。
たまにはスリルを味わいたいわ。」
「そうこなくっちゃ」
カラは腕まくりをして、気合いを入れました。
つづく