わたしと「世界」との出会いの場―日比谷コテージ閉店に寄せて
こんにちは。おちらしさんスタッフの水口です。
悲しいお知らせを目にして、この記事を書き始めました。
日比谷シャンテ内にある書店「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」が閉店してしまうというのです。
この書店は、日本のブロードウェイとでも言うべき、劇場街の日比谷にあります。
日生劇場・東京宝塚劇場・シアタークリエなどの劇場から徒歩1~2分の日比谷シャンテ内にあるため、観劇後には必ずと言っていいほど立ち寄っています。
なんなら、「観劇の予定はないけれど、仕事帰りにちょっと本買いに行きたいな」と思った時に、真っ先に思いつく書店です。
「HMV&BOOKS」なので、通常の書店では取り扱いの少ないCDやBlu-Rayなども多く取り揃えられています。
また、土地柄に併せて、演劇・映画に関する商品も非常に豊富です。舞台版の上演が決まったマンガや小説があったり、ミュージカルを中心に活躍する俳優さんの書籍・円盤も等身大パネルとともに設置されていたり、観劇時に便利な手帳やファイルや近年では公演グッズも販売されていたりと、観劇ヲタクにとってはその場にいるだけで「幸せ…」と思ってしまう空間です。
コロナ禍になる以前は、店内にあるミニステージを使用して、刊行記念のイベントや、Blu-Ray発売の決まった映画の衣裳展示なども行われていました。
私も、ここで行われた「タカラヅカの解剖図鑑」出版記念のイベントに、お客さんとして参加したこともありました。
この書店がどうして、ここまで「行きたい本屋」だったかと言えば、「舞台の商品の取り揃えが多かったから」とか「劇場の近くにあって便利だったから」というだけではない魅力があったからだと思います。
それは、「来る人に寄り添ってくれる場所であり、来る人がまだ知らない、面白いものと出会わせくれる場所だから」です。
近年では、情報源といえばSNS、マンガ・小説・ビジネス書は電子書籍、音楽や映画は定額配信サービス、と、WEB上で、自分好みの物を享受するだけで大方満足出来てしまう時代です。
自分好みの場所にいるのは、正直快適です。嫌いなもの・苦手なものにはなるべく触れたくないですし、好きなもので満たされていれば心を必要以上に摩耗せずに済みます。
とはいえ、その自分の好きだけで構成されたところに居続けるのはどこか退屈なもので刺激が足りないのです。わたしも、そういう日々を過ごしているうちに、ある日突然、何もかもに興味が持てなくなってしまったということも経験しました。
大好きだったアーティストのはずなのに、何故かもう曲を聴く気になれない…。昔は行くのが楽しみでワクワクして前日眠れなくなるような場所だったのに、今ではすっかりその良さが分からなくなってしまった…。
そんな経験はありませんか?
(「それが年を取るということなんだよ」とか「現実を知ったらそうなるよね」とか思われるかもしれませんが)
そんな日に、日比谷コテージに行くと、「なんだか分からないけど、これ、気になる…」と思わず目に留まってしまう本に出逢う事が度々起こりました。そして、「何かわからないけど、買ってみよう」と思って出逢った本を購入して読んでみると、その時に必要だったものなんですよね。
漠然とした不安を自分なりに落とし込む補助になってくれた哲学書や、生活の捉え方を変えてもらったエッセイマンガ、知らなかった素敵な場所を知るきっかけになった雑誌などなど…。「今・わたし」のための本とは思わなかったけれど、この本の内容が必要な人もいると気付くきっかけになった本もありました。
どの本も、普段の自分のWEB上での守備範囲からは外れたところにあって、確実に自分の世界を広げてくれるものばかりでした。
日比谷コテージは、書店員さんや、店内にはいないけれどこの書店に携わる方々、或いは場所そのものから「今、読んだ方が良いんじゃない?」と語りかけられているような感覚がするのです。
そんな私にとって大切な場所がなくなってしまうのは、寂しくてたまりません。
最後になりますが、店員の皆さんをはじめとした「日比谷コテージ」に携わっていた皆さんには本当に感謝しています…!素敵な空間で、大好きなジャンルや新しい世界を発見させてくれて、ありがとうございました!
2月13日の閉店までに改めて訪れたいと思います!!