第20回MSP始動!初「本読み」、顔合わせの会を取材!
ネビュラエンタープライズ・おちらしさんスタッフの福永です。
U25世代に向けて、舞台芸術に関する情報を発信する「ユニコ・プロジェクト(通称:ユニコ)」。
ユニコでは昨年に引き続き、今年も「明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)」にしっかり密着させていただくことになりました!
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前回は、5月に行われた参加者を募るための「ガイダンス」の様子をご紹介しました。あれから約3か月……。「ガイダンス」の効果か、多くの明大生が参加エントリーをしたようで、その数、約200名!
そして、その中から舞台キャストのオーディションを経て配役が決まり、舞台を音楽で支える楽器隊のメンバーも固まり、各スタッフ陣の顔ぶれも揃いました。ここから9月のラボ公演、11月の本公演など、第20回のMSPが本格的に動き出します。
座組が決まって最初のイベントとして、8月1日に、参加者全体の顔合わせがありましたので、その様子を取材させていただきました。
この日は、まず午前中から本公演のキャストが全員集合し、リアル開催で行う初の全員での脚本「本読み」がありました。まだ初めましての人同士もいるような環境で、本公演『ハムレット』に出演するメンバーが一堂に会し、最初から最後までノンストップで台本を読む会です。
最初に、演出・高橋奏さんの仕切りで全員の簡単な自己紹介コーナーがあり、どの人が何の役をやるのか、確認し合いました。去年も役者として参加していた方がチラホラいらしたので、どのような演技をするのか勝手に想像してしまいます。この段階ですでに、頭の中では上演が開始されていました。
次にリラックスしテンション上げるため、シアターゲームを行います。こういった場面でも各人のキャラクターが見えるので、さらにこの座組への興味が高まっていきます。
そして、ついに「本読み」です。演出助手チームによる「ト書き」も含め、ノンストップで台本を読んでいきます。『ハムレット』は、そのままやれば4時間を超える超大作。おそらく演出家や翻訳のコラプターズ、その他の皆さんの努力もあって、見やすい上演時間に短縮されているようでした。しかし、どの箇所が削られているのか全くかわからなかったほど、とても上手にカットされています。
どの役の方も、事前にしっかりと台本を読み込んでいたようで、意味の通った「本読み」になっていました。中にはしっかりとキャラクターをつけている人もいて、すでに本番を見据えているのが感じられます。序盤は緊張気味だった方も、「本読み」が進むにつれて徐々に芝居の世界に入っていき、後半は迫力ある『ハムレット』の世界が繰り広げられていました。終盤のハムレットとレアティーズの決闘のシーンのときには、たまたまこの日東京を襲ったゲリラ雷雨の時間と重なって、雷鳴の轟く中での「本読み」となり、音響効果も抜群……!
ラスト、フォーティンブラスの口上が終わると自然に拍手が起こり、一つの上演作品を観終わったかの充実感に満ちていました。
その場では「本読み」に対するダメ出しや演出はなく、時間が2時間以内であったことだけが全員に伝えられました。もちろんまだ細かな動きや間もついていませんが、この日の時間が基準となって、新たなシーンカットやテンポアップの演出が施され、より完成度を高めていくのだろうと思われます。
ここで一旦、全体は休憩に入ったのですが、無理を言って二人の学生さんにインタビューをさせていただきました。
一人は、今年度の本公演『ハムレット』にて、ハムレット役に選ばれた文学部3年の佐藤祥伍さん。
もう一人は本公演の前哨戦でもあるラボ公演『新ハムレット』にて、ハムレット役を演じる総合数理学部4年の阪上祥貴さんです。
二人のハムレットの、今年のMSPに懸ける想いを語っていただきました。
Q:お二人の芝居歴を教えて下さい。
Q:佐藤さんは今年、MSP初参加なんですね。
Q:一方、阪上さんは4年連続でMSPに参加されています。一番最初はどんなきっかけだったか覚えてますか?
Q:お二人とも、ハムレット役は初めてということですが、配役が決まった時はどう思いましたか?
Q:各々、どんなハムレットにしたいですか?
本公演、ラボ公演とステージは違いますが、今年のMSP『ハムレット』を支えるお二人。ともに口にしていたのは、「支えてくれている200人のスタッフのために、できることは何でもやる!」との強い決意です。ますます公演が楽しみになってきました。
休憩後には、スタッフを含めたほぼ全員(一部はリモート)が会場に集まり、「顔合わせ」がスタートしました。最初にプロデューサーの宮嵜明理さんから挨拶があり、改めて、今年度のMSPへ参加してくれたことへの感謝が述べられます。
次にコーディネーターの井上先生より、今年はコロナによる制限がなくなって初めての公演になること、しかしまだ世の中では新型コロナウイルスの影響で中止や延期になっている公演も多い現実などが伝えられ、制限はなくとも引き続き、各々がしっかりと体調管理をして、元気に本番を迎えられるようにとお話がありました。去年まではやはりコロナ禍での対策もあり、別部署への見学は制限していたようでしたが、今年はそれも取り払うので、ぜひ部署を超えた一つの大きなカンパニーとして、風通しの良い団体にしていこうとの強いメッセージもありました。
演出の高橋さんからは、今回の『ハムレット』のコンセプトが語られます。ガイダンスでも伝えられた通り、「生きるべきか、死ぬべきか」という苦悩を身近なものとして捉え、また「生きる」ことを選んだ者が当然陥る、「『行動』しないといけない」という困難をしっかり意識したいと、念を押していました。
ここからは全体でもっと打ち解けられるようにと、制作部さんの仕切りでレクリエーションのコーナーに。部署も学年もバラバラにしたグループ分けをして、そのメンバーでいろいろなゲームを行います。最初は少し硬かった低学年の皆さんも、徐々に表情が柔らかくなっていくのが分かりました。
2時間ほどレクがあり、顔合わせは終了。事務的な連絡・注意事項などがあった後、解散となりました。
しかしこの日のスケジュールはまだ終わらず、このあととても興味深い「コンセプトMT」が行われました。「コンセプトMT」とは、演出家と美術家が、現状どのような舞台美術にしたいかを提示し、それに対し、各部署やサポートのプロスタッフが意見をするという時間です。
最初に提示されたのは簡単な図面とイメージ画で、やりたいことは十分に伝わるものでした。絵だけでは伝わらない部分は口頭で説明され、さらに演出の高橋さんからは現状やりたいと思っている内容などが語られました。
今年も強力なプロスタッフとして、監修にはJAM SESSIONの西沢栄治さん、舞台監督には劇団キンダースペースの村信保さん、美術には上田淳子さんが参加されており、美術担当の説明が終わると次々に意見が出されます。基本的に誰も何かを否定するようなことは言わず、こうなったら面白い、こういうこともできる、といった意見が多く、とても楽しい雰囲気で進んでいきました。
村信さんは全体を安全に進行する役目もあるので、現実的に難しいことははっきりと伝えながらも、「自分を苦しめること言うけど……(笑)、もっとこういう演出もできる」と新たな提案をしては、嬉しそうにお話しされていました。
面白かったのは、楽器隊の代表とのやり取り。舞台上のどの位置に楽器隊を置くかについてかなり時間をかけて話し合われ、演出、楽器隊、プロスタッフの間でテンポ良くアイディアが膨らんでいくのです。その最中にはハムレットの戯曲にも立ち返り、「このギミックはあのシーンにも使える」「じゃあ、楽器隊にこういう意味を持たせてみては?」など、稽古が始まっているかのように次々と演出が肉付けされていくのでした。
まだまだ始まったばかりで、芝居はもちろん、美術プランもこの先変わっていくかと思いますが、このメンバーが真剣に対話を続けていけば、確実に素敵な作品になることは請け合いだと感じられました。
この翌日から各公演の稽古もスタートし、その他のスタッフも実働が始まったとのこと。次は稽古場にもお邪魔して、芝居が立ち上がっていく様子をチェックしていきたいと思います。
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